チャンピオンズC(G1)JRAの「手のひら返し」にソダシが大ピンチ、ダートは問題なしの「先入観」が命取りの決定打?
5日、中京競馬場ではダートの頂上決戦・チャンピオンズC(G1)が開催される。昨年の覇者チュウワウィザードの出走はあれども、それから4戦して1年未勝利。6月の帝王賞(G1)を制したテーオーケインズや、上がり馬サンライズホープの参戦はあれども、それほど華のある馬は揃わないことが濃厚だった。
そんな今年のチャンピオンズCが、これほどまでに大きな注目を集めることとなったのは、白毛馬ソダシ(牝3、栗東・須貝尚介厩舎)が参戦を表明したからだ。デビューから無傷の5連勝で桜の女王に輝いたアイドルホースの初ダート挑戦は、レースを大いに盛り上げてくれるに違いない。
しかし、この挑戦は必ずしもファンや陣営の期待通りの結果とならない可能性も考えられる。
勿論、血統的な背景からソダシのダート適性を疑う声が少ないことも確かだ。管理する須貝師は「ダートは合っている」、主戦の吉田隼人騎手も「一度使ってみたかった」と陣営も前向きなコメント。1800mという距離も、54キロの斤量で走れることも好材料という訳だ。
そもそも祖母シラユキヒメから続く牝系はダート血統といっていい。母ブチコもダートで活躍しただけでなく、ダート交流重賞で3勝したユキチャン、19年のレパードS馬ハヤヤッコ、ダートで3連勝中のダノンハーロックなど、ダートを得意とする近親も多い。
さらにソダシの父であるクロフネが、現役時代に芝のNHKマイルC(G1)、ジャパンCダート(G1・チャンピオンズCの前身)を7馬身差で圧勝したことも考えると、娘のソダシにも二刀流でのG1制覇を望む声が出たのは当然といえる。
一方で、誰もがそう信じて疑わないことこそが、かえって危うさを生むと考えられないだろうか。
デビュー前のソダシの走りを見た須貝師は、血統的にダートが合うであろう馬を芝のレースに使う柔軟さを見せた。そして、ソダシも陣営の期待を大幅に上回り、札幌2歳S(G3)や桜花賞(G1)でスピード負けをするどころか、レコード勝ちをするほどの大活躍をして予想を「いい意味」で裏切った。
言ってしまえば、これらは陣営からすれば「嬉しい誤算」なのだ。
だが、見方によっては、実はダートよりも芝でこその馬だった可能性も捨て切れない。
ただでさえ、そういった危惧が発生しているところに、向かい風となりそうなのが1枠1番という枠順である。ダートを走り慣れた馬なら大きな割引にならないものの、ソダシはこれが初ダート。外枠ならリラックスして走れたかもしれないが、最内ではそうはいかない。
思い切って逃げの手にでも出なければ、前の馬の蹴り上げた砂を被ることにもなり、外からプレッシャーを受け続ける展開を避けられない。春に惨敗したオークス(G1)は、2400mの距離よりも、川田将雅騎手のステラリアから徹底的なマークを受けたことが、大きな敗因ともいわれているだけに、とても歓迎できるものではないはずだ。
「札幌記念(G2)で芝2000mを克服したこともあって、秋華賞(G1)で単勝1.9倍の断然人気に支持されましたが10着に敗れました。レース前に吉田隼騎手の言うことを全く聞かなくなるシーンもあったように、気性的な難しさも少々表に出始めています。
母のブチコが現役時代にゲートをくぐったり、激突したりで流血した“お転婆”でしたし、秋華賞のソダシもゲートにぶつかった歯茎から流血するなど、血は争えないところも垣間見えます」(競馬記者)
こういった経緯も加味すれば、歴戦の古馬が集まるダートG1でソダシが“お上品”なレースをできるのかという疑問が残る。
共に引退レースで有終の美を飾ったグランアレグリアはマイルCS(G1)で6枠12番、コントレイルは1枠2番と、あたかもレース前からシナリオが書かれていたかのような絶好枠を割り当てられた。
ところが、むしろ外枠が望ましかったソダシには、歓迎できない最内枠。偶然とはいえ、JRAが手のひらを返したかのような厳しい枠に決まったことも大ピンチである。
もしダートも難なくこなしてしまうようなら、それこそとんでもない怪物が誕生する瞬間を我々は目にするのかもしれない。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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