【徹底考察】札幌記念(G2) モーリス「示すのは『進化』か『限界』か……新たな船出は、決して順風満帆ではない」
『考察』
今週末の札幌記念で、久々の2000mを走ることになった現マイル王モーリス。1900m以上の勝利は一度もなく、2000m以上を走るのは3歳春の京都新聞杯(2200m)の7着以来となる。
モーリスのように安田記念とマイルCSの両方を制した統一マイラーは過去に10頭いるが、そんな超A級マイラーが2000m以上のレースに矛先を向けるのは、そう珍しいことでもない。
「することがなくなった」という言い方は乱暴かもしれないが、実際にカテゴリーを制圧するような名馬は、その後新たな可能性を求めて海外へ遠征したり、異なる距離に挑戦したりするケースは競馬の古き良き伝統として残っているからだ。
ちなみに過去に統一マイラーとなった9頭の2000m以上の「最高成績」は下記の通り。
ニホンピロウイナー 天皇賞・秋 3着
ニッポーテイオー 天皇賞・秋 1着
オグリキャップ 有馬記念 1着
ノースフライト エリザベス女王杯 2着
トロットサンダー 未出走
タイキシャトル 未出走
エアジハード 天皇賞・秋 3着
アグネスデジタル 天皇賞・秋 1着
ダイワメジャー 天皇賞・秋 1着
やはり2000m以上のレースで最も距離がマイルに近い天皇賞・秋に良績が集中しているが、このクラスになると最低でも「馬券圏内」には食い込んでいる。つまり、決してベストではないかもしれないが、「ずば抜けて高いマイル能力があれば、2000mで不利を埋めることは可能」ということになる。
無論、オグリキャップやダイワメジャーのように必ずしもマイルがベストとは言えないパターンも存在するが、「ずば抜けて高いマイル能力があれば、2000m級なら距離の不利を埋めることができる」という考え方は牡馬クラシックの第一弾・皐月賞にも共通するものがある。皐月賞もまた、2000mのレースでありながら先述したダイワメジャーやロゴタイプ、ジェニュインなど卓越したマイラーを輩出している。
従って、過去の統一マイラーと比較しても、その能力に遜色のないモーリスが2000mで通用する可能性は極めて高い。ましてや天皇賞・秋と比較して大きくメンバーの落ちる札幌記念では、取りこぼしが許されないレベルだろう。
だが、唯一気になるのが、前走の安田記念の内容だ。
ロゴタイプに渾身の逃げ切りを許し、連勝が7で止まった前走の安田記念。2番手で追走したモーリスは、最後までロゴタイプを捕まえることができなかった。
香港遠征となった前々走のチャンピオンズマイルから検疫の都合で東京競馬場での調整を強いられたこと、手前を替えることが苦手な左回りのレース、さらには初コンビだったT.ベリー騎手と手が合わなかったことなど、多くの敗因が挙げられているが、最も直接的な敗因はレース中に「掛かった」ことだ
「逃げるロゴタイプを2番手で追走した」といえば聞こえがいいが、実際は前に馬が置けずに、折り合いを欠いたまま、ダラダラとポジションが上がった結果が2番手というだけだった。
その結果、直線では本来の伸びを欠き、ロゴタイプにつけられた着差は1・1/4馬身差。何よりもモーリスの上がり3ハロンは「34.0秒」と、逃げたロゴタイプの「33.9秒」を下回っているだけに、内容的には完敗である。
ちなみに「34.0秒」は何の見せ場もなく早々に脱落したリアルスティールと、-21kgで走れる状態ではなった香港のコンテントメントを除けば、最も遅い上がり。なんとか2着を保ったものの、3着フィエロとはハナ差、4着サトノアラジンとはさらにクビ差まで追い詰められた薄氷の2着だった。
率直に述べて、ここ最近のモーリスとしては最低のレース内容であり、到底マイル王の走りではない。そんな内容でも2着に踏ん張ったことは評価できるが、この内容を繰り返すようでは秋の天皇賞はおろか、今週末の札幌記念でさえ足をすくわれる可能性は高いと述べざるを得ない。
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