
「その時、怪物は完成した」絶対王者ディープインパクトが天皇賞・春で示した「世界」への飛翔

あの瞬間、「近代競馬の結晶」と謳われたその馬は『真の完成形』を迎えた。
2006年4月30日、約10万人の観衆が押し寄せた京都競馬場。
ハイセイコー、オグリキャップに次ぐ第三次競馬ブームの真っただ中。その時代の競馬は、ただ一頭の絶対的な「主役」が勝つか負けるかが、いや、”如何にして勝つか”がすべてだった。
第133回天皇賞・春(G1)。今まさに世界に羽ばたかんとする絶対王者ディープインパクトの姿が、そこにあった。
ゲートが開き、いつものように出遅れる、いや、むしろ余裕さえ感じる独特の発進に「近代競馬の結晶」の名付け親となった馬場鉄志アナウンサーは『ディープインパクト、今日は出遅れました』と特に驚いた様子もなく実況した。
観客からは大きな声とどよめきが上がったが、それでも誰一人この馬が負けることなど想像していなかったのではないか。とても天皇賞史上最高となる75.3%の単勝支持率を記録した馬が、スタートを出遅れた雰囲気ではなかった。
ブービー人気のブルートルネードと池添謙一が捨て身の逃げを打つ中、続いてトウカイトリック、ビッグゴールド、シルクフェイマスと隊列はすんなりと決まった。ディープインパクトはいつものように後方集団の一角。
しかし、同じ淀の長丁場となった昨年の菊花賞で折り合いに苦しんだ姿は、もうまったく見られなかった。
大歓声に包まれる正面スタンド前を悠然と通り過ぎ、向こう正面に回る。一体、ディープインパクトが今度はどんな決め脚を見せてくれるのか。固唾を飲んで見守るファンの視線を一身に浴びながら”進化した怪物”は、またもこれまでの競馬の常識を覆した。
まだ、残り1000mを切ったところだ。京都競馬場の大観衆から、地鳴りのような歓声が上がる。武豊とディープインパクトが動いたのだ。
それはまるで、同名のハリウッド映画のように大都市を飲み込む津波のようだった。逃げる者たちに足掻くことさえ許さない”巨大な力”を持った圧倒的な存在が、次々とあらゆるものを飲み込んでゆく。
残り800mの標識を通過したところで、ディープインパクトはライバル全馬を飲み込み、早くも先頭に立った。
このまま持つのか――。そんな僅かな疑念が、心臓の鼓動を跳ね上げる。だが、それ以上にあまりにも衝撃的な走りを目の当たりにした興奮が体を支配し、京都競馬場はそれを抑えきれない大観衆の悲鳴のような叫び声に包まれた。
無敗の三冠を含め、ここまで10戦。ディープインパクトは、常に「最後の直線」でその類まれなる末脚を爆発させてきた。レースがどのような展開であろうとも、誰が前を走っていようとも、その異次元の末脚ですべてをねじ伏せてきた。
しかし、前年の有馬記念。ついにそのスタイルに限界があることを、唯一無二のライバル・ハーツクライの乾坤一擲の走りが知らしめた。そしてライバルは一足早く海を渡り、「世界の頂点」に片手を掛けるところまで上り詰めていた。
怪物はさらなる「進化」を迫られていた。そして、この時がまさにその答えを出した瞬間だった。
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