JRA【オークス(G1)展望】桜花賞馬を“捨てた”川田将雅の決断…大混戦「樫の女王決定戦」は新星アートハウスVS桜花賞組!
22日、東京競馬場では3歳牝馬のクラシック2冠目、オークス(G1)が行われる。昨年は無傷の5連勝で臨んだソダシが1.9倍の断然人気に推されたが、まさかの8着。樫の女王に輝いたのは、3番人気ユーバーレーベンだった。今年は一転、無敗馬が1頭もいない上位拮抗の混戦模様となりそうだ。
一応の中心は桜花賞馬のスターズオンアース(牝3歳、美浦・高柳瑞樹厩舎)か。昨年10月にデビュー2戦目で勝ち上がったが、赤松賞(2歳1勝クラス)3着、フェアリーS(G3)とクイーンC(G3)はいずれも2着と、1番人気に応えられない競馬が続いた。
7番人気まで評価を下げて臨んだ桜花賞(G1)は、鞍上に川田将雅騎手が配された。道中はじっくり中団で脚を溜めると、直線で鋭伸。勝負どころで内から寄られる不利をはねのけ、ゴール前でウォーターナビレラをハナ差とらえた。
2冠目がかかるオークスは鞍上変更と距離延長の2つがカギとなりそうだ。
まず、鞍上はC.ルメール騎手への乗り替わりが決まっている。2017年から昨年まで5年連続で全国リーディングを獲得している現役No.1と呼べる存在だが、今年は4位とやや低調。そしてそれ以上に深刻なのは重賞での勝負弱さだ。海外での重賞勝利はあるものの、JRAの重賞は昨年12月から28連敗中(14日現在)とさっぱり。騎乗馬の質がやや下がっている傾向も出ているが、この連敗は本人も想定外だろう。今年G1を2勝している川田騎手からの乗り替わりはプラスとはいえない。
2つ目は前走から一気に800m延長される距離への対応だが、これは血統的な後押しに期待できそう。父のドゥラメンテは現役時代、皐月賞(G1)、日本ダービー(G1)をどちらも完勝。代表産駒のタイトルホルダーは長距離G1を2勝している。
母系を見ても、母のサザンスターズはオークス馬ソウルスターリングの半姉という血統。血統的には2400mもこなせる下地はある。
桜花賞の1度きりで“捨てられた”形のスターズオンアース。川田騎手を後悔させるような走りを見せることはできるだろうか。
その川田騎手がオークスで騎乗するのは、スクリーンヒーロー産駒のアートハウス(牝3歳、栗東・中内田充正厩舎)だ。
デビューからの3戦すべてで2000mを走っているように、桜花賞組に比べると、2400mは不安より期待のほうが大きい。
昨年10月の2歳新馬戦では、5.6億円馬のショウナンアデイブに3馬身差をつけ快勝。2戦目のエリカ賞(2歳1勝クラス)は、道中力み通しで実力を発揮できず、6着に敗れた。そして、4か月の間隔を空けて臨んだ前走の忘れな草賞(L)で再び3馬身差の圧勝劇。デビューからの2戦はどちらも番手からの競馬だったが、3戦目で初めて先団を前に見る形で結果を出した。
2000mの距離経験に加え、川田騎手がこの馬を選んだことも人気を押し上げそうだ。ただし、一線級とは未対戦で、前走のメンバーレベルにも疑問符がつく。2着に下したセルケトはきさらぎ賞(G3)で8着、3着に粘ったグランスラムアスクは次走のスイートピーS(L)で、勝ち馬から1秒1差の5着に敗れている。
また、これまで12頭立てまでの競馬しか経験しておらず、いきなりのG1舞台はフルゲート18頭立てが見込まれる。揉まれた時に脆さを露呈する可能性も考えられる。川田騎手の手腕にかかるところも大きいだろう。
2歳女王のサークルオブライフ(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)は、桜花賞4着から巻き返しを図る。
その前走は18頭立ての16番枠からの発走。道中は後方に待機し、外々を回る距離ロスもあった。4角では後方3番手という位置からメンバー最速の上がり33秒3の末脚を繰り出すも、脚を余す形で敗れた。
管理するのはアーモンドアイやアパパネなどの名牝を手掛けてきた国枝調教師。以前から距離延長には自信をのぞかせている。実際、昨夏に新潟芝1800mでデビューしており、桜花賞組の中では最も2400mへの適性を感じさせる。2戦2勝と好成績の地元、関東圏の競馬でG1・2勝目はなるか。
桜花賞で1番人気に推されたナミュール(牝3歳、栗東・高野友和厩舎)は、デビューから5戦すべてマイルを走り、3勝を挙げている。2度の敗戦は、どちらも外枠発走で、スタートを決められなかった阪神JF(G1)と桜花賞だ。
前者は直線で荒れた内を突いての4着、後者は内伸び馬場の外を突いての10着と、コース取りも凶と出た形。今回はデビュー2戦目の赤松賞で高いパフォーマンスを見せた東京が舞台となる。位置取り、そしてコース取りを味方につけられるか。今年は重賞で昨年のような結果を残せていない横山武史騎手の思い切った手綱さばきにも期待がかかる。
ウォーターナビレラ(牝3歳、栗東・武幸四郎厩舎)は、2歳時に7ハロン戦のファンタジーS(G3)を勝っているように本質はマイラー。桜花賞上位組の中では最も距離に不安があるといえるだろう。
馬体重を14kg絞り、最大のチャンスだった前走は武豊騎手も自画自賛の完璧な競馬を見せたが、ゴール直前にスターズオンアースに差し切られ涙を飲んだ。今回は一気に800mの距離延長。これを克服するのは容易ではないが、武騎手は1週前追い切り後の『サンスポ』の取材に自信のコメントを残している。
「今までにないぐらい落ち着いていたのが印象的で“キャラ変”したのかなと思うぐらい。2400mに延びるけど、前走も折り合いはついていたし、距離はこなせる」
桜花賞から1か月半。この“キャラ変”が事実かどうかは、当日のパドックが教えてくれるだろう。今度こそ武兄弟によるG1制覇の快挙を達成できるか。
新馬、クイーンCを2連勝し、桜花賞では4番人気に支持されたプレサージュリフト(牝3歳、美浦・木村哲也厩舎)。無敗での戴冠を狙ったが、課題のスタートを決められず、道中は最後方を追走。直線でも伸びてはいたが、11着に終わった。今回は2戦2勝の東京が舞台。父ハービンジャーなら、距離延長もプラスに出る可能性は高そうだ。
ベルクレスタ(牝3歳、栗東・須貝尚介厩舎)は、桜花賞で直線外を通って脚を伸ばしたが7着まで。折り合い面を考えると、距離延長は微妙だが、東京コースを含めて左回りでは、「1-2-1-0」と崩れていないことは強調できる。末脚は確実なだけに、上位争いには加わってきそうだ。
この他には、トライアルのフローラS(G2)で権利を獲得した2頭も侮れない。
エリカヴィータ(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)は、新馬勝ちのあと、2戦目のフェアリーSで2番人気に支持された逸材。ところが、勝負どころの4角で他馬と接触する大きな不利もあって10着に惨敗した。その後は目標をオークスに絞り、前哨戦で見事な一発回答。福永祐一騎手との新コンビで戴冠を狙う。
そのエリカヴィータに3/4馬身差で敗れたパーソナルハイ(牝3歳、栗東・矢作芳人厩舎)は、逃げたときの粘り強さを改めて証明した。フラワーC(G3)からの約2か月間で4走目となるが、世界の矢作厩舎だけにノーマークにはできない。
他にもそのフラワーCを制したスタニングローズ(牝3歳、栗東・高野友和厩舎)、フローラSで不完全燃焼な競馬に終わったルージュエヴァイユ(牝3歳、美浦・黒岩陽一厩舎)、横山和生騎手と新コンビを組むライラック(牝3歳、美浦・相沢郁厩舎)なども上位をうかがう。
絶対的な主役が不在となった今年のオークス。頂点に立つのは果たしてどの馬か。発走は22日、15時40分を予定している。
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