JRA「絶好調」矢作芳人厩舎は買い辛い!? 弟子の活躍やブリーダーズC制覇で勢いに乗る世界の名門が、馬券的に悩ましいワケとは
21日の東京3Rで、左肩の手術から先月9日に復帰した古川奈穂騎手(栗東、矢作芳人厩舎所属)が復帰後初勝利を挙げた。4月17日以来となる自身通算7勝目、また東京競馬場初騎乗となったレースでいきなりの初勝利と、陣営の期待に見事に応えた。
古川騎手は今年デビューの21歳。医師の家庭に生まれ、競馬サークルとは無縁の環境で育ったが、ゴールドシップが優勝した2012年の有馬記念をテレビで観てから競馬に興味を持った。藤田菜七子騎手の活躍にも刺激を受け、進学校に進みながらも中退して騎手を目指すことを選択。そんな当時の古川騎手の強い意志が買われて名門矢作厩舎へ弟子入りした経歴を持つ。
デビュー後は厩舎の後押しもあって順調に勝ち星を伸ばしていたが、肩の怪我のため4月から療養し、先月に復帰を果たしていた。実戦では初めての競馬場で、ポケットからのスタート後すぐに2コーナーがある東京・芝1800m。騎手の腕も問われるコースで見事に結果を残し、陣営の期待に応えた形だ。
そんな古川騎手が所属する矢作厩舎といえば、この秋は管理馬2頭での米ブリーダーズC制覇や先々週のパンサラッサの福島記念(G3)制覇、そしてもう一人の弟子である坂井瑠星騎手も管理馬で京王杯2歳S(G2)制覇と絶好調だ。
3冠馬コントレイルや海外G1・2勝のラヴズオンリーユーを育てるなどの馬作りの実力もさることながら、近年は弟子をとることに消極的な風潮がある中でも馬主に頭を下げ、積極的に有力馬に弟子を騎乗させ結果を残すなど、人材育成の手腕も高く評価されており、今や押しも押されもせぬトップトレーナーである。
しかし一方で、その評価を馬券検討にそのまま結び付けて良いものかと頭を悩ませる競馬ファンも多い。
今年のリーディングで矢作厩舎は全国2位(11月21日現在)の46勝を挙げ、重賞などの大きなレースでの勝負強さも目立つ。だが意外にも馬券に直結する勝率、連対率、3着内率では上位厩舎の中ではかなり低い水準なのだ。各項目の全国順位を見ていくと、勝率は31位、連対率は30位、3着内率も32位と、他のリーディング上位厩舎とは大きく乖離していることがわかる。
管理馬の出走回数自体が他厩舎と比べて多く、それによって勝ち星が伸びているとも言える。その為、着外の数も上位10厩舎の平均126回に比べて矢作厩舎は243回と2倍近い数となっており、安易に「リーディング上位の厩舎だから買い」とはいかない、馬券を買う側にとっては実に悩ましい厩舎なのだ。
ただ、競馬がファンに向けた娯楽であると同時に、馬主とのビジネスでもある以上、管理馬を多く出走させる事も大事な仕事であり、それもまた厩舎の実力であることは忘れてはならないだろう。
矢作厩舎のここ一番のレース選択の妙や、馬を仕上げる腕は確かなだけに、馬券を買うファンとすれば、陣営にとっての勝負レースはどこなのかを見極める目が必要になりそうだ。
(文=椎名佳祐)
<著者プロフィール>
ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。
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