「第二のコスモバルク」登場の期待!? 地方所属馬が札幌で立て続けの下剋上
新たな“地方の星”がターフを席巻する日が来るかもしれない……。
4日、札幌競馬場で行われた9Rのすずらん賞(OP)ではコスモイグローク(牡2歳、北海道・田中淳司厩舎)が勝利。同レースは特別指定競走として地方所属馬の出走が認められているが、地方馬が勝利を挙げるのは実に5年ぶりのことであった。
今年の出走メンバーは、函館2歳S(G3)で1番人気に支持されたスプレモフレイバー、同レースで5着と好走したミスヨコハマといった面々が人気の中心に。一方のコスモイグロークは道営所属かつ勝利は当地での新馬戦のみという目立たない戦績。当然ながら芝のレースも今回が初めてであり、戦前の評価は8番人気と低かった。
スタート後は鞍上の丹内祐次騎手が大きく手綱を扱きながらも行き脚がつかず、後方3番手に置いて行かれる形。しかし3角付近から徐々に前との差を詰めていくと、4角では内から数えて9頭目の大外を回りながら先頭集団に並びかける。直線でも勢いはそのままに脚を伸ばし、内に構えた面々を見事に差し切り波乱を演出してみせた。
もちろん今回のコスモイグロークの勝利は、開催が進み馬場の内が荒れていたことによる外差し有利の馬場の助けもあったはず。だがそれを差し引いても、大きく外を回るロスを強いられながら中央勢を撃破した戦いぶりは今後の活躍に期待を抱かせる内容であった。
地方所属ながらに中央競馬で活躍した名馬コスモバルク
思い返せば過去にも「コスモ」の冠名を背負い、地方所属ながらに中央競馬で活躍した名馬が存在した。それこそがコスモバルクである。
コスモバルクは道営競馬で4戦2勝の成績を収めると、中央初挑戦となった百日草特別(現1勝クラス)を快勝。続いて挑んだラジオたんぱ杯2歳S(G3)で重賞初制覇を成し遂げ、翌年には皐月賞(G1)、ジャパンC(G1)といったビッグレースでそれぞれ2着に好走した。その後も国内はもちろん海外のG1レースでも活躍し、5歳時にはシンガポール航空IC(G1)にて地方所属馬初となる海外G1制覇も達成している。
地方所属の身で中央へ参戦し、結果を残す馬は度々いるが、そうした面々は後々中央に転入するケースが一般的だ。キャリアの中で一貫して地方所属であり続けながら、ターフで中央のトップクラスを相手にG1を戦い続けた馬はコスモバルク以外に例が無い。まさに“地方の星”と呼ぶに相応しい名馬であった。
今年のすずらん賞を制したコスモイグロークはコスモバルクと同様に、ビッグレットファームグループが運営する『コスモオーナーズ』による所有馬である。道営競馬の所属である点も共通であり、まさに2頭は同門といえる関係性だ。
コスモイグロークは地元・門別では新馬戦の後は結果を残せていなかったが、今回は中央の芝への参戦で一変して大金星を挙げて見せた。父ジョーカプチーノ、母父キングヘイローという血統構成を踏まえてもダート以上に芝への適性の高さが伺えるだけに、今後も芝のレースを中心に転戦していくのではないだろうか。
こうなると中央への転厩も視野に入ってくると思われるが、『コスモオーナーズ』は複数の馬主によって競走馬を共同保有するという形態をとっている。コスモイグロークは地方所属馬としてオーナーの募集がかけられており、所有権を持つオーナーの全員が中央の馬主資格を持っているとは限らない。
もちろん保有権の譲渡などにより事情が変わる可能性はあるが、現状では中央への転厩は難しい。こうした点を踏まえればコスモイグロークもコスモバルク同様に、今後は地方所属馬として中央の芝のレースを転戦していくと考えられる。
すずらん賞の勝利に際して管理する田中師は「地方から挑戦して結果を出せば盛り上がりますし、これからも頑張ります」とコメントを残している。こうした言葉も、引き続き地方所属として戦っていくことを見据えてのものだろう。
実は田中師は8月21日に行われたクローバー賞(OP)でも管理するジョリダムで勝利を挙げており、地方の調教師が同一年に複数の馬で中央のレースを勝利するのは17年ぶりの快挙であった。
札幌で起きた立て続けの地方所属馬による「下剋上」。果たして2頭の若駒は第二のコスモバルクとして地方から中央へ、そして世界に名を轟かせる大物へと成長を遂げるのか。中でも同じ「コスモ」の冠名を背負って戦うコスモイグロークの今後には注目していきたい。
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