武豊VSルメール、凱旋門賞に見え隠れする「本音」と団結しないチーム・ジャパン
29日、フランス入りしている武豊騎手が公式サイトを更新。今週末の凱旋門賞(仏G1)に向けた意気込みを改めて語っている。
パートナーのドウデュースの現状など、文体自体はいつも通り穏やかだが、タイトルはただ「勝ちたい」の一言。ちなみに武豊騎手の日記のタイトル4文字は今年最少だ。これまで何度も何度も語ってきた、世界最高峰の舞台への思い。短い言葉の中に、その決意の強さがにじみ出ていた。
「邪魔しないでほしい――」
武豊騎手×C.ルメール騎手の一触即発!?
29日に行われたフランスギャロの公式会見の一幕だった。凱旋門賞へドウデュースと挑む武豊騎手と、ステイフーリッシュで挑むC.ルメール騎手が並んで取材を受けたが、その中でさっそく武豊騎手がルメール騎手を牽制したのだ。
無論、メディア向けのリップサービスであり、武豊騎手が「彼とは普段からいい友達」と言えば、ルメール騎手も「いつもリスペクトしています」という間柄。自身の公式サイトでも「最高の通訳をしてくれた」とルメール騎手への感謝を綴っている。
ただ今回の日本代表4陣営が、決して単なる“仲良しカルテット”でないことは知っておきたい事実だ。
「武豊騎手のドウデュース、横山和生騎手のタイトルホルダー、川田将雅騎手のディープボンド、ルメール騎手のステイフーリッシュと4頭で挑む今年は、日本として過去最多の陣容で挑むことになりますが、向こうに着いてもそれぞれが別の厩舎で調整していることは興味深いですね」(競馬記者)
記者が話す通り、ディープボンドとステイフーリッシュこそ清水裕夫厩舎で調整しているが、ドウデュースはパスカル・バリー厩舎、タイトルホルダーは小林智厩舎と各陣営が別々に調整を行っている。
言うまでもなく日本馬にとって、海外の競馬はアウェーだ。だからこそ競馬に限らず、普段はライバルでも、敵地では「チーム・ジャパン」として団結することは珍しくない。
例えばキセキ、フィエールマン、ブラストワンピースの3頭が挑戦した2019年の凱旋門賞では、フィエールマン、ブラストワンピースが共に英国のニューマーケットで調整。前者がサンデーレーシング、後者がシルクレーシングに所属していたが、日本ではNo.1一口馬主クラブの座を懸けて切磋琢磨する間柄でも、現地では“呉越同舟”となっていた。
しかし、今年は4頭それぞれが別々のルートから欧州へ向かい、現地の調整もいい意味で足並みがそろっているとは言い難い。
「馬は本来、群れの中で生きる生き物ですし、海外遠征にもよく帯同馬が用意されているように、基本的には帯同する馬の数が多ければ多いほど馬の精神状態には良いと思います。
ただ、競馬は野球やサッカーのようなチームスポーツではなく、陸上のような個人競技。そういった意味では、必ずしもライバル同士が一致団結することが正しいとは限りません。最後に勝つのは1頭ですし、同じ日本勢だからといって仲良く情報を共有することが、時にマイナスに作用することもあると思います。
今回、それぞれの陣営が別々に動いているのは、そういった思いもあるでしょうし、臨戦過程に様々なアプローチを選択できるのは、偏に日本競馬の凱旋門賞の歴史の賜物だと思いますね」(同)
今年の4頭はドウデュースとステイフーリッシュがフランスで前哨戦に使われた一方、本番へ直行する選択をしたタイトルホルダーが関東馬、ディープボンドが関西馬という関係もあって、4頭が海を渡った飛行機はそれぞれが別々の便だった。
「(ルメール騎手と)一緒に凱旋門賞に出られることを嬉しく思います。でも、僕が勝ちたいです」
共同会見でそんな思いを語ったのは、武豊騎手だ。一方、「邪魔しないで」と言われたルメール騎手も「豊さんにも同じことをお願いしたい」と応戦。もちろんリップサービスの範疇だが、半分は紛れもない本音かもしれない。
1994年の初挑戦から18年、これが10度目の挑戦となる武豊騎手は「大きな目標、夢」と言い続け、母国のビッグレースに挑むルメール騎手も日本馬で勝てば「引退しても良い」と言うほどの舞台。
いい意味で団結しない“チーム・ジャパン”が日本競馬の悲願を果たすのか、競馬の歴史がまた1ページを刻む。
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