JRA有馬記念(G1)ステラヴェローチェの「確執」はむしろ大歓迎!? 武豊が「空気を読めない」と評した男の不気味な存在感
26日に中山競馬場で行われる有馬記念(G1)は、今年1年の総決算ともいえる年末の風物詩。28日に2歳G1のホープフルSが控えているとはいえ、世代を問わない現役トップクラスの馬たちが激突するドリームレースである。数あるJRA・G1でも売上げは、他のレースを凌駕するほどの大人気だ。
芸能人をはじめ、著名人の予想がTVや新聞などのメディアで披露されることも多く、普段は競馬にそれほど関心を持っていない層からの注目も集まる。
そして、有馬記念のひとつの特徴として、この舞台を最後に引退した馬が、感動的なラストランでファンを虜にしてきた歴史もある。
古くは若き天才・武豊騎手が、終わったといわれていたオグリキャップを勝利へと導いた1990年や前年の惨敗から不死鳥の如く1年ぶりで制したトウカイテイオーの93年の復活劇は、特に印象的な有終の美だった。
その他にもシンボリクリスエス、ディープインパクト、ダイワスカーレットなどの名馬たち。近年でもオルフェーヴル、ジェンティルドンナ、キタサンブラック、リスグラシューも引退の花道を飾っている。
そして、今年の有馬記念に出走を予定しているクロノジェネシス(牝5、栗東・斉藤崇史厩舎)もまた、これが現役生活最後の舞台。2年連続宝塚記念(G1)を制した名牝が、昨年に続く有馬記念連覇で史上初のグランプリ4連覇の偉業に挑戦する。
戦前の下馬評では、これまでの実績的にも抜けた存在であるクロノジェネシスとエフフォーリアの2頭に人気が集中しそうな雰囲気で、おそらく馬連でも2頭の組み合わせが1番人気濃厚だろう。
本命党にとっては頼もしい2頭だが、穴党としては少しでも配当のつく馬を狙いたいのが本音。そこで一発の期待ができそうなステラヴェローチェ(牡3、栗東・須貝尚介厩舎)は、非常に魅力的な1頭である。
横山典弘騎手が騎乗し、2着に敗れた昨年の朝日杯FS(G1)で2番人気に推されていたように、早くから能力の高さに定評のあった実力馬。鞍上を吉田隼人騎手にチェンジしたクラシック三冠も、G1タイトルには手が届かなかった。
そして、惜敗続きの現状を打破するために陣営が選択した相手は、M.デムーロ騎手だった。功労者2人を切り捨てる格好での乗り替わりについては、陣営とそれぞれの間に何かしらの確執があったのではないかという噂も一部のファンから囁かれている。
だが、ステラヴェローチェがこのまま「善戦マン」で終わらないためには、今回の乗り替わりも非情に見えて効果的だったという見方も可能だ。何しろM.デムーロ騎手の大舞台での勝負強さは現役トップクラス。あと一歩の壁を越えたいステラヴェローチェのカンフル剤となりそうだ。
今でこそ馬質で優るC.ルメール騎手に逆転を許したが、かつてのM.デムーロ騎手は、まさにG1ハンターともいえる大活躍だった。全盛期に比して勢いに翳りは見えるものの、JRA・G1通算34勝は武豊、ルメールに次いで現役騎手3位。今年もオークス(G1)をユーバーレーベン、阪神JF(G1)をサークルオブライフで制したように、ここ一番での好騎乗は健在である。
有馬記念においても10年にはヴィクトワールピサとのコンビで、大本命のブエナビスタを撃破したM.デムーロ騎手。クロノジェネシスの活躍でスポットライトを浴びた父バゴだが、これにはステラヴェローチェの存在も当然含まれてのもの。
“悲願”だった朝日杯FSをドウデュースで制した武豊騎手にしても、大本命エアスピネルとのコンビで目前まで迫った勝利を攫われた相手は、リオンディーズに騎乗していたM.デムーロ騎手だった。この時の敗戦を年末のイベントで武豊騎手が「空気を読めないイタリア人がいたもんで……」と振り返ったことは話題を集めた。
この秋のG1は、マイルCSのグランアレグリア、ジャパンCのコントレイル、香港Cのラヴズオンリーユーなど、ラストランの馬が有終の美を飾るレースが続いているものの、そんなときだからこそ空気を読まないG1ハンターの手腕は不気味だ。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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