JRAマイルCS(G1)「逆襲の4歳世代」サリオスに完全復活の気配!? 「秘密兵器」導入でコントレイルの花道飾るか
昨年無敗の三冠馬となったコントレイルが、28日のジャパンC(G1)を最後に引退する。コントレイルの花道を飾るべく、3歳春にしのぎを削ったサリオス(牡4歳、美浦・堀宣行厩舎)が21日のマイルCS(G1)に出走する。
2頭は昨年の牡馬クラシック路線を盛り上げたが、コントレイルは菊花賞(G1)を最後に、サリオスも昨年の毎日王冠(G2)を最後に、ともに1年以上勝利がない。そのため現4歳世代への評価は総じて低く、年長馬だけでなく、エフフォーリアを筆頭とした3歳世代にも圧倒されているのが現実だ。
しかし、今月に入ってからはやや潮目が変わっている。7日にはアルゼンチン共和国杯(G2)でオーソリティ、同日のみやこS(G3)ではメイショウハリオが勝利。さらに先週日曜の福島記念(G3)をパンサラッサが逃げ切ると、エリザベス女王杯(G1)をアカイイトが快勝するなど、ここにきてコントレイル世代の活躍が目立っている。
そんな同世代の勢いを追い風に、サリオスは1年1か月ぶりの勝利を目論む。
ちょうど1年前のマイルCS(G1)から5着、5着、8着と、いずれもG1レースで人気を大きく裏切り続けている。また、今回はグランアレグリアとシュネルマイスターの2頭が存在感を示しており、サリオスは完全に脇役扱い。復活はそう簡単でないというのが専らの見方だろう。
それでも2歳時から大器の片鱗を見せていたサリオスへの期待はいまだ根強く、おそらく4~5番人気には落ち着くはず。「2強」を押しのけ、主役を担う可能性も十分考えられると、あるベテラン記者は言う。
「結論から言うと、近3走は度外視していいと思います。昨年のマイルCSはイン、先行馬有利のなか、サリオスは大外17番枠からスタートで出負け。大外を回して5着でした。しかし、上がり3ハロンタイムはメンバー最速で、ポテンシャルは示していました。
続く大阪杯(G1)は道悪に敗因を求めていいでしょう。終始馬場の悪い内目を走ったことで、スタミナと切れ味を奪われました。レイパパレにはちぎられましたが、グランアレグリアとは0秒2差と大きく負けたわけではありません。
前走の安田記念(G1)もやや出負けして位置を取れず。直線では前がなかなか開かず、これからというときにグランアレグリアに進路を塞がれる不利もありました。ゲート、位置取り、馬場、不利など近3走の敗因は明確です。
この中間に陣営も打てる対策はしっかり打ってきたでしょう。枠順や馬場など運を味方につける必要はあると思いますが、2歳マイル王に輝いた舞台で巻き返す可能性は十分あると思いますよ」(競馬記者)
中間も復活を予感させる素晴らしい動きを見せている。1週前追い切りには栗東から駆けつけた松山弘平騎手が騎乗。『スポーツ報知』の取材に「集中して走れていたし、動きとしても良かった。手前とかもうまく替えていたし、順調にきています」とその手応えを語っている。
そして起爆剤となり得るのが、レースでは初めて着用するというブリンカーだ。1週前追い切りでも着用し、松山騎手の「集中して走れていた」という言葉を引き出している。また、ハミ受けを良くするためのクロス鼻革も着用する予定だ。サリオスにとって2つの馬具は「最後の秘密兵器」といっていいだろう。
さらに血統の後押しにも期待したい。サリオスのように2歳時から重賞戦線で活躍するハーツクライ産駒は、3歳から4歳春頃にかけて勝ちきれない、もしくはスランプに陥る傾向がある。
しかし、4歳秋に息を吹き返すパターンも少なくない。具体的には、ジャスタウェイやリスグラシューが勝てない時期を乗り越え、4歳秋にG1制覇を飾っている。2歳時の実績で2頭を上回るサリオスが、このタイミングで完全復活を遂げても不思議はないだろう。
もし前出の記者の見立てが正しく、馬具装着と父ハーツクライの血がうまくかみ合えば、この1年間の鬱憤を一気に晴らすシーンが見られるかもしれない。未完の大器はいい形でコントレイルへ勝利のバトンを渡すことはできるだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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