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「負ければ地獄」から一転、15年ぶりの珍事発生

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 8月に入り、夏競馬真っ只中を迎えている。なかでも、3歳の未勝利戦は日に日に緊迫感が増している印象だ。何故なら、現3歳世代の未勝利戦が終了する9月4日まで、残り1ヵ月とタイムリミットが迫っているからだ。

 勝ち切れなかった馬は、基本的に地方競馬に移籍するか、引退を余儀なくされる。陣営にとっても何とか避けたいがために、この時期は過酷な連戦を愛馬に強いることだってある。

 ごく稀ではあるが、昨年のカペラS(G3)を制したダンシングプリンスや、7日のエルムS(G3)に出走するブラッティーキッドのように、中央で1勝も挙げることが出来ずに地方へ移籍するも、その後結果を出して中央に戻り活躍する馬も中にはいる。

 だが、これらはレア中のレアケース。タイムリミットまでに勝ち上がれるかどうかで、今後の明暗が大きく分かれると言っても過言ではないだろう。

15年ぶりの珍事発生

 そして、そんな「大切な1勝」を珍しい同着優勝で掴み取ったのが、6日の札幌6Rで勝利した岩田望来騎手の1番人気ダノンフロイデ(牡3、栗東・藤原英昭厩舎)と、横山和生騎手の7番人気ホウオウユニコーン(牡3、美浦・奥村武厩舎)である。

 どちらにとっても嬉しい初勝利となったわけだが、そのレース内容は陣営にとってもまさに手に汗握る展開だったはずだ。

 向こう正面で道中最後方にいたホウオウユニコーンが全頭を捲って先頭に立つ奇策をみせると、ダノンフロイデは中団外目で我慢しながら4コーナーにかけて徐々に追い出しを開始。最後の直線では、先頭にいたホウオウユニコーンが粘りこみを図るなか、外からダノンフロイデが懸命に追いかけ2頭の鼻面が合わさったところでゴール板を駆け抜けた。

「この時期の3歳未勝利は、ジョッキーにとっても非常に使命感の強いレースでもあります。なんせ勝利できなくては、次走れるかどうかさえもわからないわけですからね。

早めに進出して押し切りを図ろうとしたホウオウユニコーンの横山和騎手も好騎乗でしたが、馬の力を信じて最後にしっかりと末脚を伸ばして追いついたダノンフロイデの岩田望騎手も見事な手綱捌きでした。

残り期間的にも負ければ地獄……、そんななか写真判定の結果は1着同着。両陣営にとっても、ホッと胸をなでおろした瞬間だったのではないでしょうか」(競馬誌ライター)

 今回のように8月から最後の未勝利戦がある9月までの間に1着が同着となったケースは、2007年8月のラブレターとテイエムフッカツ以来15年ぶり。過去30年を振り返っても2回しか起きていない珍事でもあった。

 タイムリミットが迫るなかで、2頭にとっては大きな同着だったに違いない。最後の未勝利戦まで残りあと1ヵ月、競走馬としての命運を懸けた激しい戦いはまだまだ続く。

(文=ハイキック熊田)

<著者プロフィール>
 ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?

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