
「俺にはできなかった」福永祐一が川田将雅に授けた金言、史上4人目の栄誉のその先へ…

12月28日、中山と阪神でホープフルS(G1)を含む計24レースが行われ、今年の中央競馬の全日程が終了。それに伴い、各種個人成績も確定した。
注目の騎手リーディングは、19年目の川田将雅騎手が悲願の戴冠。最終日は阪神で7頭に騎乗し、6Rのユティタムと9Rのイフティファールで計2勝をマーク。今季の勝利数を143まで積み上げて逃げ切りを決めた。
また、勝利数だけでなく年間の勝率.259と総賞金31億5709万1000円も堂々のトップ。同一年の三冠達成により、2018年のC.ルメール騎手以来となる史上4人目の『JRA騎手大賞』も手中に収めている。
2013年に120勝を挙げて全国リーディングの2位に入ると、2019年から昨年まで3年連続の2位。トップジョッキーとしての立場を築き上げた中で、どうしても届かなかったのが『最多勝利騎手』の称号だった。
迎えた2022年は1月から月間19勝を挙げるロケットスタートを決め、出だしの4カ月で計60勝を荒稼ぎ。7月と8月は2カ月連続で15勝を記録し、月間勝率は36.6%と37.5%という夏男ぶりを発揮して一気に突き抜けた。
終盤はやや白星のペースが落ち、その間に2位・戸崎圭太騎手の猛追を受けたものの、序盤に稼いだリードを死守。成績の確定を受け、川田騎手は「19年かかり初めてこのタイトルを獲らせていただけて、本当に感慨深いです」と喜びを語った。
常にポーカーフェイスで、インタビューでも感情を表に出すことが少ない川田騎手だが、その胸の内が少しだけ露わになったのが先輩との対談企画。有馬記念が行われた25日の夜、YouTubeのサントリー公式チャンネルで生配信された『ビアボール忘年会』に福永祐一騎手とともに出演した時のことだ。
リーディングほぼ当確という状態で28日の開催最終日を残すのみという状況だったが、川田騎手は「あと1日を最後までやり切って、リーディングを獲り切りたい」と初タイトルへの強い気持ちを吐露。そのうえで「その後のことは全く考えられない」「どういう心境になるのか、自分がどういう変化をするのかが楽しみ」と語っていた。
その一方で、安定して勝利を積み重ねてきたことの弊害として「自分の仕事の責任の重さが変わってきた」ことに触れながら、「常に勝ちに行かないといけないし、負けても納得してもらわないといけない。だから奇をてらったようなレースがなかなかできない」という苦悩も打ち明けている。
福永祐一騎手が川田将雅騎手に授けた金言

これに対し、福永騎手は「“俺が乗って負けたらしょうがない”と思って乗ればいい」とアドバイス。「それぐらいセルフィッシュに乗って、やりたいようにやってみれば。将雅はそれだけの技術もあるし、数字も挙げている」とエール。この裏には、来年2月の現役引退を控え「俺にはできなかった」という思いが垣間見える。
2013年に騎手リーディングを獲得している福永騎手だったが、当時を振り返って「常に攻撃的にならないといけなかった。一番になってみないと分からない、見えない景色があると思ってやってみたけど、ものすごいストレスだった」と激白。No.1の称号と引き換えに「円形脱毛症にもなった」とも語っている。
そんな自身とは性格が異なる川田騎手だからこそ、頂点のさらに先を目指してもらいたいというのが先輩としての率直な気持ちだったのだろう。「リーディングを獲ったことを機に吹っ切れて、楽しみだした時に将雅がどんな騎手になるのか見てみたい。もっとすごいステージに行けるんじゃないかな」と述べ、さらなる進化に期待を寄せている。
悲願のリーディング、史上4人目の『騎手大賞』を経て迎える節目の年。頼れる先輩が求めた“オレ様”への変貌は見られるのか、20年目の川田将雅のさらなる飛躍に期待したい。
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