アグネスタキオン、テイエムオペラオーと激闘…「新時代の扉」開いたジャングルポケットの記憶
31日、土曜札幌のメインレースとして開催される札幌2歳S(G3)。1997年に芝1200m条件から芝1800mへと距離が変更されたのを機に、それまでの早熟短距離馬を輩出するイメージからクラシックの登竜門的な役割を担うようになってきた。
芝1800mに変更されてからの勝ち馬にはアドマイヤムーン、ロジユニヴァース、レッドリヴェール、ソダシ、ジオグリフといった後のG1馬が名を連ね、朝日杯フューチュリティS(G1)や阪神ジュベナイルF(G1)で上位人気に推される馬もいた。
優勝馬として初めてクラシックを制したジャングルポケット
なかでも翌年のクラシック候補が誕生する草分け的な存在となったのは、やはり2000年の優勝馬ジャングルポケットだろう。
というのも距離が延長された当初の3年間は、デビュー戦で短距離を勝って出走した馬が多数で、ジャングルポケットのように中距離を使われた馬はいなかった。そういう意味でも札幌2歳S(当時の年齢表記は3歳)の優勝馬から初めてクラシックホースが誕生した事実は、各陣営の意識に少なからず影響をもたらしたはずである。
ジャングルポケットの父は、1988年の凱旋門賞(仏G1)を優勝し、ジャパンC(G1・5着)にも出走したトニービン。引退後は社台グループに購入され、日本で種牡馬として供用された。産駒のベガやウイニングチケットがクラシックを沸かせて一気にブレイク。稀代の女傑エアグルーヴ、ハーツクライを出したアイリッシュダンスもトニービンの産駒だった。
再び札幌2歳Sに話を戻すと、この年の1番人気に推されたのは、デビュー戦と500万下(当時)をともに圧勝したテイエムオーシャン。対するジャングルポケットは5番人気だったことから察しが付く通り、そこまで評価は高くなかった。
レースでは自慢の快足を飛ばしてハナに立ったテイエムオーシャンが先導し、ジャングルポケットは好位の4~5番手を追走。最終コーナーを回って逃げ切りを図るテイエムオーシャンに外からマクったタガノテイオーが並び掛けたところで、両馬を遥かに上回る豪脚で一気に交わし去ったのがジャングルポケットだった。
2着に敗れたタガノテイオーは、次走の東京スポーツ杯3歳S(G3・当時)を快勝して暮れの朝日杯3歳S(G1・現朝日杯FS)で2着。3着テイエムオーシャンは、阪神3歳牝馬S(G1・現阪神JF)を圧勝して2歳女王に輝いただけでなく、翌年も桜花賞(G1)、秋華賞(G1)を制して牝馬二冠を達成した。それほどの強豪相手に圧勝したのだから、ジャングルポケットが世代トップクラスの実力を持っていたことは明らかである。
しかし、そんなジャングルポケットの前に立ちはだかった強敵が、前年のダービー馬アグネスフライトを兄に持つアグネスタキオンだ。
ラジオたんぱ杯3歳S(G3)で初めて激突したライバルの前に2馬身半差をつけられる完敗を喫してしまった。ちなみにこのレースでは、ソダシの父としても有名な外国産馬クロフネが圧倒的1番人気に推されていたが、ジャングルポケットからさらに1馬身1/4離された3着に敗れている。4着馬がクロフネから5馬身も後ろでゴールしていたことからも、上位3頭がいかに異次元の戦いを繰り広げていたかが伝わるだろう。
翌年のクラシック戦線でもジャングルポケットが共同通信杯(G3)、アグネスタキオンが弥生賞(G2)を快勝し、皐月賞(G1)で2度目の直接対決が実現。だが、スタートでの出遅れが仇となり、再びライバルの後塵を拝した。
リベンジを期して挑んだ日本ダービー(G1)だったが、アグネスタキオンがダービー前に屈腱炎を発症して引退。3度目の対決が実現することはなかったものの、ジャングルポケットは父トニービンの産駒が滅法得意としていた東京で世代の頂点に立った。
1番人気で臨んだ秋の菊花賞(G1)は、晩成の大器マンハッタンカフェの4着に敗れたが、O.ペリエ騎手が騎乗したジャパンC(G1)でテイエムオペラオーを撃破する大金星。競馬史に残るハイレベルとして呼び声の高い2001年のクラシックだったが、最後に最優秀3歳牡馬、そして年度代表馬の座を掴んだのはジャングルポケットだった。
ジャングルポケットをモチーフとした物語は、劇場版『ウマ娘 プリティダービー 新時代の扉』でも観られるため、興味のある読者はチェックしてもらいたい。
劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』 公式ホームページ
X(旧Twitter):@uma_musu_movie
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