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JRA福永祐一の「独占欲」を刺激したアンドヴァラナウト、秋華賞(G1)で有力視ファインルージュを選ばなかった裏事情にトップ騎手のプライドが見え隠れ

JRA福永祐一の「独占欲」を刺激したアンドヴァラナウト、秋華賞(G1)で有力視ファインルージュを選ばなかった裏事情にトップ騎手のプライドが見え隠れの画像1
ソダシ 撮影:Ruriko.I

 17日に阪神競馬場で開催される秋華賞(G1)は、早くも白毛のアイドル・ソダシ一色ムードが濃厚。当面のライバルと見られていたサトノレイナスが、骨折により無念の戦線離脱となったこともあり、ますますソダシ人気に拍車が掛かりそうな雰囲気も強まった。札幌記念(G2)で古馬を一蹴した実力馬の二冠達成に大きな注目が集まりそうだ。

 ただ、そんなソダシに対してライバル陣営も黙って見ている訳にはいかない。紫苑S(G3)を制したファインルージュ、ローズS(G2)で既存の勢力を塗り替えたアンドヴァラナウトらも虎視眈々。ソダシの牝馬二冠を阻止すべく、爪を研いでいるだろう。

 その一方で、両トライアルを勝利した2頭は、いずれも福永祐一騎手のお手馬だったことも見逃せない事実。春の桜花賞、オークスというG1でコンビを組んでいたファインルージュを優先するのでは?という見方が濃厚の中、福永騎手が選択したのは意外にも夏の上がり馬であるアンドヴァラナウト(牝3、栗東・池添学厩舎)の方だった。

 ファインルージュが秋の復帰戦を惨敗でもしていたのならまだしも、むしろ自身の好騎乗で勝利した上での乗り替わり。単純に「強い方」を選択しただけという声も一部で出ているが、記者からは面白い話を聞くことが出来た。

JRA福永祐一の「独占欲」を刺激したアンドヴァラナウト、秋華賞(G1)で有力視ファインルージュを選ばなかった裏事情にトップ騎手のプライドが見え隠れの画像2
ファインルージュ 撮影:Ruriko.I

「当の本人も秋華賞でファインルージュに乗る方向で、話が進んでいたのは事実ですが、アンドヴァラナウトがローズSで既存勢力相手にあそこまで強い競馬をするとは思ってなかったようです。

夏の2戦で見どころのあるレースをしていましたが、奥手の血統でまだまだ心身共に成長途上。本格化するのは来年以降と考えていたにもかかわらず、あんな勝ち方をされたらそりゃ心も揺らぎますね」(競馬記者)

 実際、関係者に「現時点での完成度ならファインルージュ、伸びしろを考えるならアンドヴァラナウトやな。秋華賞だけで見るならどちらが上に来るかは本当に分からない。それくらい差はないよ」と話していたようだ。

 レース後にも「G1の舞台でも十分勝負できるだけの馬」、「僕自身もそうですが皆さんも楽しみにしていただけたら」など、コンビ正式発表前ながら続行が既定路線と思わせるようなコメントも出ていただけに、この時点で“心変わり”は「審議」ではなく「確定」していたのかもしれない。

 とはいえ、本当の決め手になった理由は、パートナーの急激な成長だけではないという噂もあるため、こちらとしては気になるのも当然。前述の記者が推察した裏事情を教えてくれた。

「どうやら騎乗馬に対する思い入れの差も関係していたみたい。ファインルージュは北村宏司騎手でデビューして、その後はC.ルメール騎手が騎乗。ですが、ルメール騎手にはサトノレイナスがいたため、桜花賞で福永騎手にチャンスが回ってきました。

対するアンドヴァラナウトは、デビューからずっと自分が乗ってきた馬。福永騎手としては、棚ボタ的な展開で手に入れた馬よりも、自分が教育した馬を優先したかったようです」(同)

 これについては福永騎手だけということではないが、「自分以外の騎手が乗った事がない」馬というのは物凄く大きな事らしい。

JRA福永祐一の「独占欲」を刺激したアンドヴァラナウト、秋華賞(G1)で有力視ファインルージュを選ばなかった裏事情にトップ騎手のプライドが見え隠れの画像3

 あの武豊騎手でさえ、「ディープインパクトに競馬で乗った事があるのは僕だけですから」と自慢しているほど。凱旋門賞(仏G1)のためにフランスへ遠征したオルフェーヴルの乗り替わりを知らされた池添謙一騎手の落胆ぶりは相当激しかったともいう。

 デビューから継続して騎乗を任されるということは、その騎手に対する陣営からの信頼の証ともいえ、騎手にとってはある種の「ステータス」のようなもの。だからこそ、G1のような大舞台で結果を残すことが出来れば、達成感もより一層ということか。

「現在、レースで馬を教育することが許されたり、騎乗馬を選ぶ権利を持っている騎手はルメール、川田、福永くらいと言われています。短期免許の外国人騎手が、再び来日可能になればそういった形も崩れるでしょうが、まだまだ先がわからない状況です。

そういった中で、彼らが他の騎手より1つ上の次元で騎乗しているという評価を得ていることは、いつ降ろされても不思議ではない中堅や若手の騎手から羨望や嫉妬もあるでしょう」(同)

 ローズSの快勝で福永騎手の「独占欲」を刺激したアンドヴァラナウト。自身の想像を上回る走りにG1でもコンビ続行を決断した福永騎手。相思相愛のコンビは、秋華賞でどのような走りを披露してくれるだろうか。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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