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1勝馬の「重賞級」荒稼ぎに笑いが止まらない!? 無事是名馬の「異例過ぎる」貢献に密かな注目集まる

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 先週末で終わりを告げた夏の北海道開催。中でもG1昇格を期待する声もある札幌記念(G2)は、白毛の女王ソダシ、春のドバイターフ(G1)を制した快速馬パンサラッサらが参戦し、大きな盛り上がりを見せた。

 5頭のG1馬が揃ったハイレベルのレースを優勝したジャックドールは、天皇賞・秋(G1)でもかなりの支持を集めるのではないか。この他にも2歳馬の芝短中距離戦や古馬のダート戦など、バラエティに富んだ条件の重賞が行われた。いずれも秋のG1戦線に向けて重要なステップとなるだろう。

 ファン目線では、とかく重賞などの大きなレースが注目を集めやすいが、これを馬主目線に転じると少し違った見方もできる。

 馬主にとって所有馬は我が子のような愛すべき存在だ。大きなケガや病気もなく、レースに走り続ける馬が「無事是名馬」といわれるように、丈夫で長く走り続けてもらえれば、それに伴う賞金もコンスタントに稼いでくれる。G1のような大レースを勝てなくても、賞金総額では、重賞勝ちに引けを取らない額を手に入れるケースもある。

 大ヒット中の『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)に登場するナイスネイチャやマチカネタンホイザなども、いわゆる「馬主孝行」な馬として知られている馬だ。

 そういった意味で今夏の北海道開催で最も「馬主孝行」ぶりを発揮した馬といえば、3日の札幌6R(1勝クラス・ダート1000m)を勝ち上がったユスティニアン(牡4、栗東・新谷功一厩舎)ではなかったか。

 このユスティニアンだが、実は今夏の函館と札幌を合わせて6戦目にしてようやくつかんだ勝利。しかもそれまでの5戦はすべて2着続きだった。3ヶ月弱の間、コンスタントに走り続け、最後の最後に勝つ最高の結果といえる。

 勝ち切れない競馬が続いていたこともあって、関係者や記者からも「今回もまた2着じゃないか」と噂されていたが見事に勝ち切った。レースでも逃げた馬がそのまま残りそうな展開をゴール寸前でなんとか捕まえることに成功。最後の最後に黛弘人騎手の気迫が勝利を呼び寄せた。

「現在は降級制度が廃止された関係で、一度クラスの上がった馬が再び下級条件に出られなくなったことも大きいです。金銭的なことを考えると、相手が強くなる上のクラスよりも、同じクラスで複数回上位に入る方が、賞金を稼ぎやすい現実もあります。語弊はありますが、勝てなくても結果オーライともいえるケースもあるでしょう。

特に夏場は2勝クラスの短距離ダートはレース数が限られていて、出走するだけでも大変なんです。それなら毎週ある1勝クラスのダートで善戦を続けた方が、結果的に稼げてしまうこともあります」(競馬記者)

 とはいえ、レースはその場限りであり、ユスティニアンが敗れたレースもハナ差やクビ差負けを含んでいただけに、仮に狙ってやろうとしたところで、そう簡単に上手くいくものでもない。結果的に、馬自身が“空気を読んでくれた”といった感じだろうか。

 ちなみに1勝クラスの優勝賞金は770万円、2着の場合は310万が手に入る。となると、ユスティニアンが稼ぎ出した北海道開催の賞金総額は約2300万円。これはG3函館記念の2着1700万円やG2札幌記念の3着1800万円を優に上回るのだから、なかなかの「馬主孝行」ぶりだ。

 4歳の夏に23戦して【2.8.5.8】の成績から分かるように、決してずば抜けた活躍をしていた訳でもないユスティニアンが、まさに「無事是名馬」という安定感で5000万円近い賞金を稼いでいることは異例中の異例。陣営にしてみれば、笑いが止まらないほどの荒稼ぎで貢献してくれたといっていい。

 今後は2勝クラスに上がる上、しばらくの間は得意のダート1000m条件もなく、ここから先は馬自身がどれだけ地力をつけてくるかが課題だ。ただ以前より行き脚がつくようになって流れに乗りやすくもなったため、案外相手なりにやれる可能性もありそうだ。

 主戦を任される黛騎手も「夏の間、ずっと頑張っていましたし、本当に偉い馬です。最後に勝てて良かったです」と労っていたユスティニアン。これからも密かに注目したいコンビである。

高城陽

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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