
米クラシックを戦い抜いた武豊とチーム・ラニが日本競馬に与えた衝撃。「世界で勝つ」という野心が今、日本のダート競馬を動かす

日本競馬にとって、歴史的な一つの挑戦が幕を閉じた。
ノースヒルズの前田幸治オーナー、武豊騎手と松永幹夫調教師と厩舎スタッフ、そして天皇賞馬ヘヴンリーロマンスの仔ラニによる「北米クラシック」挑戦。それはもう結果が出る前から「偉業」と称えられる程、日本競馬にとって前人未到のとてつもない挑戦だった。
ケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントS。わずか1カ月半でクラシック3戦を走り切る戦いは、世界に通じる可能性がある3歳馬を所有していることは当然で、その上で「世界で勝つ」という”野心”がなければ、挑むことさえ躊躇われる世界一過酷な舞台だ。
今から21年前の1995年。かつての朝日杯3歳S(現朝日杯FS)で「幻の三冠馬」フジキセキと互角の勝負を演じ「世代No.2」と評されていたスキーキャプテンのケンタッキーダービー挑戦は、19頭立ての14着という厳しい結果に終わった。
それから13年後の2008年。今度はベルモントSを勝った兄姉を持つカジノドライヴがベルモントSに挑戦。だが、ステップレースのG2には勝利したものの、本番前日に挫石を発症。結局ベルモントSに出走することすらできずに、無念の帰国となった。
スキーキャプテンもカジノドライヴも日本のG1で連対を果たすほどの実力馬である。
これまで日本競馬の北米クラシック挑戦は、箸にも棒にも掛かってはいなかった。それこそ、出走することさえ雲を掴むような話だった。
しかし、その一方でこの時期のJRA3歳ダートの重賞レースはG3のユニコーンSだけで、クラシック路線が確立されている芝と比べて、悲惨なほど評価や賞金が低いのが現状だ。だが、それでも北米クラシックに挑戦しようとする者が現れなかったのは、その挑戦があまりにも高いハードルであったからに他ならない。
だからこそ前田オーナーを始めとする「チーム・ラニ」の今回の挑戦は、日本競馬にとってはクリストファー・コロンブスが新大陸を探しに行くようなものだった。それほど日本にとって未知で、かつ高き壁として、3歳ダート馬世界一を決める北米クラシックは存在していたのだ。
その上で、彼らは本当にただ大海原に”船”を漕ぎ出しただけではなかった。
UAEダービーを勝つことで”新大陸”にたどり着くまでの方法を実践し、クラシック三冠すべてに出走することで、そこでの戦い方、そして何よりも日本の力が通用することを明確に示した。
それは多くの競馬関係者に衝撃を与えた、極めて大きな発見であったことに間違いないだろう。日本競馬にとっては、彼らに国民栄誉賞を与えても良いくらいの新境地の開拓だ。
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