川田将雅も「悩ましい」ダノンベルーガの今後。ジャパンC“裏口出走”も痛恨…
今秋の天皇賞・秋(G1)をイクイノックスが、マイルCS(G1)をセリフォスが勝利し、早くも世代交代の波を感じさせている今年の3歳世代。
先週のジャパンC(G1)では、そんなハイレベル世代を代表してダノンベルーガ(牡3歳、美浦・堀厩舎)が登場したが、結果は5着だった。
レース後、シャフリヤールに騎乗していたC.デムーロ騎手に騎乗停止処分が下ったように、最後の直線で鞍上の川田将雅騎手が立ち上がるほどの不利があった。陣営としても悔しい結果に終わってしまったが、加害馬が降着にならなかったのは、被害馬に足が残っていなかったことの証明と言わざるを得ない。
ダノンベルーガといえば、ジャパンCと同舞台で行われた今春の日本ダービー(G1)で1番人気に推された大器だ。
しかし、結果は4着。最後の直線では勝ったドウデュースや2着イクイノックスに勝るとも劣らない末脚で追い上げたが、残り200mを切ったところで脚色が鈍ると、最後は2番手から粘り込んだアスクビクターモアを交わすこともできなかった。
そこで難しいのが、ダノンベルーガの今後の方針である。上記の2戦から言えることは、現状のダノンベルーガにとって少なくとも2400mは長いという事実だ。
これは今秋に3000mの菊花賞(G1)を回避して、2000mの天皇賞・秋に進んだことにも起因するが、選択した天皇賞・秋でも同世代のイクイノックスに完敗の3着。最後の直線では上がり3ハロン32.8秒の末脚で追い上げたものの、同36.8秒と完全にバテていたパンサラッサを交わせなかった事実は小さくない。右回りだったとはいえ、同じ2000mの皐月賞でも4着止まりだった。
ただ、皐月賞と日本ダービーで4着し、古馬と戦った天皇賞・秋で3着、不利があったジャパンCでも5着とダノンベルーガがG1級の大器であることは誰もが認めるところ。舞台適性さえ完全にマッチすれば、いつ頂点に立ってもおかしくないはずだ。
「悩ましい」ダノンベルーガの今後…
そこで浮上するのが、ダノンベルーガの「マイラー」としての可能性だ。
これまでマイル以下のレースに出走したことがないダノンベルーガだが、1800mの共同通信杯(G3)では、後の皐月賞馬ジオグリフを相手にしないほどのパフォーマンスを見せている。実際にその一戦があったからこそ、皐月賞でジオグリフは5番人気に留まり、ダノンベルーガは2番人気に支持されていた。
また、父ハーツクライは2019年の年度代表馬リスグラシューや、ジャパンC(G1)を勝ったシュヴァルグラン、今年のダービー馬ドウデュースらを輩出しているように、どちらかといえば中長距離で実績を残している種牡馬だ。
しかし、その一方で現在種牡馬として活躍しているジャスタウェイや、今秋の毎日王冠(G2)を勝ったサリオス、中京記念(G3)で2着したカテドラルなど、名マイラーとして出世する馬も少なくない。
ならばダノンベルーガにも高いマイラーとしての素質があるかもしれない。特に来春、唯一得意の東京で行われる安田記念(G1)は、G1勝ちの大きなチャンスになるはずだ。実際に今回のジャパンCの後、SNSや掲示板などでは早くも「来年の安田記念で見たい」「出てきたら本命」といった声で盛り上がっている。
だが、どうやら可能性は高くないようだ。
「以前から距離に限界を見せていたダノンベルーガなので、マイル挑戦は記者の間でも何度か話題になっていました。しかし、本馬を所有するダノックスには、同世代に今年のNHKマイルC(G1)を勝ったダノンスコーピオンがいます。1つ上にも先日のマイルCS(G1)で2着したダノンザキッドがいますし、この2頭は来春の安田記念の参戦が濃厚です。
オーナーサイドとしては同じレースに3頭出しでは旨味がないですし、ダノンベルーガにはできれば中距離路線を歩んでほしいと考えていると思います」(競馬記者)
さらに記者曰く、ダノンベルーガはもう一つ課題を抱えているという。
「G1級の素質を秘めるダノンベルーガですが、実際に勝ったのはG3の共同通信杯のみ。現在の収得賞金は2400万円で、実は天皇賞・秋ではメンバー中では最下位でした。幸い、登録段階で出走馬決定順22番目だったジャパンCにはレーティングで出走できましたが、今後を考えると賞金の上積みは急務になります。
ただ、本馬は生粋のサウスポーであると同時に、体質に問題があるためレース間隔を開ける必要がある馬。必然的に使えるレースは限られてきますし、陣営は難しい決断を迫られそうです」(同)
記者曰く、来春の目標は「ドバイターフ(G1)が濃厚」とのこと。春にダノンベルーガが出たい左回りのG1は安田記念しかなく、招待制のドバイターフなら賞金に関係なく出走できる可能性があるからだ。
「何より結果が出なかったことが残念で、申し訳なく思います」
レース後、そう謝罪した主戦の川田騎手もそんな事情を深く理解している1人だろう。果たしてハイレベル世代屈指の大器ダノンベルーガは、今後どうG1制覇を目指すのか。本馬にとってベストの選択が求められている。
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