「72連敗」の名門が託す3本の矢、クラブの威信を懸けた精鋭がスタンバイ
13日、阪神競馬場ではエリザベス女王杯(G1)が行われる。8週連続となるG1開催の幕開けとなる女王決定戦には今年も多彩なメンバーが揃った。
実績最上位は一昨年の三冠牝馬・デアリングタクトだろう。3歳世代からは秋華賞(G1)でワンツーを決めたスタニングローズとナミュールが参戦。古馬勢ではジェンティルドンナを母に持つジェラルディーナや阪神巧者アンドヴァラナウトが注目を集める。
これらの馬に共通するのはクラブ馬ということ。今年の牝馬クラシックは社台RHのスターズオンアースが二冠を達成したほか、近年ではアーモンドアイ、グランアレグリア、クロノジェネシス、リスグラシューといった一口馬主クラブ所属の牝馬が大活躍してきた。
もちろん個人オーナーの馬にも楽しみな存在はいるが、人気面を見ても今年のエリザベス女王杯はクラブの威信をかけた戦いという構図になりそうだ。そんな一戦に勝負をかけてきていると考えられるのが「ウインレーシングクラブ」(以下ウインRC)だ。
東日本愛馬会という旧名称から、1997年に現在の名称に生まれ変わったウインRC。三冠馬オルフェーヴルのライバルとして、G1で4回の2着を記録したウインバリアシオンや、香港G1・2勝のウインブライトといった活躍馬を輩出。9年連続で重賞勝利を挙げるなど「名門クラブ」と呼んで差し支えない存在である。
今年の馬主リーディングでも、クラブ史上2番目に好成績となる第10位と運営は順調そのもの。そんなウインRCが長年遠ざかっているのが国内G1のタイトルだ。25年に及ぶウインRCの歴史でJRA平地G1勝ちは2003年にNHKマイルC(G1)を制したウインクリューガーのみ。その後は8回も2着に入りながら、足かけ20年で72連敗と苦しんでいる。
近年で頂点を意識させたのは先月のスプリンターズS(G1)と2020年のオークス(G1)だろう。前者ではウインマーベルがゴール前で勝ち馬にクビ差2着まで猛追。後者はウインマリリンとウインマイティーが女王デアリングタクトをあと一歩のところまで追いつめたが2着、3着に終わった。
「72連敗」の名門が託す3本の矢
話をエリザベス女王杯に戻すと、今回ウインRCが送り込むのが、先述のオークスで惜敗したウインマリリン、ウインマイティーの2頭にウインキートスを加えた3頭だ。クラブ史上初の同一G1・3頭出しに選ばれた彼女たちは人気薄が予想されるが、侮れない存在である。
その中でもエース的ポジションなのが、オークス2着以外にもG2・3勝の実績を誇るウインマリリンだ。昨年の同レースでは3番人気に支持されながら16着と轟沈。脚元の不安という敗因がはっきりしており、前走札幌記念(G2)で強豪牡馬に食い下がっての3着なら十分に覇権圏内だろう。
3年連続のエリザベス女王杯参戦とあって、人馬ともに経験は豊富。輸送減り対策として栗東滞在で臨む今回は、手塚師も「過去2回と比べて雲泥のデキ」と語るほどコンデションは良好のようだ。ノームコア、リスグラシューといった牝馬でG1を制している、D.レーン騎手の手綱捌きにも注目したい。
2年前のオークスで3着に入って以降、7戦連続着外と不振を極めたウインマイティーは2走前にマーメイドS(G3)を制し見事復活。前走の京都大賞典(G2)では牡馬相手に3着と善戦した。3歳時に鞍上を務めていた和田竜二騎手とのコンビ復活も好調の一因といえそうだ。
伏兵ながら一発あると思わせるのがウインキートスだ。10着に終わった昨年のリベンジを狙う同馬はG2で連続3着の臨戦過程から再チャレンジ。松岡正海騎手騎乗時に限れば、5戦してすべて馬券圏内の好相性。展開の助けがあれば、好走しても不思議ではない。
フルゲート18頭のうち、半数となる9頭のクラブ馬が集まった今年のエリザベス女王杯。中距離牝馬戦線の女王決定戦という主題とともに、クラブ同士の威信をかけた戦いの中で、19年ぶりの悲願に挑むウイン軍団の3頭に注目したい。
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