「無名」から「ヒーロー」に!?馬名「そよ風」とは裏腹なサクセスストーリー
9日、歌手のオリビア・ニュートンジョンさんが亡くなったとの報道があった。73歳だった。
世界的ヒットとなった代表曲「そよ風の誘惑」は、誰もが一度は聞いたことがあろう名曲である。日本のコールセンターなどの保留音でもよく使われているあの曲だ。
亡くなったことは誠に残念ではあるが、「そよ風」と聞いて筆者がふと思い浮かんだ名馬はヤマニンゼファーである。「ヤマニン」は冠名であるが、そのあとに続く「ゼファー」とは、まさに「そよ風」を意味している。
そんな馬名とは裏腹に、現役時代のヤマニンゼファーは、競馬ファンに多くの衝撃を与えた。
その礎はまさにデビュー戦にあった。同世代の新馬戦終了が間近に迫るなか、初陣となったのは、調整不足を押しての見切り出走となった中山ダート1200m戦。単勝オッズ69.1倍の12番人気と大穴だったものの、いざ蓋を開けてみると大衆の予想を覆す鮮やかな差し切り勝ちを決めたのだ。
その後は芝ダート両方を使いながら、3歳にしてスプリンターズS(G1)へ挑戦。結果は7着と敗れたが、この馬の本格化は古馬となってからだった。
4歳になって迎えた安田記念(G1)。前走の京王杯スプリングC(G2)では8番人気ながら3着に好走していたが、本番でも11番人気の大穴扱い。初のマイル以上の距離延長に加え、大外枠だったことも低評価に繋がったのかもしれない。
だが、ヤマニンゼファーは逆境をモノともしなかった。
前年のマイルCS(G1)覇者ダイタクヘリオスや、上述した京王杯スプリングCを制したダイナマイトダディらが人気を集めるなか、残り200mの時点で先頭に立つとそのまま後続の追撃を力強く振り切った。
G1を勝つ馬の多くは、新馬戦でも人気を集め、勝利しているケースも少なくないなか、デビュー戦を二桁人気で勝利した無名馬がG1を制すという快挙を達成したのだから驚くべきことだろう。
それまではフロック視されることも多かったヤマニンゼファーだが、このG1勝利を機に周囲の見方もガラリと変わる。のちの重賞でも上位人気に推されることがほとんどとなり、翌年の安田記念で連覇した際は2番人気に支持されている。周りの評価を何度も覆し実力で納得させた、まさにそんな馬だった。
ただヤマニンゼファーを語る上で、もう一つ外せないのが天皇賞・秋(G1)だろう。
芝1800m以上の重賞では、中山記念(G2)4着、毎日王冠(G2)6着と実績がなかったこともあって、最終的には5番人気に支持されたヤマニンゼファー。メンバー的に混戦だったとはいえ、その年の天皇賞・春(G1)を制したライスシャワーやG1でも実績があったナイスネイチャに人気を譲る形となった。
しかし、またしてもヤマニンゼファーは大衆の予想を覆して見せた。
絶好の手応えで4コーナーを回り、最後の直線で堂々の先頭に立つと、追い込んできたセキテイリュウオーに並ばれたが、馬体が合ってから驚異の粘り腰を発揮すると、最後まで抜かせず僅かハナ差で栄冠を勝ち取った。実力云々以上にその勝負根性が垣間見えた一戦でもあった。
あれから30年を迎えようとしている現在。各地で続々と2歳馬がデビューしている夏に、ヤマニンゼファーのような「無名」から這い上がる「ヒーロー」が現れるだろうか。
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