
JRA全G1制覇へ武豊「期待の大物」は米国年度代表馬の初年度産駒!? 松永幹夫調教師「すごく将来性を感じる」受け継がれた快速「ビリーヴの系譜」
話題の大物コマンドラインの完勝で幕を開けた今年の2歳戦線だが、将来性豊かな大物のデビューはまだまだこれからだ。松永幹夫厩舎のグランアプロウソ(牡2歳・栗東)は、世代屈指のスピードスター候補として話題を集めている。
母フィドゥーシアは重賞こそアイビスサマーダッシュ(G3)の2着だったが、韋駄天S(OP)など1200m以下で7勝のスピード自慢。祖母ビリーヴはスプリンターズS(G1)と高松宮記念(G1)を勝つほどの名スプリンターだった。
また、ビリーヴは引退後に渡米して米国の種牡馬と交配された異色の存在。ファリダット、ジャンダルムといった重賞級の素質馬を送り出すなど繁殖牝馬としても活躍した。グランアプロウソの母フィドゥーシアも、そんな祖母に倣って引退後に渡米している。
そんなフィドゥーシアの初仔となるのがグランアプロウソであり、父は本年度に産駒がデビューする新種牡馬のガンランナー。グランアプロウソはJRAで走る最初のガンランナー産駒ということになる。手掛けたのはビリーヴやコントレイルを送り出したノースヒルズであり、馬主は前田幸治氏だ。
「ガンランナーは現役時代にG1を5連勝。ブリーダーズCクラシック(G1)やペガサスワールドC(G1)を勝って、2017年には米国の年度代表馬に選出されるほどの超大物でした。
種牡馬としては未知数ですが、少なくともJRAで最初の産駒となりそうなグランアプロウソは走りそうですね。血統的には母方が強く出ているスピードタイプで、近々札幌開催の1200mでデビューすることになりそうです。鞍上は武豊騎手が予定されています」(競馬記者)
米国の年度代表馬のファーストクロップが日本に上陸した例では、やはり2019年に産駒がデビューしたアメリカンファラオのインパクトが強烈だ。
初年度産駒が高い勝ち上がり率を記録すると、今年のフェブラリーS(G1)を制したカフェファラオや、昨年のジャパンダートダービー(G1)を勝ったダノンファラオら大物が登場。一躍、人気のマル外種牡馬となった。
米国三冠馬のアメリカンファラオに対して、古馬になって本格化したガンランナーはやや奥手なタイプになるかもしれない。だが、グランアプロウソについては松永幹夫調教師が「すごく将来性を感じさせてくれる馬」と太鼓判。順調に行けば、祖母や母と同様にスプリント戦線を賑わす快速馬になりそうだ。
「厩舎の話では『筋肉質で如何にもスプリンターといった体型』だそうです。ただ、普段は大人しい気性のようですが、やや前向き過ぎる面が目立っているとか……。デビュー戦の1200mはまだしも、仮に順調に行っても朝日杯フューチュリティS(G1)に向けて距離を伸ばすことに苦戦するかもしれません。そういった意味でも、武豊騎手の手腕が期待されるところです」(別の記者)
朝日杯フューチュリティSといえば、JRA全G1制覇に最も近い武豊騎手が勝っていないG1の一つだ。武豊騎手にとっては21回挑戦して5度の2着を経験するも、いまだに勝利に手が届かない因縁のレース。大記録達成へ、是が非でも手にしたいタイトルだ。
「ノースヒルズと武豊騎手のコンビといえば、2013年の朝日杯FSに挑戦したベルカントが思い出されますね。今年のダービーのサトノレイナスのように、牝馬ながらに牡馬に立ち向かいましたが、結果は3番人気に支持されながらの10着。将来的にはアイビスサマーダッシュを連覇するなど短距離戦線で活躍しました。まだ気が早いかもしれませんが、グランアプロウソには、あの時のリベンジが期待されますね」(同)
武豊騎手と快速馬といえば、メイケイエールを連想するファンも少なくないだろう。
小倉2歳S(G3)とファンタジーS(G3)を連勝するなど、早くから世代屈指のスピードを披露していたメイケイエールだが、距離がマイルに伸びてから苦戦。前向き過ぎる気性が仇となって阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)で4着に敗れると、横山典弘騎手に乗り替わった桜花賞(G1)では最下位の18着に大敗した。
その後、結局マイルには見切りをつけ、今夏のキーンランドC(G3)からスプリント路線を歩むことが決まった。この馬も普段の調教では大人しいが、レースでは前向き過ぎる気性がネックになり、武豊騎手もずいぶん手を焼いている。
果たして、早くも注目されているグランアプロウソは武豊騎手のJRA全G1制覇に貢献するような名馬になるのか、それとも前向きな気性が災いしてメイケイエールのような道を辿ってしまうのか。デビュー戦から手綱を執る武豊騎手の“英才教育”に注目したい。(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。
PICK UP
Ranking
5:30更新武豊、実は崖っぷち!?「騎乗依頼に感謝です」大阪杯(G1)大量乗り替わりの悲喜こもごも
【大阪杯(G1)予想】スターズオンアース、ジャックドールは切り!データの偏りで狙える穴馬で勝負
【ダービー卿CT(G3)予想】ジャスティンカフェは迷いなく切り!実績の割にハンデが恵まれた穴馬を狙う
- 天皇賞・春(G1)アスクビクターモア陣営の「非情采配」にファン激震! 2年続いた菊花賞馬の乗り替わり
- 今村聖奈「G1好走」も期待された逸材が無念の戦線離脱…ケンタッキーダービー挑戦の夢破れる
- 川田将雅も「競馬への取り組み、姿勢がいい」と活躍に太鼓判! 今村聖奈の同期が重賞初制覇で評価急上昇の舞台裏
- 藤田菜七子「成績不振」の原因とは!? 大阪杯「23連敗」の鬼門…武豊「ドバイWCより厚い壁」で意地の日本馬最先着!【週末GJ人気記事ぶった斬り!】
- 女性ジョッキーの先駆者・藤田菜七子「成績不振」の裏には取り巻く環境が変わった事も原因か
- 大阪杯「23連敗」の鬼門を超えられるか…スターズオンアース、ヒシイグアスを阻む壁
- ジャックドール“逃げ宣言”で他馬を威嚇?大阪杯(G1)武豊「メンバーを見渡せばそういう競馬に」
関連記事
JRA グランアレグリア、サリオス、サートゥルナーリア「早すぎデビュー」も今は昔……? 厩舎の「思惑」が渦巻く6月初旬の新馬戦に、出世間違いなしの“将来のスターホース”も出走!?
JRA岩田望来にのしかかる「武豊の代打」という重圧!? エプソムC(G3)アドマイヤビルゴ友道厩舎と急接近、同期のライバル追撃へ絶対に手に入れたい勲章
「16馬身差」圧勝スノーフォールが示した凱旋門賞攻略のカギ!? 英オークス(G1)ディープインパクト産駒では勝てないといわれた鬼門の克服は「氏より育ち」に光明?
JRA 川田将雅に「騎乗馬選択」の自由なし!? 帝王賞(G1)クリンチャーとの無敗コンビ解消の裏に、浮かび上がるのは主戦騎手の呪縛か
JRA「西高東低」の騎手界に一石投じた永野猛蔵の圧倒的な存在感! 関係者からも「乗れる若手」と高評価、期待の新人がいまだに克服できない超苦手条件は意外にも……