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英国伝説の珍名馬『Potoooooooo』は何て読む? 「ポトーーーーーーー」ではありません【競馬クロニクル 第44回】

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競馬史を彩る「珍名馬」たちの物語

 今回は『競馬クロニクル」は趣向を変えて、ちょっと笑える脱力系の内容をお届けしたい。題して「『珍名馬』の舞台裏」。

 G1の高松宮記念を勝ったオレハマッテルゼをはじめ、重賞2勝のエガオヲミセテ、オジサンオジサン、ヒコーキグモ、モチなど、珍しい名前を付ける小田切有一オーナー所有馬に珍名は、競馬ファンにとってお馴染み。一時は「小田切ウマ」「オダギラー」などと呼ばれ、よく話題になったものである。

 ただこれは小田切氏の意図でウケを狙って付けられたもので、長い競馬の歴史のなかにはいろいろな理由によっておかしな名前が“付いてしまった”珍名馬がいる。

 1952年、中央競馬ではじめて牝馬クラシック二冠(桜花賞、オークス)を制覇した名馬に『スウヰイスー』がいる。父がリーディングサイアーに5度輝いたセフト、母の父がクラシックホースを多数輩出した月友という良血馬。戦前から俳優、歌手として活躍した高峰三枝子氏の持ち馬として知られた馬である(のちにトレードでオーナーは変更となる)。

 スウヰイスー、発音するとちょっと違和感がないだろうか? 実はこれ、ある間違えが起こって馬名が登録された、いわゆる『珍名馬』なのだ。

 馬名はオーナーが調教師に登録の手続きを代行してもらうことがあるが、スウヰイスーはその際に伝達のミスが起こった。オーナーは『スウヰトスー』、現代の仮名使いなら「スウィートスー」という名前を付けることにした。意味としては「かわいいスーちゃん」となるだろうか。その旨を電話で伝えたのだが、調教師がこれを『スウヰイスー』(ス・ウヰイ・スー)と聞き間違え、そのまま登録されてしまったものだと伝えられている。

 彼女が凡百の馬ならば、単なるミスとそのまま忘れ去られたことだろう。しかしスウヰイスーはクラシックホースになってしまったため、現在までこのエピソードが珍しいエピソードとして語り継がれているわけだ。

馬名「Potoooooooo」なんて読む?

 話はさかのぼって、18世紀の英国での出来事。

 サラブレッドの繁栄の基礎となった伝説的名馬にして名種牡馬のエクリプス(Eclipse)がいる。実はその産駒に『Potoooooooo』という珍名馬がいた。

 さて、この馬名はどう読むのか? 答えは『ポテイトーズ』。本来なら『Potatoes』(ポテト=じゃがいも)となるべきところが、ある間違いから付けられた名前なのだ。

 その経緯には諸説あるが、いちばん有名なものをご紹介する。

 当時の英国でグルーム(Groom=厩務員)は下層階級に属する人の仕事とされ、識字率もまだ低かった。ポテイトーズを担当したグルームも読み書きがおぼつかなかったと言われる。

 ある日、このグルームが食事でじゃがいも、つまりポテトを食べたが、本人はそれが何であるかが分からず、知人に訊ねたところ「ポテイトー」と教えてくれた。グルームはその名を忘れないように、厩舎の馬房に書き付けておくことにしたのだが、「Pot」から先の綴りが分からなかったため、「エイト・オー」(eight-o)、つまり8つの「O」(オー)を付け足して『Potoooooooo』と書き込んだ。

 ある日のこと、そのグルームのところへ馬のオーナーであるアビンドン伯爵が訪ねた際に、『Potoooooooo』の書き込みに気が付いた。その意味に関するグルームの説明を聞いた伯爵はたいへんに面白がり、所有馬の正式な名前として採用したというのである。

 この名前はサラブレッドのウェザビーズ社が発刊している血統書『ジェネラルスタッドブック』(General Stud-Book)にも掲載されており、発音は普通「ポテイトーズ(Potatoes)」とすると言われている。

 ちなみにポテイトーズは競走馬として30ほどの勝ち鞍を挙げ、種牡馬としても英ダービー馬を3頭、英オークス馬1頭を出すなどの活躍によってその血を後世に伝え、いまではサラブレッドの歴史に残る名馬として数えられている。

 珍名馬は、ほかにも山ほどいる。たとえばブリーダーズカップ・クラシックなど米国でG1レースを13勝してアイドルホースとなった名牝ゼニヤッタ(Zenyatta)という意味不明な名前はなぜ付けられたのか?など、今後も折を見ながらご紹介したい。

三好達彦

三好達彦

1962年生まれ。ライター&編集者。旅行誌、婦人誌の編集部を経たのち、競馬好きが高じてJRA発行の競馬総合月刊誌『優駿』の編集スタッフに加わり、約20年間携わった。偏愛した馬はオグリキャップ、ホクトヘリオス、テイエムオペラオー。サッカー観戦も趣味で、FC東京のファンでもある。

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