「絶好調で完敗」「まるで空気の存在感」…武豊とキタサンブラック制覇から5年、改めて問われる大阪杯G1昇格の意義

9日、秋競馬のたけなわを告げる毎日王冠(G2)は、1番人気のサリオス(牡5歳、美浦・堀宣行厩舎)が一昨年の同レース以来となる2年ぶりの勝利。コントレイル世代のNo.2と言われた強豪が、華麗な復活劇を飾った。
出走10頭中G1馬4頭が集った今年の毎日王冠。勝ったサリオスはもちろん、外枠発走の不利を跳ね返して3着に粘り込んだダノンザキッドも、秋のG1戦線へ復活の確かな足掛かりをつかんでいる。
厳しい現状が浮き彫りとなった2頭のG1馬
だが、両馬がG1ホースの貫録を示した一方、厳しい現状が浮き彫りとなったのが、残り2頭のG1馬レイパパレとポタジェだ。
4着と一応の格好をつけたレイパパレだが、接戦となった1、2、3着争いからは1馬身遅れた完敗。ただ、1000m通過57.9秒というレコードが出るほどの厳しいペースを2番手で追走しただけに、最後までよく粘ったとみるべきだろう。
しかし、主戦の川田将雅騎手が「昨年の大阪杯(1着)の次に状態は良かった」とコメントした中での敗戦は、本馬の厳しい現状を物語っていると言わざるを得ない。
「最後までしっかり走り切って、速い時計の中でも精一杯の走りをしてくれた」と相棒を称えたが、愛情に溢れた言葉だからこそ、どこか哀愁を感じたのは筆者だけだろうか。
次走はまだ正式に発表されていないが、昨年挑んだエリザベス女王杯(G1)には今週末の秋華賞(G1)に挑むアートハウス、マイルCS(G1)には今春のNHKマイルC(G1)を勝ったダノンスコーピオンと、川田騎手は次代を担う有力3歳馬で挑むことが濃厚だ。
そうなるとレイパパレは天皇賞・秋(G1)に進む可能性が高いが、出走予定メンバーは毎日王冠より一枚も二枚も厳しくなる。G1・2勝目へ、主戦騎手の言葉からも状態が良かっただけに、せめて前哨戦は勝ち負けしたかったはずだ。

そして、そんなレイパパレ以上に厳しい状況にあるのが、6着に敗れたポタジェだ。
最後の直線では前が狭くなる不利があったものの、手応え的には仮にスムーズでも上位をうかがえたかは疑問だ。吉田隼人騎手が「(唯一の)58キロだったし、着差ほど負けてはいない」と相棒を庇ったが、見せ場を作ることさえできなかった。
毎日王冠で他馬よりも斤量が2キロ重くなるのは、直近1年以内にG1を制した馬だけ。つまり、出走4頭のG1馬の中で、直近1年以内にG1勝利があるのは春の大阪杯(G1)を制したポタジェだけであり、逆に言えば4頭の中で「最も勢いのある馬」とも言えたはずだ。
しかし、実際はサリオスが1番人気、レイパパレが2番人気、ダノンザキッドが4番人気に推された一方で、ポタジェは10頭中7番人気と、とても春にG1を勝った馬とは思えない存在感だった。ファンにあまり期待されていなかっただけでなく、着順も6着なのだから、その評価も正しかったと言わざるを得ない。
レース後、吉田隼騎手が「東京のワンターンはメンバーが強い。4コーナーの手応えが物足りなかったので、違う条件の方が……」と敗因を語ったが、秋の目標となりそうな天皇賞・秋もまた実質的に「東京のワンターン」だ。陣営としては、まず次走をどうするかが課題になってくる。
そして、この2頭には共通点がある。「大阪杯の勝ち馬」ということだ。
それもレイパパレは昨年の、そしてポタジェは今年の勝ち馬である。1800mの毎日王冠は2000mの大阪杯と距離が近く、本来であれば大阪杯の勝ち馬が主役を務めるべき中距離重賞の1つだ。
しかし、残念なことに昨年と今年の勝ち馬2頭が出走したものの勝ち負けに絡むことはできず、次走が濃厚な天皇賞・秋に至っては苦戦必至という状況。レースはやってみないと分からないと応援したくもなるが、少なくとも2頭が上位人気に推されるケースは考えにくい。
そこで改めて問われるのが、大阪杯のG1昇格の意義だ。
春の古馬王道路線の開幕を告げるべく、2017年にG1昇格を果たした大阪杯。近年は特にG1レースが増加傾向にある中、乱立を懸念する声もあった。だが、同時期に開催されるドバイワールドカップデーなどへの牽制、つまりは有力馬の海外流出抑制の期待も込めれていた。
しかし、今春もドバイ流出の歯止めはかからず、パンサラッサが1800mのドバイターフ(G1)を、シャフリヤールが2400mのドバイシーマクラシック(G1)を制覇。日本競馬にとって快挙に違いないが、見方を変えれば海外G1を勝つほどの強豪の流出を止められなかったともいえる。
一方の大阪杯は、昨年の年度代表馬エフフォーリアという確固たる主役がいたものの、G1としてはやや淋しいメンバー。主催のJRAとしては、当時5連勝中だった新星ジャックドールの出現に救われた格好だ。また、5月の香港チャンピオンズデーが、新型コロナウイルスの影響により香港調教馬のみで開催されたことも大きかった。
もし、パンサラッサやシャフリヤールだけでなく、グローリーヴェイズ、オーソリティ、ステラヴェローチェといったドバイ組が大阪杯に出走していれば、打倒エフフォーリアの有力候補として、レースはさらに大きく盛り上がったことだろう。
逆に言えば、今年の大阪杯はそれだけ低レベルな開催になってしまったということだ。
その影響はファンの反応にも表れており、今年の馬券売上187億366万7900円は同じ春古馬3冠の天皇賞・春(G1、約215億円)、宝塚記念(G1、約222億円)を大きく下回っている。春G1全体を通じても、下から3番目という体たらくだった。
G1昇格となった2017年こそ武豊騎手とキタサンブラックが勝利して一世を風靡したが、その後の勝ち馬スワーヴリチャード、アルアイン、ラッキーライラック、そしてレイパパレとポタジェが、後に競馬界は主役を担ったとは言い難い。
元々、施行条件が宝塚記念と代わり映えしないということも含め、G1昇格から様々な賛否両論があった大阪杯。あれから5年、あまり期待された役割を果たしているとは言えない現状、開催時期や条件などを改めて見直す必要に迫られているのかもしれない。
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