JRAラッキーライラック全弟「見せ場なし」の惨敗デビュー…期待の良血が来春へ向けて厳しすぎる船出も、わずかに覗かせた「能力の片鱗」
10日、小倉競馬場で行われた5Rの2歳新馬は、1番人気のラヴェルが後方外目から差し切る強い競馬で優勝。今年の桜花賞(G1)で1番人気に推されたナミュールの妹が、来春の牝馬クラシック戦線へ名乗りを上げた。
騎乗した岩田望来騎手はレース後、「いい競馬をしてくれた。抜け出す脚も速かったし、まだ余力もありました」と同馬の素質を高く評価。今後は管理する矢作芳人厩舎がどのようなレース選びをするかにも注目したい。
一方で、まさかの9着に敗れたのが3番人気のシリンガバルガリス(牡2歳、栗東・松永幹夫厩舎)と松山弘平騎手のコンビだ。
オルフェーヴル産駒の同馬は、エリザベス女王杯(G1)を連覇するなどG1・4勝を挙げた名牝ラッキーライラックの全弟。一口馬主クラブのサンデーレーシングにおいて総額7000万円(175万円×40口)で募集された期待の良血馬である。
6月上旬に栗東へ入厩してからは順調に追い切りを消化。管理する松永幹師は「跳びの大きな走りや雰囲気などは姉と似ている。どんな競馬をしてくれるか楽しみ」と期待のコメントを残していたことから、その走りに大いに注目が集まっていた。
「見せ場なし」の惨敗デビュー…
芝1800mに12頭が顔を揃えた一戦。シリンガバルガリスは4枠4番からモッサリとしたスタートを切って2馬身ほど立ち遅れると、行き脚もまったく付かず、すぐに最後方まで下がることに。
1コーナー手前で早くも馬群から引き離されると、向正面でも1頭ポツンと大きく離れたシンガリを追走する。鞍上の松山騎手が必死になって手綱を扱いているのだが、馬がなかなか前へ進んで行こうとしないようだ。
3、4コーナー中間で左ステッキが入るとようやく目が覚めたのか、前との差を徐々に詰め始める。最終コーナーをロスなく回って馬群には追いついたものの、最後の直線では3頭を交わすのが精一杯だった。
「非常に厳しい船出となってしまいました。父オルフェーヴルの気性的な難しさが顕著に表れてしまった印象です。デビュー前から大いに注目を集めた血統馬でしたが、これは時間がかかってしまうかもしれません」(競馬誌ライター)
1頭だけ、ほとんど競馬に参加できなかったような内容には、SNSやネットの掲示板などにも「1000m通過62秒台を追走できないとは」「馬がレースを全然理解してない」「1勝すら厳しそう」など、厳しいコメントが多く寄せられている。
来春へ向けて、いきなり大きな躓きを見せてしまったシリンガバルガリス。だが、まったく見せ場がなかったというわけでもない。
シリンガバルガリスは上がり3ハロン34秒6をマークしており、これは1、2着馬に次いでメンバー中3位の数字だ。3着だったシルヴァーデュークのそれを0秒2上回っている。
さらに、最後の直線に入ると前の馬がヨレてきて壁になる不利も受けている。ゴール前でも他馬に前へ入られており、スムーズに追えていればもう少し上の着順に来られたかもしれない。
「今回は先行した馬たちのペースが落ちることない、いわゆる瞬発力勝負の展開でもありました。それを大きく離れたシンガリから9着まで追い上げているだけに、一応は能力の片鱗を見せたのではないでしょうか。
血統的にもポテンシャルを秘めていることは間違いないと思われるだけに、これからは精神面や気性的な部分をどう克服して、レースを理解していくかがカギとなってくるでしょうね」(同)
今回は残念な結果に終わったシリンガバルガリスだが、まだ2歳7月の時期であり、来春まで時間は十分に残されている。果たして次戦以降で変わり身を見せることはできるだろうか。
(文=冨樫某)
<著者プロフィール>
キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。
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