札幌2歳S(G3)父譲りの“ワープ”に期待!? ゴールドシップ産駒のフェアエールングが挑む一族の悲願
3日、札幌競馬場では注目の2歳重賞・札幌2歳S(G3)が行われる。
昨年の勝ち馬・ジオグリフは後に皐月賞(G1)を制し、一昨年の勝ち馬ソダシは阪神JF(G1)と桜花賞(G1)を連勝。そのソダシの2着だったユーバーレーベンがオークス(G1)を制すなど、将来のスターホースを輩出する登竜門として近年その価値を高めている。
今年もブラストワンピースの全弟として早くも注目を集めているブラストウェーブをはじめ、新種牡馬サトノダイヤモンド産駒の大物候補・ダイヤモンドハンズなど、シルクレーシングとサンデーレーシングの注目株がここに参戦。来春を見据えるうえでも重要な一戦となりそうだ。
やはりこの夏に北海道で勝利を挙げた馬が中心となるが、唯一福島での新馬勝ちを経てここに登場するのがフェアエールング(牝2歳、美浦・和田正一郎厩舎)である。
初戦は7月16日に福島競馬場で行われた芝1800mのレース。ここにはデビュー前から大きな注目を浴びた藤田晋オーナーのヤングローゼスが出てきたが、「馬場に脚を取られるところもあった」というコメントの通り、重い馬場に苦しめられて5着と敗戦。
その中でフェアエールングは出脚良く先頭でレースを運び、一度ナンヨークリスタルに交わされながらも最後の直線ではラチ沿いをもうひと伸び。「馬場も苦にしませんでした」と非凡なパワーとスタミナを見せつけ、2着に0秒4差をつける快勝を収めた。
フェアエールングが挑む一族の悲願
その後、8月の上旬に札幌2歳Sへの参戦を表明。1戦1勝の身で目指す重賞タイトルは、実は一族にとっての“悲願”でもある。
フェアエールングの兄弟姉妹には、半姉のマイネグレヴィル(父ブライアンズタイム)が同じ福島・芝1800mの新馬戦を勝った後、コスモス賞(OP)の3着を挟んで札幌2歳Sで2着。その翌年には、半兄のマイネルシュバリエ(父バトルプラン)も同じく福島・芝1800mの新馬戦を勝ち、そこから挑んだ札幌2歳Sでまたも2着。2年連続で涙を呑んだ経緯がある。
また、フェアエールングの父であるゴールドシップも、2011年のこのレースでは2着。後にG1を6勝する名馬でも手にすることができなかったのが、この札幌2歳Sのタイトルだった。
そんな母にとっても父にとっても因縁のレース。母のマイネポリーヌにとって、ゴールドシップとの子どもはこのフェアエールングが初めてとなるが、ゴールドシップ産駒は札幌2歳Sと好相性であることが知られている。
2019年の同レースでは、ブラックホールがゴールドシップ産駒として初のJRA重賞勝利を成し遂げただけでなく、2着にも同産駒のサトノゴールドが名を連ね、産駒デビュー元年のワンツー決着が話題に。
翌2020年も、白毛の新星・ソダシにはクビ差及ばなかったものの、ユーバーレーベンがタイム差なしの2着と健闘。また、馬券絡みはならなかったが、12番人気で4着と激走したアオイゴールドも、9番人気で5着に入ったヴェローチェオロもゴールドシップの産駒であった。
昨年はゴールドシップ産駒の出走がなく、過去3年で7頭が出走して成績は【1-2-0-4】。人気も3番人気が最高と、期待以上の走りを見せる馬が目立っている。
その要因としては、父のイメージの通り産駒にもパワーに長けたタイプが多く、開催が進んで力を要する馬場に苦しむ若駒が多いなか、それを追い風にできるという点が挙げられるだろう。
今年も例に漏れず、札幌の芝のレースは時計も上がりも掛かる決着が増加中。また、騎手たちもそんな馬場に気を使いながらレースをしようという意識がどんどん強くなっている。
先週のキーンランドC(G3)では、徐々に荒れてきた内側の馬場を嫌った騎手たちが軒並み4角で外へと進路を求め、ぽっかりと開いた内を突いたヴェントヴォーチェが勝利。勝ち馬の姿を見て、有名な「ワープ」を思い出したファンも少なくなかったのではないか。
2012年の皐月賞において、ほとんどの馬が前日の降雨と開催の進みによって荒れた内側を避ける進路を取った中、3コーナーほぼ最後方のある1頭だけが内目のコースを選んで進出を開始。大きく外を回った各馬をごぼう抜きにし、見事1着に輝いたのが、他でもないゴールドシップであった。
今夏の札幌開催も今週でラスト。再び騎手たちの意識が外へと向いて行くならば、フェアエールングが父の伝説を再現するようなシーンが見られるかもしれない。
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