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武豊、C.ルメールより頼れる天才の挑戦が本格始動!? 凱旋門賞「雨」恨み節に違和感

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タイトルホルダー 撮影:Ruriko.I

 タイトルホルダー11着、ステイフーリッシュ14着、 ディープボンド18着、そしてドウデュース19着。日本競馬の凱旋門賞(仏G1)挑戦に、また新たな1ページが書き加えられた。

 それは死屍累々といえる「惨敗」の歴史だ。

 1969年のスピードシンボリから53年、日本競馬の凱旋門賞へのチェレンジ精神はまだ衰えていない。いや、今年4頭が挑戦したのは史上最多であることからも、さらに熱く燃え上がっているともいえる。

 しかし、結果は無残そのものだった。特に今年の天皇賞・春(G1)と宝塚記念(G1)を勝ったタイトルホルダーは現在の日本最強馬であり、日本ダービー(G1)馬ドウデュースも世代を代表するに相応しい実力馬。それらが大敗してしまった事実は、競馬を愛する日本のホースマンに少なからぬショックを与えたはずだ。

「雨がたくさん降ったので、馬場がもっと悪くなった」(C.ルメール騎手・ステイフーリッシュ)

「当日、直前に降った雨の影響がどうしても大きく感じるレース内容でした」(川田将雅騎手・ディープボンド)

「あれだけ走れないとはね。あそこまでは想像していなかった」(武豊騎手・ドウデュース)

 レース後、各ジョッキーたちがそう口をそろえたように、今回はレースの約15分前に突然雨が降り、結果的にはそれが惨敗の大きな原因になった。日本とフランスの馬場・タイム差を考慮すれば、少しでも良い馬場でレースを迎えたかったのは、各陣営の共通した願いだっただけに「運が悪かった」「天に見放された」としか言いようのないアクシデントだった。

凱旋門賞「雨」恨み節に違和感…

 しかし、本当に「不運」だけで片付けて良いのだろうか。

 何故なら、凱旋門賞がパリロンシャン競馬場で開催されるようになって今年で5年目になるが、日本の各陣営が望む良馬場で行われたのは、わずか1度しかないからだ。それも残り4回はすべて重・不良で開催されている。

 つまり凱旋門賞は「重」「不良」で開催されることが“当たり前”。良馬場を願うのではなく、むしろ雨を願うことこそが、凱旋門賞に挑む正しいスタンスといえるのではないだろうか。

「単に力負けだと思います。日本馬全部が」

 日本競馬にとって目を覆いたくなるような凱旋門賞の後、多くの日本人関係者が天候や馬場に恨み節をぶつける中、「この馬場は分かっていること」とバッサリと切り捨てたのが、ステイフーリッシュを出走させた矢作芳人調教師だった。

 昨年、米国競馬の祭典ブリーダーズCのフィリー&メアターフ(ラヴズオンリーユー)、ディスタフ(マルシュロレーヌ)を制し、日本競馬史上初の快挙を成し遂げた矢作調教師。まさに「世界の矢作」と呼ばれる存在だが、意外にも凱旋門賞は初挑戦だった。

 そんな矢作調教師の凱旋門賞挑戦は、当初から日本の他の競馬関係者とは一線を画すものがあった。

 今回のタイトルホルダー然り、過去のオルフェーヴル、ディープインパクトなど、凱旋門賞挑戦の歴史には当時の現役最強馬の名が数多く連なっている。世界の強豪が集う最高峰の舞台で戦うのだから、少なくとも日本で最強であることが前提条件と考えるのはある意味自然だ。

 2010年以降になって、ようやく斤量面でアドバンテージのある3歳馬の出走も増えてきたが、それも今年のドウデュースを始め、マカヒキ、キズナ、ヴィクトワールピサなど、いずれも春のクラシックを制した世代トップホースだった。

 そんな中、矢作調教師が凱旋門賞前に『サンケイスポーツ』で連載するコラム『信は力なり』で、自身が送り出すステイフーリッシュについて「今回遠征している日本馬4頭が日本の馬場で競馬をすれば、おそらく4着だろう」と“最弱”であることを認めている。

 それでも期待を込めて挑戦を決めたのは、ステイフーリッシュが過去最高の2着に好走した3頭の内、オルフェーヴル・ナカヤマフェスタと同じステイゴールド産駒であること(もう1頭はキングマンボ産駒のエルコンドルパサー)。

 そして、「フランスの競馬に合わせていては勝てない。日本馬が勝つには逃げ切り」と独自の見解を語り、この春に中東で逃げて結果を残した本馬がその条件に該当したからだ。

 結果は14着と散々なものだったが、矢作調教師はどちらかと言えば「アプローチの角度」に問題があったと受け止めているように思えた。レース後には、ショッキングな敗戦直後にもかかわらず「それ(凱旋門賞の重馬場)に対応出来るような四輪駆動の馬、力があって、スピードがあって」と、早くも“二の矢”に向けて具体的な案が出ていることには頼もしさすら感じた。

 前述した『信は力なり』に「調教師試験合格発表時の記者会見で『目標とするレースは凱旋門賞』と語ったのは私が初めてだったと思う」と綴られている通り、矢作調教師の凱旋門賞に対する思いは、今回の挑戦から始まったわけではない。むしろ昨年、米国競馬の頂点となるブリーダーズCを制し、満を持しての欧州競馬の頂点・凱旋門賞挑戦だろう。

「私がヨーロッパで馬を買う、一つの大きなファクターはやはり凱旋門賞を獲りたいからです」

 この日、矢作調教師は英国のタタソールズ・オクトーバー・イヤリングセールでドバウィ産駒を落札している。日本競馬が誇る天才調教師が、いよいよ凱旋門賞制覇へ本腰を入れ始めた。数年後の凱旋門賞では「雨が降らずに良馬場だったことが計算外」という“矢作節”を聞けるかもしれない。

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