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「5倍返し」に成功した武豊の有言実行、最低人気馬でもやる気十分だった裏事情

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武豊騎手

 3日、盛岡競馬場と門別競馬場ではJBC4競走が行われた。このうち盛岡のJBCスプリント(G1)とJBCクラシック(G1)の2鞍に騎乗した武豊騎手は、いずれのパートナーも人気以上の着順に導き、存在感を見せた。

 まず、11R・JBCスプリントでは4番人気のヘリオスに騎乗。約2年ぶりの6ハロン戦がやや不安視されたこともあってか4番人気にとどまったが、「スタートを決めてくれて、理想的なポジションが取れた」という武騎手のコメント通り、道中2番手から直線しぶとく粘り、3着を確保した。

 直後の12R・JBCクラシックは、武騎手が過去8勝をマークしている好相性のレース。ところが、騎乗したクリノドラゴン(牡4歳、栗東・大橋勇樹厩舎)は、JRA勢で最低となる8番人気の低い評価だった。

 しかし、そこは名手の腕の見せ所。レースではいつも通りの後方待機策で末脚を温存。勝負所で徐々に押し上げを図ると、メンバー最速の上がりで帝王賞(G1)を制したメイショウハリオ(5着)に先着。大健闘ともいえる4着に食い込んだ。

「前有利な馬場に加えて、ペースも遅かったですね。4角で前にいた3頭がそのまま馬券圏内という完全に先行馬有利のレースでした。そんな中、クリノドラゴンが重賞勝ち実績のある相手に互角以上の走りを見せました。

武騎手も馬の実力をよく分かっていたのでしょう。無理に勝ちに行く競馬はせず、“うまくいけば馬券圏内”という乗り方に徹していたように見えましたね。レース後は『思い通りのレースができた』とコメントを残しています」(競馬誌ライター)

最低人気馬でもやる気十分だった裏事情

 また、武騎手はこのレースに臨むにあたって、オフィシャルサイトの日記にある決意を記していた。

「(JBCは)種牡馬の所有者が一般社団法人ジャパンブリーダーズカップ協会に種牡馬登録することがまず必要な、生産者主導のビッグイベントなのです」と、JBCの背景を解説した武騎手。

 続けて「クリノドラゴンの父はアスカクリチャンで、産駒数が少ないこともあって、その登録がされていなかったそうです。それでも出走できたのは、オーナーが1着賞金(1億円)の2%にあたる高額の追加登録料を支払ったからでした」と出走に至った経緯を明かした。

 そして「普段はあまり考えないことですが、なんとか元は取りたいと思ったりしています」(武豊オフィシャルサイト日記、11月2日付)と結び、騎乗機会を与えてくれたオーナーに報いたい気持ちを明言していた。

「クリノ」の冠名で知られる栗本博晴オーナーは、JBCクラシックにクリノドラゴンを出走させるために200万円の追加登録料を払ったわけだが、武騎手のいう“元を取る”ための絶対条件は5着以内。オーナーにとっては、テーオーケインズら強豪相手に“ギャンブル”ともいえる挑戦だったが、見事4着に入って、追加登録料200万円の「5倍返し」となる1000万円の賞金獲得に成功した。

 馬券を買っていたファンにとっては悔しい着順だったが、オーナーの期待に応えた武騎手はこの結果に肩の荷が下りたのではないだろうか。

中川大河

中川大河

競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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