JRA菊花賞(G1)「最も強い馬が勝つ」歴史はまだまだ健在!? エフフォーリア、シャフリヤール「逃亡」も最強馬はやはりここから誕生?
24日、阪神競馬場では牡馬クラシックの最終関門である菊花賞(G1)が開催される。例年なら京都競馬場で開催される伝統の長距離戦だが、今年は阪神での開催。過去81回の歴史で、阪神開催の菊花賞はこれが2度目となる。1979年にハシハーミットが優勝してから、42年ぶりとなる。
現在のところ、下馬評では神戸新聞杯(G2)を制したステラヴェローチェ(牡3、栗東・須貝尚介厩舎)が、1番人気の支持を集めそう。春の二冠でともに3着に好走した実力馬だけに、悲願のG1獲りに注目が集まる。
その一方で、どことなく安心できない気持ちになるのは、ソダシの秋華賞(G1)敗戦も影響しているからだろうか。オークス(G1)で8着に敗れたとはいえ、芝2000mのG2である札幌記念を勝利して距離への不安を一蹴。桜花賞馬と相性のいい秋華賞で、オークス同様単勝オッズ1.9倍の断然人気に推されながら、キャリア最低の10着に沈んだ。
そんなソダシと同じく吉田隼人騎手と須貝厩舎のタッグが、リベンジを懸けて挑むのがステラヴェローチェだ。
比較的最近でこそ、顕著な活躍をしている吉田隼騎手だが、G1という大舞台での実績はもうひとつ。2004年にデビューした同騎手が、初めてG1タイトルを手にしたのは、ゴールドアクターとのコンビで有馬記念(G1)を優勝した15年。
ソダシのお陰で2勝を上乗せして計3勝としたものの、圧倒的1番人気を裏切った翌週に冷静な騎乗ができるのかとなると不安もある。短距離戦に比して、道中の位置取りやライバルとの駆け引きが重要とされる長距離戦。再び1番人気を背負う菊花賞で、最高の結果を残すことが出来るだろうか。
競馬の歴史としては「最も速い馬が勝つ」皐月賞、「最も運のある馬が勝つ」ダービー、「最も強い馬が勝つ」菊花賞とそれぞれのG1が呼ばれてきた。
本来の意味的に最も強い馬こそ、出走するのが望ましいレースのはずだが、近年はスピード競馬が全盛。菊花賞や春の天皇賞などの長距離戦を、あえて使わない陣営も珍しくなくなりつつある。場合によっては中山芝2500mの有馬記念(G1)すら回避する馬もいるほどである。
そこで改めて2000年以降、皐月賞馬とダービー馬が不在の菊花賞を確認してみたい。
21年の間で皐月賞馬が菊花賞にも出走した例は13頭(2002年ノーリーズン落馬含む)。うち菊花賞も制しての二冠はエアシャカールとゴールドシップの2頭。続いてダービー馬が菊花賞にも出走した例は8頭と減少。ダービーと菊花賞の二冠馬はゼロだ。菊花賞を含まない皐月賞とダービーの二冠馬はネオユニヴァース、メイショウサムソン、ドゥラメンテの3例があった。ドゥラメンテについては骨折で出走が叶わなかったことも補足しておく。
多少ありきたりな結果ではあるが、行きつく結論としては三冠馬の存在。ディープインパクト、オルフェーヴル、コントレイルは当然ながらクラシック三冠をすべて優勝している。
同世代は能力が突出している馬であれば、菊花賞の舞台である淀の3000mを問題なくこなしている。そういう意味では、「最も強い馬が勝つ」菊花賞の看板も、まだまだ健在といえるだろう。
また、菊花賞馬が春の天皇賞と密接な繋がりを持っていることにも評価が必要だ。今年の勝ち馬ワールドプレミアを含めた直近11年で、フェノーメノを除いた馬は、菊花賞への出走経験または優勝馬であるという条件をクリアしていた。
菊花賞を勝つということは、ゴールドシップやキタサンブラック、フィエールマンでもわかるように、古馬となった翌年以降の天皇賞で活躍を期待できるということにもなる。
皐月賞馬、ダービー馬が不在といっても、それほどレアケースといえなくなった近年。今年の菊花賞出走馬の中に、来年の競馬界を引っ張る存在が潜んでいるかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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