JRA馬券の購入が文字通り「電話投票」だった話、抽選突破が条件…「有料ソフト」で苦労して買っていた時代とは
ギャンブルジャーナル読者のみなさんは普段、馬券をどのようにして買っているだろうか。
今でこそ馬券を買うだけであればスマホ1台で日本中、ことによっては海外にいても馬券が買えてしまう便利な世の中になったが、私のようなオールドファンにしてみると、馬券を買うことに対してかなり敷居が低くなったなぁ、という隔世の感がある。
そこで今回は、馬券購入方法がいかに変わってきたかについて、紹介していこうと思う。
筆者が馬券を買い始めたのは1990年夏のこと。当時は知るよしもなかったが、JRAの電話投票システムそのものは1974年から稼働しており、名前の通り電話投票窓口に電話をかけてオペレーターに買い目を伝えて馬券を買うことができた。
だが、JRAが事前に指定した応募期間の間に応募を済ませ、かつそれに当選する必要があった。さらに指定金融機関に口座を開設する必要があり、入会の際には10万円という高額な保証金を口座に入れておく必要もあった。
もちろん、これは後付けで知ったことで、当時も競馬場へ直接出向くかWINSへ行って馬券を買うかの二択しか知らなかった。住んでいる地域の事情で競馬場へは到底行くことができず、もっぱらWINSでの購入がメイン。
しかも、この当時はWINSによって最低購入金額が異なり、100円から買えるところもあれば最低は500円や1000円というところもあった。筆者の住んでいる地域にあったWINSは当時1点500円からで、今のように100円から気軽に穴馬券など買うことができなかった。
こんな馬券の買い方から脱却できたのはこれから数年後の話。パソコンの普及とともに専用ソフトを使ってパソコン通信(インターネットではない)経由で馬券を買えるPATが登場してからのことだ。
当初は上記の電話投票システムと同じくJRAの定めた募集期間に応募し、かつ当選して加入権をゲットしなければならなかった。当然落選すれば、次の募集期間まではお預けになる。また、現在も残っているA-PATシステムを使ったため、馬券購入用に専用の口座を指定金融機関に開設し、その口座の残高分しか馬券は購入できない仕組み。さらに確か金曜日だったと記憶しているが、所定の時間に口座の入出金がロックされ、追加入金ができないシステムだった。勿論、残高がなければ馬券は一切購入できない。
筆者はたまたま目にした募集期間に応募し、1回で当選する幸運にありつき、喜び勇んで一通りの手続きを済ませ、PAT生活が始まった。ここからは1点100円から購入できたこともあり、万馬券にありつけたことも幾度かある。
このA-PATシステムは会員権に期限が設定されており、その期間内に利用がないと無情にも会員権を剥奪される仕組みだった。また、筆者はWindows 95以前からパソコンを使っていたので、PAT導入は迷わずパソコンを選んだが、パソコンがない人向けにファミコン・スーパーファミコンをはじめ、ドリームキャストなどのゲーム機で専用のソフトを使って馬券を買えたほか、CSのデータ放送を使って購入することもできた。
95年以降インターネットが急速に普及し、それに伴ってPATもパソコン通信方式からインターネット経由に変わったが、専用ソフトを使ってアクセスする仕組みや、加入にまつわるいろいろは変わらずであった。この当時は旅行先で馬券を買うためにモバイルPCをわざわざ用意し、ケータイでネットにつないで馬券を買っていたものだ。今では考えられない荒技だったと思うが。
専用口座の縛りがなくなり、JRAが指定する銀行に口座を持っていれば誰でも簡単に加入でき、ネット経由で馬券が買えるようになったのは2005年の話。とは言え、この当時はまだスマートフォンがなかったので、出先でPATを使って馬券を買おうと思ったらパソコンが必須だった。
スマホの本格的な普及がさらに数年後になるので、読者のみなさんがいつでもどこでも気軽に馬券を買えるようになったのは、実のところここ10年以内の話。地方競馬の馬券を買えるようになったのが2012年から、さらに海外馬券が買えるようになったのは2016年マカヒキが挑戦した凱旋門賞(仏G1)からなので、どちらもまだまだ最近の話なのだ。
馬券を買ってそのままWINSのモニターで中継を見て当たりハズレをリアルタイムで確認し、馬券がハズレれば周りにいた見ず知らずのおっちゃんたちと来なかった馬に罵声を浴びせるという、昔の賭場さながらの光景も今は昔。便利になって馬券を買うことの敷居が低くなったのは歓迎すべきことだが、人間味がなくなったと思うのは筆者だけだろうか。
(文=ゴースト柴田)
<著者プロフィール>
競馬歴30年超のアラフィフおやじ。自分の中では90年代で時間が止まっている
かのような名馬・怪物大好きな競馬懐古主義人間。ミスターシービーの菊花賞、
マティリアルのスプリングS、ヒシアマソンのクリスタルCなど絶対届かない位置から
の追い込みを見て未だに感激できるめでたい頭の持ち主。
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