JRA「史上初」蛯名正義と横山典弘が熱い抱擁――。「負けなくてよかった」12分間の写真判定が生んだ奇跡【蛯名正義引退寄稿】
やがて、電光掲示板の1着の欄に浮かび上がったのは「17」。待ち侘びたアパパネの陣営、そして観客と湧き上がる東京競馬場。その下には「18」が点灯し……。
ほんの一瞬、東京競馬場のスタンドが静まり返ったような気がした。「17」と「18」の着差を示すところに記された「同」という文字が示す事実を捉えかねているのだ。
2010年は、日本競馬史上初めて「2頭の女王」が誕生した年だった。
アパパネとサンテミリオンが起こした奇跡。共に勝者となった蛯名騎手と横山騎手は、検量質で抱擁を交わしながらお互いの検討を称え合った。G1での1着同着は、1センチ単位で正確無比な写真判定を行えるJRAで史上初の出来事だった。
「正義から『おめでとう』と言われたので、有利だと思っていたんだけど、判定が長引いた結果は同着だったね。大外枠からよく頑張ってくれたよ」と、珍しく心から喜びを爆発させた横山典騎手。
対照的に「負けなくてよかった。どちらも勝者でよかった。不安と言われた距離もなんとかこなしてくれたし、こういう馬場もこなしてくれてよかった」と1番人気の重責を果たし、牝馬三冠へ希望を繋いだ蛯名騎手。
2人の優勝騎手が肩を組んで並んだインタビューの光景は、まさにその年のオークスを象徴するようなシーンだった。
だが、実はこの2人、これが初めてではない。
遡ること18年前。1992年に大井競馬場で行われた帝王賞(G1)でも2人が鞍上を務めたナリタハヤブサ(横山)とラシアンゴールド(蛯名)がゴールまでデットヒート。地方競馬のG1で初の1着同着を記録している。
しかも、それを2人ともがはっきりと覚えており、オークスの同着決着後にすんなりと出てくるのだから、トップジョッキーの記憶力は本当に驚愕に値する。
あれから11年。今週末、蛯名正義はついにムチを置き、横山典弘はなお走り続ける。そして、ハワイの赤い鳥アカハワイミツスイに由来するアパパネの娘、アカイトリノムスメは史上初の母娘三冠制覇へクラシックの中心へ躍り出た。
(文=浅井宗次郎)
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