
武豊に「ダブルスコア」でも横山武史に残る不満と不安

17日で終了した今年の函館開催は、19勝を挙げた横山武史騎手が3年連続3回目の騎手リーディングを獲得。12勝で2位の吉田隼人騎手とは7勝差、10勝で3位の武豊騎手にはほぼダブルスコアという独走ぶりだった。
横山武騎手はライバルを寄せ付けない圧勝劇に「今年も素晴らしい馬をたくさん用意していただいて、リーディングという結果で応えることができてホッとしています」と振り返った。
ただ、「目標としていた去年の勝ち鞍を超えるという最低限の目標は達成できましたが、最終週としてはあまり勝てませんでしたし、個人的には満足していないです」と気を引き締めたあたりに自戒も見え隠れ。数字上では好成績でも悔いが残ったということか。
7月半ばで72勝を挙げた今年は全国騎手リーディングでも84勝で1位の川田将雅騎手に次ぐ2位。昨年の7月終了時に54勝だったことを考えれば、既にこれを上回るペースで勝ち星を重ねている。
しかし、当人から不満がこぼれた理由のひとつとしてクローズアップせざるを得ないのは、重賞レースにおける不振だろう。

ブレイクした昨年の同時期に重賞4勝を挙げた横山武騎手だが、今年の重賞勝利はナミュールで制したチューリップ賞(G2)のみ。32鞍に騎乗して1勝で勝率もわずか3.1%という深刻ぶりである。
勝率13.8%で2番人気1勝、4番人気3勝の内訳だった昨年に対し、今年は1番人気馬への騎乗機会も10回。馬質が大幅に上がったにもかかわらず、数字の上では大きく後退してしまった。
「主役と目された今春のG1で一敗地に塗れました。これを引き摺るようなら夏競馬で悪影響が出るかと心配していましたが、まずは無事に函館リーディングを取れてよかったです。
函館開催の重賞で勝利はできませんでしたけど、それほど悪い内容でもなかったと思いますよ。この調子なら秋に向けての反撃に期待できそうです」(競馬記者)
注目度が上がったことにより、有力馬が揃ったように見えるものの、全体を振り返ると明らかな騎乗ミスで敗れたといえそうなレースもない。強いて挙げるなら自身でハイペースを演出してしまった高松宮記念(G1)のレシステンシアくらいだが、負けられない立場で連敗したエフフォーリアのスランプは、陣営もさすがに想定外だったというしかない。
クラシックでコンビを組んだナミュールやキラーアビリティにしても、他の騎手なら勝てたのかと言われると微妙だったかもしれない。
騎乗馬の違いこそあれ、タイトルホルダーとのコンビで天皇賞・春(G1)や宝塚記念(G1)を連勝した兄の和生騎手は、函館開催で勝率4.3%の3勝止まり。春と夏で完全に立場が逆転している。
今週末から始まる札幌開催は昨年C.ルメール騎手を倒してリーディングに輝いた舞台であり、反撃の狼煙を上げるには絶好の舞台。このまま北海道開催で好調を維持し、春の汚名返上を期す秋の飛躍へ繋げたいところだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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