函館2歳Sの新トレンド? 2年連続連対中の意外な条件
16日、函館競馬場では世代最初の2歳重賞・函館2歳S(G3)が行われる。
デビューして間もない若駒たちが、最終週の函館に集結。出走馬のほとんどが1戦1勝、多くても2戦しか走っていないということで、他のレースよりも予想が難しいと感じる人も少なくないだろう。
少ない手がかりの中で、まずひとつの材料となるのが「同コース」での成績だ。
今年は8頭が函館・芝1200mのレースを勝ってこの舞台に挑んでくる。なかでも持ちタイム最速の1分9秒5で初戦を飾ったクリダーム(牡2歳、栗東・須貝尚介厩舎)や、逃げて上がり34秒5という脚力を発揮し、後続に2馬身差をつける快勝劇を演じたスプレモフレイバー(牡2歳、美浦・久保田貴士厩舎)といったところは、単純に人気の中心となることだろう。そんな中で、他の条件から臨む馬というのは、どうしても軽視されがちだ。
だが、函館2歳Sにおいて“新たなトレンド”となりそうな見逃せない条件がある。それが「函館・開幕週の芝1000m新馬戦」だ。
開幕週の芝1000mの勝ち馬が2年連続の…
1回函館・1日目の5Rに組まれることでお馴染みの芝1000m新馬戦。開幕週の初日ということで馬場状態は良好なケースが多く、内枠からスタートを決めた馬による前残りになりがちな条件とあって、これまではあまり重要視されないレースであった。
ところが、2020年にこの条件を勝ったリンゴアメが後に函館2歳Sを制覇。10番人気で単勝4730円、3連単は57万7430円という大波乱を演出すると、昨年も同パターンでカイカノキセキが2着と好走。2年連続で、この“函館開幕戦組”が連対を果たしているのだ。
“2度あることは3度ある”となるのか。今年この「函館・開幕週の芝1000m新馬戦」を勝って出てくるのが、ニーナブランド(牝2歳、美浦・高橋裕厩舎)である。
「早い時期から練習を積んでいたので、ゲートは負けないと思っていた」という調教師のレース後コメントにもあるように、最内枠から好発を決めての逃げ切り勝ち。この結果だけを見ると1200mへの距離延長は歓迎できないようにも思えるが、師は「距離は1ハロン延びても大丈夫」と函館2歳S参戦を即決した。
レースの中身を見ても、1000m戦ながら新馬戦らしく流れは緩くなり、スローペースを先頭で進めて上がりは全体2位の33秒9をマーク。この内容からも、単なる短距離の逃げ馬と判断してしまうのは早計だろう。
函館に入って、ニーナブランドを担当する島田助手からはスポニチの取材に「単にスピードだけの馬ではない。重賞でも楽しみ」という心強いコメントが出ており、状態面についても「不安なく来ている。このままの雰囲気でレースを迎えられれば」と陣営のトーンも高い。
思えば2年前のこのレース、勝ったのはリンゴアメというのは上述した通りだが、そのリンゴアメに差されて2着に敗れたのが、高橋裕厩舎の管理馬で島田助手が担当していたルーチェドーロだった。
ダート1000mの新馬戦を圧勝して芝の重賞に殴り込みをかけた一戦は、2番手から運んでゴール目前では先頭へ。しかしその瞬間、外から強襲してきたのがリンゴアメ。厩舎9年ぶりの重賞制覇が、わずかクビ差で幻となった。
ニーナブランドは、そのルーチェドーロと同じディアレストクラブの所有馬でもある。島田助手も「こういうチャンスがあるのはありがたい」と、2年前のリベンジに向けて静かに闘志を燃やす。
前回は壁として立ちはだかった「函館・開幕週の芝1000m新馬戦」を、今度は味方にすることができるか。セイクリッドバレーで勝った2011年の新潟大賞典(G3)以来、実に11年ぶりとなるJRAの重賞勝利へ。因縁のレースに挑む、高橋裕厩舎のニーナブランドに注目だ。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。
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