JRA福永祐一「苦渋の決断」も初の“栄冠”が手からスルリ…ドゥラメンテ、キタサンブラックら“黄金世代”の産駒デビューに溢れ出る7年越しの想い
今から遡ること7年前の2015年。皐月賞(G1)を直前に控えたクラシックの中心人物として脚光を浴びていたのは、間違いなく福永祐一騎手だった。
何故なら、共同通信杯(G3)で後の二冠馬ドゥラメンテを撃破し、スプリングS(G2)は2着に敗れるも前哨戦としては上々の内容で本番へと繋げたリアルスティール、また新馬、東京スポーツ杯2歳S(G3・当時)、弥生賞(G2)と無傷の3連勝で皐月賞の主役に躍り出たサトノクラウンの主戦を務めていたからだ。
本番の最終的なオッズではドゥラメンテを含めて3強を形成するわけだが、皐月賞初制覇を懸けて名手がコンビを組んだ相手はリアルスティール。福永騎手にとっても2003年のネオユニヴァースとエイシンチャンプのように、どちらも捨てがたい苦渋の決断だったはずだ。
それゆえに、本番で見せた福永騎手の手綱捌きはまさに“完璧”といえるものだった。
15頭立ての3枠5番から好スタートを決め、前半1000m通過タイム59秒2のミドルペースのなか、道中は内目の4番手を追走。楽な手応えで4コーナーを回り、直線に入るとあっさりと前の馬達を捕らえ、残り200mを切った時点では誰もがリアルスティールの勝利を疑わなかった。
「並ぶ間もなく交わされて、完敗でした」
レース後に鞍上がそう振り返った通り、外から異次元の末脚で追い込んできたドゥラメンテに屈し、1馬身半差をつけられて2着に敗戦。泣く泣く手放したサトノクラウン(6着)には先着したものの、一度は負かした相手に力の差を見せつけられる結果に終わった。
“黄金世代”の産駒デビューに溢れ出る7年越しの想い
その後も同コンビでクラシックを最後まで駆け抜けたが、周知の通り日本ダービー(G1)ではドゥラメンテが二冠を達成し、菊花賞(G1)でも勝ち馬キタサンブラックにクビ差及ばず2着。蓋を開けてみれば、クラシックで中心視された男は最後まで一つの栄冠も掴むことが出来なかった。
年が明けた古馬になってからも、それぞれの道で数々の名勝負を演じた両雄。のちにリアルスティールは2016年のドバイターフ(G1)を、サトノクラウンは2016年の香港ヴァーズ(G1)と2017年の宝塚記念(G1)を制してG1馬の仲間入りを果たすも、その背中に福永騎手の姿はなかった。
あれから時は流れ、ドゥラメンテ産駒のタイトルホルダーが昨年の菊花賞と今年の天皇賞・春(G1)をどちらも圧勝し、牝馬ではスターズオンアースが今年の桜花賞(G1)とオークス(G1)を勝ち「牝馬二冠」を達成。また、キタサンブラック産駒のイクイノックスが今年の皐月賞と日本ダービーで連続2着に入り“黄金世代”の子どもたちが再びターフを沸かしている。
さらに、それに続くように今年の2歳世代にはリアルスティールとサトノクラウンの産駒が初年度デビューを迎え、5日に行われた東京の新馬戦ではサトノクラウンを父に持つクラックオブドーンに福永騎手が跨り勝利する場面も見られた。
「お父さんとは違うタイプですが、サトノクラウンにとっても良い形でスタートできたと思います」
レース後には父の背中を知る男ならではのコメントを残した福永騎手。苦渋の決断を迫られたのち、自身の手でG1制覇を成し得なかった思い入れのある2頭の子で、名手が再びクラシックを沸かせる日もそう遠くないはずだ。
(文=ハイキック熊田)
<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?
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