
毎日王冠(G2)サイレンススズカの「伝説」は勝ち逃げ? 武豊も夢見た大舞台
今年で第73回を迎えるように、長い歴史を誇る毎日王冠(G2)。これまでに数々の激闘が繰り広げられてきた中でも、未だ“伝説”として語り継がれているのが、サイレンススズカの圧倒的な強さを見せた1998年である。
この年の毎日王冠は、無敗でG1を制した2頭の3歳馬(旧4歳)グラスワンダーとエルコンドルパサーを、宝塚記念(G1)を制した異次元の逃亡者・サイレンススズカが迎え撃つ3強対決の構図であった。
他馬がついていけないほどの大逃げを武器に、連勝街道まっしぐらの中距離王者と2頭の若き怪物の激突に加えて、「内国産馬VS外国産馬」といった日本競馬の行く末を占う意味合いも含んでいたこのマッチアップ。まさに“スーパーG2”と呼ぶに相応しいこのレースは大きな注目を集め、当日の東京競馬場には13万人もの大観衆が詰めかけた。
結果は名手・的場均騎手の奇策ともいえる早仕掛けの戦法をとったグラスワンダー、正攻法で追い上げたエルコンドルパサーをサイレンススズカが完封。現役最強の実力を示したサイレンススズカの、ベストバウトとして後世に語られる名シーンとなった。
サイレンススズカの「伝説」は勝ち逃げ?
だが、毎日王冠での激闘でこの3頭の勝負付けが済んだとは言い難い部分もある。
この時のグラスワンダーは骨折で春シーズンを全休した後の復帰戦であり、その名を世に知らしめた朝日杯3歳S(現FSの前身・G1)から約10か月ぶりの出走。こうした条件を加味すれば、万全のコンディションであったとは言えないはずだ。
エルコンドルパサーも無敗で制したNHKマイルC(G1)の後は休養に入っており、このレースは5か月ぶりに臨んだ秋の始動戦であった。当然ながら陣営の目標はその後のジャパンC(G1)であったはずで、この毎日王冠の段階で“メイチ”の仕上げを施していたとは考えにくい。
一方のサイレンススズカも同じく秋の初戦ではあったものの、前走の宝塚記念からの間隔は約3か月であり、2頭と比べればブランクは小さかった。加えて3週間後の天皇賞・秋(G1)への出走を見据えていたことを踏まえれば、先述の2頭よりはトップフォームに近い状態だったとも捉えられる。
各馬の仕上がり具合の本当のところは、当時の陣営のみぞ知るところであろう。ただ、あくまでも毎日王冠はG2の舞台であり、この3頭が後先を考えない100%の力で激突したとは限らない。こうした側面を考慮すれば、毎日王冠をもって3頭の勝負付けが真についたとは言えないはずだ。
このレースで現役最強の座を確固としたサイレンススズカは、満を持して天皇賞・秋へと向かうが、そこで“沈黙の日曜日”と語られる悲痛な最期を迎えてしまう。

主戦の武豊騎手は『Number Web』のインタビューにて「天皇賞は間違いなく勝っていたんだろうなぁとか、そのあとのジャパンカップはとか、ブリーダーズカップも行っていただろうなぁとか、考えてしまいますね」と語り、サイレンススズカと共に後のビッグタイトルへと臨めなかったことを悔いている。
こうした武騎手の発言をみると天皇賞・秋でのアクシデントがなければ、ジャパンCへの参戦を視野に入れていたことが伺える。その後の有馬記念(G1)で秋古馬3冠や春秋グランプリ制覇を目指した未来もあったのかもしれない。
奇しくもこの年のジャパンCはエルコンドルパサーが、有馬記念はグラスワンダーが勝利し、毎日王冠でサイレンススズカが下した2頭がそれぞれビッグタイトルを掴んでいる。
こうしたG1の大舞台で、万全な状態の2頭とサイレンススズカが激突していれば結果はどうなっていたのか…最高峰のレースでの真の決着は叶うことがなかっただけに、サイレンススズカの死は悔やまれるばかりである。
24年がたった今でも、多くの競馬ファンの語り草となっている98年の「伝説の毎日王冠」。今年の毎日王冠は当時の「3強」対決とは対照的に群雄割拠の構図となっているのだが、いったいどんなドラマが生まれるのだろうか。過去の名レースに思いを馳せながら、今年の毎日王冠が後世に語られるような好勝負となることを期待したい。
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