武豊「宿敵」はやがて「盟友」へ……世間を揺るがせた有馬記念から17年、産駒と築く新たな歴史
競馬ファンなら、誰もが一度はその名前を聞いたことがあるであろうディープインパクト。武豊騎手が主戦を務め、デビューから無敗のままクラシック3冠を達成し、G1を7勝した歴史的名馬である。
当時、競馬界を席巻していた武豊騎手とディープインパクトだが、その最強コンビに国内で唯一の黒星をつけたのがハーツクライだった。
それは2005年の有馬記念(G1)でのこと。3冠を達成した直後のディープインパクトが単勝1.3倍の断然人気に推される中、4番人気だったハーツクライがお株を奪う大金星を挙げたのだ。「あのディープインパクトが負けた……」と多くの関係者やファンが驚き、競馬界に激震が走った一戦として、いまだ語り継がれている。
「負けてはいけない馬だけに残念ですし、自分の未熟さを感じています」
レース後の武豊騎手のコメントが物語っているように、初黒星という事実はあまりに大きいものとなった。数多い対戦相手の1頭に過ぎなかったハーツクライが宿敵へと変わった瞬間だったかもしれない。
その後、2頭は引退後も種牡馬として争うわけだが、武豊騎手にとってもハーツクライは引退してなお宿敵として数々の大レースで立ち塞がった存在だ。
というのも、武豊騎手はディープインパクト産駒ではキズナ、トーセンラー、ワールドプレミアなど複数のG1を勝利してきたが、ハーツクライ産駒とは長らくG1を勝てなかったのだ。
過去には、ウインバリアシオンやリスグラシューで好走はあったものの、G1を勝ち切るまでに至らず。不思議なことにハーツクライとは、そういった運命なのかとも感じられた。
「宿敵」はやがて「盟友」へ…
そんな流れが変わったのは、ディープインパクトが他界してわずか2年後だった。2歳王者に輝いたハーツクライ産駒のドウデュースが、武豊騎手に朝日杯フューチュリティS(G1)初勝利をプレゼントしたのだ。
それからというもの同コンビで日本ダービー(G1)を制し、今週末にはディープインパクトも敗れた凱旋門賞(G1)に挑戦するというのだから、何とも感慨深いものがある。
7月にもハーツクライ産駒のノットゥルノでジャパンダートダービー(G1)を勝利するなど、その勢いは止まらない。2歳戦でもすでにクリダーム、フォトンブルー、エゾダイモンを勝利に導いており、武豊騎手にとっては宿敵だったハーツクライが、今や頼もしい「盟友」とも言える存在となっている。
そしてさらに、2歳世代で楽しみなハーツクライ産駒が現れた。25日の2歳新馬を勝利したルクルス(牡2、栗東・松永幹夫厩舎)である。
同馬は、スプリンターズS(G1)や高松宮記念(G1)でいずれも2着したハクサンムーンの半妹。下馬評では坂井瑠星騎手のカンフーダンスに続く2番人気だったが、終わってみれば力の差は歴然だった。
「おっとりした気性ですが、競馬に行くとスピードがあります」
レース後、デビュー勝ちを決めたルクルスをそう称えた武豊騎手。「盟友」ハーツクライ産駒との快進撃はまだまだ続きそうだ。
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