
日本競馬の憧れ、凱旋門賞の本当の価値…… 海外遠征取材を20年超継続、平松さとし氏が語る『勝利の条件』(後編)

昨年から日本競馬の「通年騎手」となり、破竹の勢いで勝ち鞍を上げるM・デムーロ騎手とC・ルメール騎手。そんな日本で活躍する”異国のサムライ”お二人の本質に迫る共著『ミルコ・デムーロ×クリストフ・ルメール 勝利の条件』(KADOKAWA)が今月7日に発売されました。そこで今回は、同著の構成を担当し、お二人との親交も深い平松さとし氏にお話をうかがいます。デムーロ・ルメール両騎手の力量や欧州の騎手について、日本がなかなか勝てない凱旋門賞、日本競馬全体への思いなど、20年以上日本馬の海外遠征を取材してきた平松氏だからこそのお言葉をいただくことができました。(前編はコチラ)
記者:デムーロ騎手、ルメール騎手のお話を中心にうかがってきましたが、実は今回の取材に先立ちまして、『凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち -誰も書かなかった名勝負の舞台裏-』(KADOKAWA)も読ませていただきました。エルコンドルパサーやディープインパクトなど、凱旋門賞に挑んだ名馬とその陣営の裏話など、大変読み応えがありました。「日本がどうしても勝てないレース」という認識が日本では非常に強く、その価値が年々上がっているように思いますが、海外における凱旋門賞の「実際の価値」はどうなのでしょうか。
平松さとし氏(以下平松):もちろん、凱旋門賞は欧州でも最高のレースの一つです。フランスの凱旋門賞、イギリスのキングジョージ(KGVI&QES)が欧州長距離G1の2大巨頭といえますね。ドイツやイタリアなどからも出走する馬も多いですし、特に欧州の長距離馬ならみんなが目指すレースといえます。ただ、最近は2000mなど中距離の価値が非常に上がっているのも事実で、チャンピオンS(G1)を目指す傾向も強くなっています。
記者:フランケル(マイル~中距離中心にG1・10勝、14戦14勝無敗の怪物)などは欧州でしっかり種牡馬入りしている反面、デインドリーム(牝馬)やワークフォースなど凱旋門賞馬が日本に輸入されることも最近増えてきました。種牡馬といいますか、血統価値という点では低いのでしょうか。
平松:凱旋門賞馬が、種牡馬として非常に苦戦しているのは事実です。競馬は究極的にいえば「スピード」を競う競技ですので、スタミナや総合力重視の凱旋門賞勝利馬が、現在の欧州のトレンドと合ってない部分もあるのかもしれません。まあ、最近は牝馬が勝ってばかりというのもありますが(笑)。なかなか勝てない中で、日本にとっての凱旋門賞の価値が異様に上がっている状況にはあるなと。
記者:メイショウサムソンの馬インフルエンザ、ディープインパクトの敗戦と失格、オルフェーヴルの現地調教とレースの因果関係など、多分に「運がない」という印象も受けます。それも含めて「海外遠征の難しさ」なんでしょうか。
平松:それもありますね。ただ、日本馬は凱旋門賞を十分に勝てる、これは強く言えますよ。これまで30頭40頭と送り込んで勝てていないというわけではありませんし、その中で4回も2着になっているんですから。ディープインパクトやオルフェーヴルなど明らかなチャンピオンホースが挑戦して敗れているせいで、凱旋門賞のハードルが上がっているということでしょう。2010年に2着したナカヤマフェスタは、宝塚記念こそ勝利していたもののその時点で「国内王者」では決してなかった。「必ずしも最強馬が勝つわけではない」という点は、日本競馬など他国の競馬と同じだと思います。
記者:なるほど。今年はドゥラメンテ、先日皐月賞を勝ったディーマジェスティも凱旋門挑戦の可能性が取りざたされて盛り上がっていますが、この2頭に関してはどうでしょう。
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