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JRAインティで参戦の武豊も「ハッとした」16年前のフェブラリーS(G1)、引退した名伯楽が取った驚きの選択とは

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インティ

 20日、東京競馬場では上半期のダート最強馬決定戦、フェブラリーS(G1)が行われる。

 このレースで展開のカギを握る存在とみられるのが、4着に敗れた前走のチャンピオンズC(G1)から直行するインティ(牡8歳、栗東・野中賢二厩舎)だ。

 当レースを制覇した3年前は、マイペースの逃げに持ち込み、破竹の7連勝で戴冠。連覇を狙った2年前は好位からの競馬を見せたが、いいところなく14着に大敗した。そして昨年はスタートで遅れて後方からとなったが、メンバー2位タイの上がり3ハロン35秒5の末脚を使い6着に入った。

 管理する野中師は16日の最終追い切り後、「いかに自分のリズムで走れるか、気分を損ねないで走れるかが一番のポイント」とコメント。明確な逃げ馬が不在の今回、逃げの手がインティにとって“最善”とみれば、3年前の“再現”を狙いにいく可能性も十分考えられるだろう。

 王者復権を狙うインティの鞍上を務めるのは、4年連続の同コンビで挑む武豊騎手だ。3年前の優勝を含め、過去5度もフェブラリーSでウイニングランを経験しているように、得意なレース。どの勝利も思い出深いが、武騎手にとって2度目の制覇となった2006年を振り返ってみたい。

 その年、武騎手が跨がったのは当時4歳を迎えたフジキセキ産駒のカネヒキリ。2歳夏にデビューし、芝では凡走続きだったが、ダートでは別馬のような走りを見せた。

 3歳2月の未勝利勝ちから、芝の毎日杯(G3)での7着を挟み、3歳秋にかけてダートでは負けなしの6連勝。圧巻だったのは3歳夏のユニコーンS(G3)を皮切りに、ジャパンダートダービー(G1)、盛岡のダービーグランプリ(G1)を駆け抜けたことだろう。

 当時のダート界で「三冠シリーズ」を形成していたこの3つのレース。カネヒキリは金子真人オーナーの所有馬ということもあり、同世代の無敗三冠馬と比較され、「砂のディープインパクト」とも呼ばれていた。

 そんなカネヒキリだが、よもやの初黒星を喫したのは、古馬と初対戦となった武蔵野S(G3)。単勝オッズ1.3倍の断然人気に支持されたが、同世代のサンライズバッカスの前に1.3/4馬身差で敗れてしまった。ただし、勝ち馬とは3kgの斤量差があったこともあり、続くジャパンCダート(G1)では古馬に混じり堂々の1番人気に支持されると、ハナ差ながら見事な勝利を飾った。

 そして明け4歳となったカネヒキリが次なる目標に定めたのがフェブラリーSだった。ダートで唯一の敗戦が同じ東京1600mで行われた武蔵野Sだったこともあって、1番人気とはいえ、単勝オッズは2.7倍と安泰とまで呼べる存在ではなかった。

 しかし、レースが終わってみれば、前走ではハナ差の辛勝だった相手のシーキングザダイヤに3馬身差をつける圧勝。その後は屈腱炎を発症し2年以上にわたる休養もあったが、6~7歳にかけてG1を3連勝するなどダート界の王者に君臨。結局8歳秋に引退するまでG1を7勝し、「砂のディープインパクト」の名に恥じない活躍を見せた。

 カネヒキリにとって4つ目のG1タイトルだった06年のフェブラリーSについて、武騎手はレース直前に自身のオフィシャルサイト『Take a Chance!』の日記に次のように綴っていた。

「栗東トレセンでカネヒキリの追い切りに騎乗しました。ダートのG1、フェブラリーSの追い切りなのに、選択したコースは芝。角居調教師の意見は『速い時計の決着になるでしょうから、少しでもそれに近いところで追い切っておきたい』ということでした」(2006年2月15日)

 昨年2月いっぱいで勇退した名伯楽が選んだ予想外の追い切りメニュー。それはダートG1直前に本命馬が芝コースで追い切るという異例のものだった。これに驚きを隠せない様子の武騎手だったが、日記には続きがあった。

「併せ馬はハットトリックと、デルタブルース。いまのこの厩舎の勢いを感じさせる豪華な組み合わせではありませんか。その2頭に楽々と先着ですから動きはよかったです。これならスタート地点から少しの間だけ芝の部分を走らなければいけない今回の条件でも、と思いたくなります。と、ここまで書いてハッと思い当たりました。角居調教師はボクにそういう自信をつけるために芝コースでの追い切りを選択したのかもしれないなと」(同)

 武騎手はなぜ最終追いが芝だったのかを自分なりにかみ砕き、レースでは1着という満点回答で応えてみせた。名伯楽とレジェンド騎手が見せた究極の化学反応がこのレースだったのかもしれない。

 あれから16年。今年武騎手がコンビを組むインティは8歳を迎え自在性も身につけた。それだけに鞍上の考え次第で運命は大きく左右するだろう。果たして今年の武騎手はどんな作戦で臨むのだろうか。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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