
JRA武豊「牝馬で負ける相手はいない」。骨折明けエアグルーヴが「女帝」に近づいたマーメイドS(G3)後に出た本音
19日、阪神競馬場では牝馬限定ハンデ重賞のマーメイドS(G3)が行われる。今年は21頭が登録しているが、重賞勝ち馬は2頭(リアアメリア、ルビーカサブランカ)だけという、やや寂しいメンバー構成となった。
このレースの特徴は軽ハンデ馬の好走が多いことだろう。ここ数年は特にその傾向が顕著で、過去4年の勝ち馬はいずれも斤量が51kg以下の条件馬だった。時期的にも一線級の馬がそろいにくいレースといえる。
ただし、2006年にハンデ戦になる前は、G1勝ち馬の出走も決して珍しくなかった。実際にテイエムオーシャンやアドマイヤグルーヴ、スマイルトゥモロー、ダイワエルシエーロなどが出走馬に名を連ねている。
第2回が行われた1997年に登場したのは父トニービン、母ダイナカールという良血馬、エアグルーヴだった。前年にオークス(G1)を勝っていたが、秋華賞(G1)では10着に大敗。レース後には骨折が判明し、長期休養を余儀なくされていた。
ようやく傷も癒え、陣営が8か月ぶりの復帰戦に選んだのがマーメイドSだった。
年度代表馬へ、歴史的「女帝」が歩んだ逆襲の第一歩
エアグルーヴは他馬よりも1kg重いだけの斤量56kgで出走。久々の影響も少なからず心配されたが、最終的には単勝1.9倍の1番人気に支持されレースに臨んだ。

武豊騎手を背に中団につけると、勝負どころで早めに進出。4角では2番手まで押し上げ、最後まで楽な手応えで重賞3勝目を飾った。2着馬とは3/4馬身と着差はそれほどなかったが、武豊騎手は「今の牝馬では負ける相手はいない」と、余裕のコメントをレース後に残している。
その後は、前年から古馬牝馬に開放されていたエリザベス女王杯(G1)を目指すとみられたが、陣営が選択したのは札幌記念(G2)を挟んでの天皇賞・秋(G1)挑戦だった。
「ここ十数年はアーモンドアイやブエナビスタ、ウオッカなど多くの名牝が牡馬勝りの活躍を見せましたが、当時(1990年代)は、牡馬と牝馬の間には高い壁がありました。特に中長距離G1では、ベガやヒシアマゾンといった女傑ですら、牡馬の壁を破ることができませんでした。
当時のエアグルーヴは、阪神3歳牝馬S(G1)以降は牝馬限定戦しか使われておらず、一線級牡馬との力関係は未知数という状態。マーメイドSを勝った後も、スポーツ紙などは秋の大目標はエリザベス女王杯になるだろうという見立てだったと思います。
陣営とすれば、札幌記念で牡馬に通用しなければ、エリザベス女王杯という考えだったかもしれません。結果は有無を言わさぬ強さを見せ、2馬身半差で札幌記念を快勝。堂々と天皇賞・秋に名乗りを上げました」(競馬誌ライター)
札幌記念から2か月後、エアグルーヴは天皇賞・秋に2番人気で出走。直線で1番人気バブルガムフェローとの壮絶な叩き合いを制し、その年の年度代表馬に輝いたことは今も語り草になっている。
もし当時のマーメイドSが今のようなハンデ戦なら、エアグルーヴの出走自体もなかっただろう。女帝誕生に近づく運命の一戦から四半世紀、今年はどんな戦いが見られるだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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