JRA「距離と芝は大丈夫」C.ルメールは合格点も……、カフェファラオ「追試」に課題は盛り沢山! 函館記念(G3)で露呈したのは芝適性よりも深刻な問題
夏の荒れるハンデ重賞・函館記念(G3)は、今年も大波乱の結末が待っていた。
若手2人が競り合う展開は、1000m通過58秒5のハイペースとなった。これは3連単の払戻が343万となった昨年の58秒8より0秒3速いラップ。これだけでもただならぬ雰囲気を感じさせるものだが、少し離れた3番手から抜け出したトーセンスーリヤの横山和生騎手の冷静なペース判断は見事だった。
バテた2頭を交わし去ると、最後の直線で力強く抜け出しての勝利。2着に3馬身の差をつける完勝で2つ目の重賞タイトルを手に入れた。14番人気アイスバブルが2着、12番人気バイオスパークが3着に入った3連単の払戻は20万1770円。
この波乱に一役買ってしまったのが、C.ルメール騎手が騎乗して9着に敗れたカフェファラオ(牡4、美浦・堀宣行厩舎)だ。同馬は2月のフェブラリーS(G1)を勝利しており、メンバー中、唯一のG1馬。今回、芝のレースは初めての挑戦ながらも、ファンは1番人気に支持した。
16頭立ての芝2000m戦。1枠1番から好スタートを決めたカフェファラオは、インの6番手を追走する。勝負どころとなった最終コーナー入り口で進出するも、直線では外からアイスバブルに寄られて狭くなるシーン。ルメール騎手は無理をせず、流すような格好でゴールした。
着順こそ9着だが、58.5キロのトップハンデで2着馬と0秒2差なら、それほど悪くない結果だったとも考えられる。こちらについてはルメール騎手も「距離と芝は大丈夫」と振り返ったように、一応の及第点は与えられかもしれない。
そもそもカフェファラオ陣営が、函館記念出走にあえて踏み切った理由には、堀師がコメントしていたように小回りの適性を確認したかったからだ。同馬は東京コースのダート1600mを大の得意としているようにスピードがある一方、時計の掛かる地方の深い砂では、パフォーマンスを落としていた事情もあった。
そのため、高速馬場になりにくい洋芝の北海道開催で、小回りの函館・芝2000mを試金石としたことは理解できる。鞍上のルメール騎手から問題なしとジャッジが出たからには、引き続き札幌記念(G2)の出走も視野に入るだろう。
ただ、この挑戦にはまだまだ課題が多いことも確かである。
ゴール前で挟まれそうになる不利があったとはいえ、勝ち馬は遥か前方でゴール。函館記念がG3ということを考えると、物足りなさを感じてしまう結果である。G1馬という看板を背負っているカフェファラオだけに、求められるハードルは高い。
このまま「追試」の札幌記念でも結果を残せないようなら、レースの選択肢はかなり狭い範囲で限定されてしまう。ダートG1馬の二刀流挑戦は最悪の場合、「芝×」「小回り×」「交流重賞×」「2000m以上×」と使えるレースが本当に限られる八方塞がりのようなリスクも見え隠れしている。
もし、札幌記念に出走するようなら、今年の桜花賞馬ソダシとの対決も実現する。背水の陣となりそうな次走で、カフェファラオはこの窮地を脱することが出来るだろうか。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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