GJ > 競馬ニュース > 蛯名正義と横山典弘が熱い抱擁
NEW

JRA「史上初」蛯名正義と横山典弘が熱い抱擁――。「負けなくてよかった」12分間の写真判定が生んだ奇跡【蛯名正義引退寄稿】

【この記事のキーワード】,

JRA「史上初」蛯名正義と横山典弘が熱い抱擁――。「負けなくてよかった」12分間の写真判定が生んだ奇跡【蛯名正義引退特集】の画像1

 まるで時間が止まってしまったかのような、本当に長い長い審議だった。

 鳴りやまないどよめきと、静かな雨に包まれた東京競馬場。二冠か、新女王誕生か――。

 2010年5月23日。その年のクラシックを争う3歳牝馬の頂点を決める決戦となったオークスのゴール板を並んで通過したのは、大外枠を示すピンクの帽子の2頭だった。

 内に、トライアルのフローラS(G2)を快勝した新勢力サンテミリオン。

 外に、世代を牽引する立場として二冠を狙った桜の女王アパパネ。

 残り200mを切ってからは完全に2頭の叩き合いになり、お互いがまったく譲らないままゴールに飛び込んだ。

 勝ったと自信を持っていたのは、サンテミリオンの鞍上・横山典弘騎手だった。しかし、肉眼では到底確認できない大接戦。ウイニングランを行わなかったことからも、当然確信などなかったはずだ。

 逆に負けたと思っていたのはアパパネの鞍上・蛯名正義騎手だった。引き揚げてくると「2着」の脱鞍場にアパパネを入れようとしたが、勝利を信じているアパパネの陣営に促され、とりあえず「優勝馬」の脱鞍場に入った。

 一体、どれだけ時間が経ったのだろうか。実質は10分、いや、15分、20分か……。

 雨と靄で景色と共に時間の感覚までぼやけてくる中、やがて、そしていつか必ず電光掲示板に浮かび上がる「審判の時」を、東京競馬場に居合わせたすべての人々が固唾を飲んで見守る。

 写真判定のランプを灯したまま、今か今かと待たれる電光掲示板の一番上には、サンテミリオンが勝っていれば「18」が、アパパネが勝っていれば「17」が刻まれるはずだが……。

 すっかり時間の止まってしまった東京競馬場の上を、雨だけがまるで他人事のように音もなく降り続いていた。

JRA「史上初」蛯名正義と横山典弘が熱い抱擁――。「負けなくてよかった」12分間の写真判定が生んだ奇跡【蛯名正義引退寄稿】のページです。GJは、競馬、, の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。ギャンブルの本質に切り込むならGJへ!

Ranking

5:30更新
  • 競馬
  • 総合
  1. 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
  2. JRA調教師の目標は「餌やり」からの卒業!? 競馬界の「影の王」ノーザンファーム外厩大成功に存在意義ズタズタ……
  3. アドマイヤ軍団が「G1・45連敗」武豊と絶縁し「40億円」と引換えに日本競馬界フィクサーの”逆鱗”に触れた凋落の真相?
  4. エアスピネル降板に武豊騎手は「何」を思う……8年前、すべてを手にしてきた天才騎手が”最大級”の屈辱を味わった「ウオッカ事件」とは
  5. 「シャフリヤールの激走はわかっていた」本物だけが知る有馬記念裏事情。そして“金杯”で再現される波乱の結末とは?
  6. JRA「パワハラ裁判」木村哲也調教師が復帰。大塚海渡騎手への暴言、暴力行為による調教停止処分から約3か月…若手実力派調教師の汚名返上に期待
  7. 浜中俊「哀愁」の1年。かつての相棒ソウルラッシュ、ナムラクレアが乗り替わりで結果…2025年「希望の光」は世代屈指の快速馬か
  8. 天才の息子・福永祐一は何故「天才」と呼ばれないのか? 「漁夫の利」に集約されたシュヴァルグランでの「決意」に落胆
  9. JRA種牡馬フィエールマン「二軍スタート」の冷遇に疑問の声……実績はコントレイルに次ぐNo.2も問われる「3000m級」G1の価値
  10. 「正直なところ辟易としています」武豊が巻き込まれた29年前のアイドルホース狂騒曲…レース前に明かしていた「コンビ結成」の裏話