マンハッタンカフェの血が騒ぐ?菊候補を狙うマイラー

「異色の菊候補」が誕生するかもしれない。
30日に札幌競馬場で開催される阿寒湖特別(2勝クラス)は、知る人ぞ知るちょっとした出世レースである。芝2000m時代の1997年にはステイゴールドが勝利し、2002年の勝ち馬には、名牝ファインモーションの名前もある。
スタミナを要する芝2600mという長距離レースということも、菊花賞(G1)に繋がるバックボーンとなっているのだろう。一昨年の勝ち馬アンティシペイトも武豊騎手とのコンビでラスト一冠を目指したものの、あえなく除外。大舞台に挑戦する夢は儚く散った。
菊の穴馬候補が誕生しやすい阿寒湖特別とはいえ、実際に本番で栄冠を勝ち取った馬は過去20年出ていないことも事実。どちらかというと穴党の期待を集めるだけのケースに終わることも少なくないといえるだろう。
ただ、そんな顔触れの中でも唯一、菊の大輪を咲かせた馬が1頭だけいる。それが2001年の勝ち馬マンハッタンカフェである。
思えばこの年の牡馬クラシック戦線は、競馬史に残るハイレベルな世代としても有名だった。
皐月賞(G1)を無敗で制し、圧倒的な強さを見せたことから三冠確実という声も出たアグネスタキオンが牽引した。そのヒーローが左前浅屈腱炎で離脱した日本ダービー(G1)を快勝したジャングルポケット、NHKマイルC(G1)を制したクロフネもいた世代を今でも最強世代として推すファンも多い。
菊花賞どころか、次走の有馬記念(G1)で当時の最強馬テイエムオペラオーを破る大金星を挙げ、翌年の天皇賞・春(G1)を制することになるマンハッタンカフェも、春の段階ではトップクラスに歯が立たなかった。当時、この馬がここまで強くなることを予見できたファンは決して多くなかったはずだ。
菊候補を狙うマイラー
そして、今年の阿寒湖特別に登録しているマンハッタンカフェを祖父に持つエンドロールもまた、ここまでこれといった勝ち星のない穴馬だ。関係者からの評価も高かった祖父に見劣りは否めないが、ガルボ産駒というのは非常に興味深い。
何しろ父のガルボはステイヤーのマンハッタンカフェとは異なるマイラーとして名を馳せた馬だ。マイル重賞を主戦場として活躍しただけでなく、スプリントの重賞まで制したのだから距離適性は父と正反対。産駒の距離適性においても短距離向きの馬が出ると考えたのは、おそらく関係者もファンも同じだったのではないか。
エンドロールは芝1800mでデビューすると5着。その後も距離延長と短縮の試行錯誤を繰り返したものの10連敗と勝利は遠かった。芝1500mから芝2000mまで使われての成績なのだから、こうなるとさらに距離を延ばすか短くするかの二択を迫られる。
こういったケースでは短縮することも多いのだが、陣営が選んだのは意外にも距離の延長だった。そしてこれがエンドロールの新たな可能性を広げる結果となったのだ。
永野猛蔵騎手とのコンビで5月東京の芝2400mの3歳未勝利に出走して待望の初勝利を手にすると、続く稲城特別(1勝クラス)を3馬身差の大楽勝。かつて10連敗していた馬とはとても思えないような連勝を決めてしまった。
もし、阿寒湖特別にこのまま出走して3連勝を飾るようなら、エンドロールに流れるステイヤーの血が騒ぎ始めたということになってくる。
ステイヤーの祖父から生まれたマイラーの父、そしてマイルだけでなくスプリントの重賞も制した父からステイヤーが生まれたのだから不思議なものだ。これこそブラッドスポーツといわれる競馬のロマンのひとつといえるだろう。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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