
JRA「種牡馬失敗」の烙印から4年前V字回復も再び低迷……。評価「乱高下」ハービンジャーの命運握る現2歳世代
週半ばに飛び込んできた「ドゥラメンテ死亡」の一報。来年生まれる世代を含めた5世代を残して、9歳という若さでの早逝だった。種牡馬として、まさにこれからという時期だっただけに関係者のショックは大きい。
タイトルホルダーが弥生賞(G2)を制覇するなど春の牡馬クラシックを盛り上げたが、初年度産駒は総体的に苦戦した印象だ。ただし、2世代目となる現2歳はすでに8頭が勝ち上がるなど高い評価を得ている。
6月以降、各地で続々とデビューしている2歳世代。今年は新種牡馬のほかにも、約10年前に社台グループが導入した、あの輸入種牡馬の若駒にも注目が集まっている。
今年15歳となったハービンジャーの2歳産駒たちだ。
イギリスで生産、調教されたハービンジャーは、9戦6勝(うちG1・1勝)という成績を残し、2011年シーズンから社台スタリオンステーションで種牡馬入り。現2歳は8世代目の産駒となる。
初年度に設定された種付け料は400万円。同年度のディープインパクトが1000万円、キングカメハメハが500万円だったことを考えれば、異例の期待値だったといえるだろう。
初年度の代表産駒はベルーフ。15年京成杯(G3)を勝ち、父に重賞初勝利をプレゼントしたが、その後はG3で2着が3度と期待されたほどの活躍はできずに終わった。初年度産駒の重賞勝利はこの1勝だけ。
続く2年目産駒は、これまで4頭が重賞勝利を収めているが、クラシックを賑わせるような大物は誕生せず。400万円でスタートした種付け料も17年シーズンには250万円まで下落していた。当時は“種牡馬失敗”の烙印を押され、種付け頭数も導入当初の半数以下まで減少した年もあった。
しかし、そんなハービンジャーに転機が訪れる。17年の10月から11月にかけて、ディアドラ(秋華賞)、モズカッチャン(エリザベス女王杯)、ペルシアンナイト(マイルCS)が続けざまにG1を3勝。3世代目の産駒が怒濤の快進撃を見せ、種牡馬ハービンジャーの株は一気に上昇。数年後には種付け料・頭数ともにV字回復を果たすことになる。
17年秋の産駒たちの活躍を受け、当然18年シーズンは良質の繁殖牝馬たちが集結した。そして翌19年に生まれたのが現2歳馬たちである。
ディアドラの全弟で4日の札幌2歳S(G3)で有力視されるリューベック、先週の新潟2歳S(G3)で2着したアライバルなど評判馬は多数。秋以降もダノンファンタジーの半弟セレブレイトガイズら良血馬が続々とデビューを待っている状況だ。
17年秋のG1・3勝以降は、4世代目のブラストワンピースが18年有馬記念(G1)、同ノームコアが19年ヴィクトリアマイル(G1)を制覇している。しかし、5世代目以降は再び苦戦傾向で、G1制覇も2年以上遠ざかっている。
一時は600万円まで高騰した種付け料も、今年度は初年度と同じ400万円に逆戻り。200頭以上に回復していた種付け頭数も20年度は激減している。
乱高下する種牡馬ハービンジャーの評価。その命運を握るのはリューベックを筆頭とした2歳世代になるのは間違いないだろう。
【ハービンジャーの種付け料と頭数】
2011年度 400万円 211頭
2012年度 400万円 222頭
2013年度 400万円 159頭
2014年度 350万円 114頭
2015年度 400万円 192頭
2016年度 300万円 102頭
2017年度 250万円 164頭
2018年度 350万円 214頭
2019年度 600万円 217頭
2020年度 600万円 119頭
2021年度 400万円 (未発表)
※種付け料は全て受胎確認後
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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