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“再生工場”五十嵐忠男厩舎の有終の美なるか、カギ握る「復活」×「復調」コンビ

再生工場五十嵐忠男厩舎の有終の美なるか カギ握る「復活」×「復調」コンビの画像1

 競馬界の2月と言えば、世間よりもひと足早い“卒業”の時期。JRA公式サイトでも7日にお知らせが掲載されたように、今年は2月28日(火)をもって5名の調教師と1名の騎手が引退を迎える。

 今月いっぱいと言っても、JRAの開催に換算すると残すは6日間。1日に複数回レースに参加することが多い騎手とは違い、調教師にとっては一頭一頭、一鞍一鞍が勝負になる。

 そんな中、12日に阪神競馬場で行われる京都記念(G2)に管理馬のウインマイティーを送り出すのが栗東の五十嵐忠男調教師だ。

 1973年の3月にJRAの騎手としてデビューを果たし、1993年からは栗東で調教師に転身。20年+30年のホースマン人生の最終章を迎えた師のこれまでを振り返ってみると、やはり印象深いのが幾度となく管理馬を“復活”に導いた手腕だろう。

 調教師デビューからなかなかビッグタイトルと縁がなかった中、待望の重賞初勝利を掴んだのが2005年の阪神JF(G1)。8番人気のテイエムプリキュアが新馬戦と500万下からの3連勝で世代の頂点まで駆け上がり、厩舎の重賞初勝利をG1で成し遂げた。

 しかし、その後に待っていたのは苦難の日々。翌年の桜花賞(G1)は8着、オークス(G1)でも11着に敗れて3歳春シーズンを終えると、以降も重賞はおろかオープンの戦いでも結果が出なかった。2008年・日経新春杯(G2)での3着が唯一の馬券内突入で、連敗は「24」まで伸びた。

 そんな中で迎えた2009年の日経新春杯。前年3着に入った京都・芝2400mのコースで荻野琢真騎手を背に大逃げの手に出ると、49キロの軽ハンデも味方にまんまと逃げ切りに成功。後続に0秒6差をつける完勝で、実に3年と1カ月ぶりの勝利を掴んだのだった。

 さらにもう一頭、五十嵐厩舎を語るうえで欠かせないのがタガノエスプレッソだ。こちらも2歳時にデイリー杯2歳S(G2)を勝利するなど将来を嘱望された若駒だったが、その後は弥生賞(G2)で3着に入ったのが目立つ程度。徐々に栄光の記憶も薄れつつあった。

 ところが、芝からダートへの転向を挟み、7歳の春からは障害レースに挑戦。すると翌年には阪神ジャンプS(G3)を勝利し、なんと5年10カ月ぶりとなる重賞制覇を達成。なお、このブランクはJRA史上最長記録だった。

 その後も京都ジャンプS(G3)を勝って重賞を連勝。そして昨年、現役ラストランとなった京都ハイジャンプ(G2)でも勝利を収め、種牡馬入りも果たしている。

 そして今回送り出すウインマイティーも、五十嵐厩舎らしい「復活」を経てここまで歩んできた馬。上述した2頭のように若駒時の重賞勝利はなかったものの、2020年のオークスではデアリングタクトとウインマリリンに続く3着に入った実績を持っている。

 ところが、3歳秋からスランプに陥り、以降は馬券内が遠い日々。2021年の秋には頓挫もあって8カ月間も実戦から離れた時期があった中、ポリトラックコースやプール調教といった手を尽くして復活にかけた結果、それが昨年6月のマーメイドS(G3)で開花した。

 10番人気の低評価ながら、レースでは3番手から前を捉えて押し切る王道の競馬を披露。2着に0秒3差をつける快勝で、実に2年2カ月ぶりの白星をゲット。重賞初勝利を掴んだ。

 その後も京都大賞典(G2)で3着と牡馬相手にも健闘を見せ、エリザベス女王杯(G1)は16着に敗れたものの、年末の有馬記念(G1)では強豪に混じって6着と健闘。完全復活を印象付けている。

 厩舎の伝統「再生工場」の流れを受け継いだウインマイティーが目指す師への恩返し。その気持ちは鞍上も同じだろう。

カギ握る「復活」×「復調」コンビ

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和田竜二騎手

 今回ウインマイティーの手綱を取るのは、マーメイドSから5戦連続のコンビとなる和田竜二騎手。実はマーメイドSの復活星は、同騎手にとってもJRA重賞通算50勝目という思い出の勝利だった。

『netkeiba.com』内で配信中の動画『わだラジ』でも、マーメイドSのパフォーマンスについては「3歳春頃に感じたのとは別の姿だった」と語っており、スランプを乗り越えた相棒の進化を強調。そのうえで、同馬の今後には「秋にはG1もある。五十嵐先生が来年2月で定年になるので、最後のひと花を咲かせることができたら」と語っていた。

 残念ながら秋の大舞台で結果を残すことは叶わなかっただけに、師の定年が迫る中で迎える今回のレースで恩返しを果たしたいという思いは当然強いはず。自身もそのマーメイドSを最後に重賞勝利から遠ざかっており、その点でもより一層力が入ることだろう。

 重賞に限らず、昨年11月から今年2月にかけて「205連敗」という苦境の中にいた和田竜騎手だったが、4日の中京12Rを勝利してついにトンネルを脱出。その翌日にもしっかりと1勝を挙げ、メインのきさらぎ賞(G3)でも6番人気のクールミラボーを3着に導くなど、復調の気配を感じさせている。

「復活」のウインマイティーと「復調」の和田竜二騎手のコンビは、恩師に大きな花束をプレゼントすることができるか。今回の京都記念が五十嵐師にとって最後の重賞となる可能性もあるだけに、さまざまな想いを背負っての激走に期待したい。

GJ 編集部

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