JRA「格差11倍」で風前の灯火……テーオーケインズ、チュウワウィザードも興味なし、G2降格も他人事ではないフェブラリーS(G1)の危機的状況
20日、東京競馬場で行われるダートのマイルG1・フェブラリーSは、今年最初の古馬G1。冬に行われるチャンピオンズC(G1)と双璧を成すダート王決定戦には、これまでトップクラスの馬が多数参戦していた。
しかし、2020年にサウジC(G1)が創設された影響で、メンバーレベルの低下を懸念する声もチラホラ出始めた。
開催初年には、日本調教馬からゴールドドリーム(6着)、クリソベリル(7着)が出走。昨年挑戦して9着に敗れたチュウワウィザードは今年も参戦予定で、チャンピオンズCを6馬身差で圧勝したテーオーケインズも、フェブラリーSは登録のみに留まった。
元々芝が主流とされる日本競馬では、ダートのレースは少々華やかさで見劣ることは確か。
だが、G1であるにもかかわらず、フェブラリーSが有力馬の陣営から嫌われる背景には、レースそのものの魅力や、JRAのレース体系とも少なからず関係がありそうだ。
まず、厳寒期にあたる2月半ばの時期に開催されることも、盛り上がりに欠ける原因といえるだろう。中央競馬のダートG1は、2月のフェブラリーSと12月のチャンピオンズCの2つのみだが、両レースの間隔は約2か月半と短い。
宝塚記念と有馬記念が上半期、下半期を代表する芝G1として機能していることに対し、ダートの場合は中途半端なタイミングにも映る。勿論、中央以外にも地方で交流G1の開催もあるため、レースの選択肢は他にも存在しているが、芝スタートの東京ダート1600mという舞台設定も、相応しくないのではないかという声もある。
短距離馬と中距離馬の激突が見られるという点では、そういった楽しみはあれど、“帯に短し襷に長し”の印象は拭えない。
そして、やはり決定打となったのは、先述したサウジCの登場だ。世界最高賞金ともいわれるこのレースの1着賞金は、なんと1000万米ドル。日本円に換算すると約11億円という破格の存在だ。
対するフェブラリーSの1着賞金は、11倍もの差があった昨年の1億円から1億2000万円に増額されたものの、ライバルとの格差は歴然。金額の比較でいえば、サウジCの5着相当なのだから、関係者にとってサウジCに魅力を感じるのも当然かもしれない。
では、どうすれば現在の危機的状況の打破に繋がるのか。
これはあくまで個人の考えに過ぎないが、いっそのことG2に降格してでも、開催時期をずらした状態で中距離戦にしてみるのはどうだろう。東京ならかつてのジャパンCダート(G1)のような2100mにしてもいいし、阪神ダート1800mも選択肢として悪くない。名称についてもフェブラリーSである必要もないはずだ。
先日もニュージーランドT(G2)が、格付基準を2年連続して満たさなかったため、日本グレード格付管理委員会による審査の結果、格付けに対する警告があったばかり。
こちらについては、近3年のレースレーティングは、G1の基準とされる115を下回っているフェブラリーSも決して他人事ではない。このままだと、ダート最高峰G1の肩書も、もはや風前の灯火ともいえる。
「ダートは芝の2軍じゃない」といった芝より格下扱いに反発する声は根強いが、現実に危機的状況となりつつあることは、覚えておきたい。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
PICK UP
Ranking
17:30更新- ルメール軍団「誤算続き」で迷走中?使い分けの弊害に一部ファンから疑問の声
- クロワデュノール「世代最強説」に現実味も…ダービー馬候補が未勝利戦より遅い時計の怪
- 武豊×ドウデュース完全包囲網で波乱含み!?豪華メンバーのジャパンCにチェルヴィニア、ブローザホーン、オーギュストロダンら最強メンバー集結。レジェンド元JRA騎手の見解は?
- 「別競技」の高速馬場で欧州最強マイラーの意地見せたチャリン!ジャパンC参戦オーギュストロダン、ゴリアットに朗報?
- C.ルメール「アンラッキー」な過怠金に謝罪…マイルCSでも「牝馬のC.デムーロ」の手綱冴えるか?
- エアスピネル降板に武豊騎手は「何」を思う……8年前、すべてを手にしてきた天才騎手が”最大級”の屈辱を味わった「ウオッカ事件」とは
- 【京都2歳S(G3)展望】藤田晋オーナーの大物エリキングが登場! ジョバンニ、サラコスティがリベンジに燃える
- 【ジャパンC(G1)展望】「ディープ」オーギュストロダンVS「ハーツ」ドウデュース、2005年有馬記念から19年越しの最終決戦!
- 春のG1戦線に水を差す「醜聞」続く…現役騎手の父に詐欺容疑、G1馬オーナーが逮捕
- 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
関連記事
JRA福永祐一が漏らした「後出し」とマスコミの暗黙のルール。「2年連続10万馬券」フェブラリーS攻略のキーポイントとは
JRA【フェブラリーS(G1)展望】「純白の女王」ソダシ参戦も全幅の信頼は微妙!? 連覇狙うカフェファラオは福永祐一との相性がどうか
JRA武豊でも越えられなかったフェブラリーS(G1)25年間の「ジンクス」、沈黙を破るのは偶然「ルメール確保」の不気味な重賞連勝馬
JRA 池添謙一「痛恨」騎乗停止も問題なし!? フェブラリーS(G1)目前に旅立ったタイムパラドックスに捧げる「復活」シナリオ
JRAソダシ「SOS」のサインを元天才ジョッキーが指摘、フェブラリーS(G1)でアイドル復活に必要なカギとは