JRA横山典弘「鮮やか」ポツン炸裂に絶賛の嵐! 絶望的最後方からの大外一気、前走3.2秒差の懸隔に見せた「天才」の証明
これぞ、まさに「天才」のなせる業だろうか。
30日、阪神競馬場で行われた8R・4歳以上2勝クラスは、4番人気のメイショウマンサク(牝4歳、栗東・石橋守厩舎)が勝利。伸び盛りの4歳牝馬が、1勝クラスからの昇級初戦で連勝を決めた。
16頭立てのダート1400mのレース。スタートしばらくして、メイショウマンサクの位置取りを確認した際は、誰もが「またやったか……」と頭を抱えたかもしれない。集団から大きく1頭だけ取り残された、横山典弘騎手の代名詞「ポツン」である。
前日の雨の影響が残り、重馬場のまま迎えたこの日の阪神ダート。5Rでは5番人気の伏兵が逃げ切り勝ち。7Rでも4コーナー先頭と3番手の馬がワンツーゴール。脚抜きの良い馬場は、明らかに先行有利を示唆していた。
あまりにも後方に遅れていたため集団が3、4コーナーを回る頃には、中継画面にさえ映らなくなったメイショウマンサク。まるで勝負を捨てたかのような競馬だったが、本当の見せ場は最後の直線に待っていた。
横山典弘にしてかできない、あまりに鮮やかな勝利
最後の直線に入っても、まだ前の馬から2馬身以上後ろにいたメイショウマンサク。だが、横山典騎手のムチが入ると、そこから自慢の末脚が爆発した。大外から一気にライバルたちを飲み込むと、残り50mになったところで猛然と先頭集団に襲い掛かる。最後は同じように後方から伸びてきたスズカクローカスを交わし切り、先頭まで突き抜けた。
「すごい競馬でしたね。なんというか『これぞ横山典弘』といったところでしょうか。1番人気のニューフロンティアが絡まれるハイペースでしたが、普通あそこまで腹を括った騎乗はできませんよ。2着スズカクローカスの長岡禎仁騎手も見事な追い込みでしたが、まさかさらに後ろから差されるとは思ってなかったでしょうね。
この日の阪神のダートは先行有利の状態でしたが、それは他のジョッキーも織り込み済み。先行争いの激化を読み切った横山典騎手のファインプレーだったと思います」(競馬記者)
まさに天才的な騎乗という他ないが、記者曰く「決して偶然ではない」というから驚きだ。
「メイショウマンサクと横山典騎手はずっと追い込みの競馬を続けていましたが、前走は中団から早めの競馬に切り替えて快勝。2着続きに終止符をうっています。この時も同じ阪神のダート1400mでしたが、最初の800mが49.3秒というスローペース。横山典騎手のペースを見越しての早めスパートが勝因でした。
ですが、今回は800m通過が46.1秒という真逆のハイペース。普通なら結果が出た前走と同じ競馬をしたくなりますが、もし前回同様の競馬をしていれば勝つのは難しかったでしょうね。その辺りが横山典騎手が『天才』と呼ばれる所以ではないでしょうか。お見事でした」(同)
この結果には、レースを見守ったネット上の競馬ファンもSNSや掲示板を通じて「『またやらかした』と思ったけど、天才か!」「えぐい」「絶対負けたと思って途中から見てなかったら……」「これがポツンか!初めて見たけど、すげー」「もう笑うしかない」など、横山典騎手の騎乗を絶賛する声が相次いだ。
「今の感じでこれだけやれるのだから、能力は高いね。大事に育てていけば、いい馬になりそうだよ」
レース後、何事もなかったようにそうコメントした横山典騎手。いや、あれだけの“神業”も、いつも通り「オレにとっては普通のこと」なのだろう。この勝利が4月初勝利と苦戦が続いていた大ベテランだが、その存在感はやはり別格だ。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。
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