某県では「1日で撤去」されたマシン？ 希少な一発台のエピソード【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第50話：羽根もの一発台】

第５０話　羽根もの一発台

　以前にも書いたことがありますが、昔のパチンコには「一発台」と呼ばれる機種が存在しました。これは、いわゆる「普通機」の釘を強引にひん曲げることにより、特定の入賞口に飛び込んだら打ち止めまで一直線…という、無茶な釘調整を施した台を指します。

　その手法には大きく分けて2種類がありましてね。一つはカイザーチューリップ方式の、新たな入賞ルートが開けることで出玉を増やしていくタイプ。西陣の『ウルフ13』や京楽の『アトミックⅠ』などがこれに該当します。

　もう一つが、大当り時に開放したチューリップの先端に玉が当たり、その軌道を変えられることで別の入賞口に玉が入って出玉を増やすタイプ。一発台の最高傑作と名高い「スーパーコンビ」（三共）以降はこのタイプが主流になったため、多くのプレイヤーが一発台と聞いて思い浮かべるのはコチラだと思います。コンビの他に三星の「セイヤ」やニューギンの「ベータ」などが有名ですね。

　これらは全て「普通機」ですが、当然のことながらメーカー側は「強引な釘調整を行うことで一発台として機能するようになる」のを考慮して制作しており、一発台調整された普通機は人気ジャンルとして多くのファンに愛されました。いや、厳密に言えば一発台というジャンルは存在しないんですけどね。まぁ、当時は何でもありの時代でしたし、そもそも一発台とは営業方法の一種と考えれば納得がいくと思います。

　ところで、一発台とは基本的に「普通機」をベースにしてるんですが（稀に一般電役を用いるケースもある）、長いパチンコの歴史の中には別ジャンルの機種をベースにした、とんでもない一発台もありました。今回はそんな機種の昔語りをお届けします。

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　時は昭和62年の12月。当時、私は大分県中津市の土木建築業者で現場作業員をやっていました。なぜ法学部を卒業して現場作業員を…なんていうクエスチョンはさておき、この日は会社の忘年会で、中津駅近くの某料亭に19時集合となっていました。

　ただ、ちょっと時間を読み違えて18時前には会場に着いちゃったんですよね。失敗したなぁ。だけどもう仕方がない、集合時刻までパチンコを打って時間を潰そう！　そう考えて近くのパチンコ店（これまで一度も入ったことがない一見の店）に入りました。どのみち時間潰しだから遊べる羽根物を打つのが良いよね。そんなわけで、パチンコのシマを見て回ると、妙に客付きの悪い羽根物がありました。

「お店にとって戦力外のシマなのかな？」

　そう判断したなら普段は素通りするのですが、初見の機種だったから何となく興味を持って釘を見ると…。

「何これ？ オトシも寄りも結構甘いじゃん！」

　そう、ハカマが綺麗なら命釘も開き気味の上げ調整で、騙し釘には見えないんですよ。しかも、シマ全体が同じような釘姿をしており、気づいた時には適当な台に座って打ち始めてました。しかし…。

「なるほど、釘が甘いわけだ。オトシもヘソも1個賞球で、Vゾーンへの入賞ルートが無茶苦茶にキツいじゃん」

　そう思ってヤメようとした瞬間、役物のフックに玉が引っかかって羽根が開きっぱなしになったんですよ。もちろん、即座に台上のボタンを押して店員さんを呼びますよね。役物内での玉掛かりはVゾーンに入れてくれる…というのが当時の常識でしたから、引っかかった玉をVに入れてくれるものと私は思いました。

　ところが、呼び出しランプに応えてやってきた店員さんは、何を思ったのかフック部分にさらに玉を詰め、役物をガチガチに固めてしまいました。当然、羽根は全開した状態のままびくともしません。

「4000個で打ち止めだよ」

　その店員さんの一言で、私は全てを察したのです。この台、見た目は羽根物だけど、中身は一発台だ！ そう、この機種こそが銀座の一発台『バズーカ』だったんです。

　さほど設置台数が多くなかったため一発台マニアでも知らない方が多いでしょうが、銀座の「バズーカ」は希少な一発台であり、当時、千葉県においては当局の指導により1日で撤去された曰く付きの機種なのです。まぁ、確かに羽根物と思って座ったのに中身が一発台だった…なんて目に遭えば、問題にもなりますわな。

　結果、わずかな時間でバズーカを打ち止めした私は、約1万円の勝ち金を得てホクホク顔で忘年会に出席しました。いやぁ、美味しかったなぁ！ だけど、このパチンコ店で打つ機会は二度となく、結局のところ私とバズーカは一期一会の出会いで終わったのです。長いことパチンコを打っていると「一度しか打ったことのない機種」も少なくないんですけどね。これほどのインパクトをくれた機種は他にありません。

　だけど、もう一度打ってみたかったなぁ…。

　いや、思い出は美しいままの方が良いのかな？