快挙パンサラッサ「13億円ゲット」でフェブラリーSは風前の灯火…JRA&地方競馬「全日本ダート大改革」は今後さらに加速か。川崎記念が最初の“生贄”に?
25日にサウジアラビアのキングアブドゥルアジーズで行われた世界最高賞金レース・サウジCは、パンサラッサ(牡6歳、栗東・矢作芳人厩舎)が優勝。日本勢としては4度目の挑戦で、ついに1着賞金1000万ドル(約13億5000万円)を掴み取った。
時差の関係でサウジCの発走は深夜の2時半だったものの、歴史的な快挙に日本中の競馬ファンが沸いた。レース後、SNSや掲示板ではパンサラッサだけでなく、主戦の吉田豊騎手、矢作調教師などの関係者にも称賛の声が殺到……。
他にも1351ターフスプリントをバスラットレオンが、レッドシーターフハンデキャップをシルヴァーソニックが制したこともあって、今年のサウジカップデーも大いに盛り上がった格好だ。
その一方で先週23日には、日本のフェブラリーSのレーティング(上位4頭の平均)が発表されている。
サウジCがダートにおける世界の頂上決戦なら、フェブラリーSは日本の頂上決戦。1番人気に応えた新王者レモンポップは11戦8勝、連対率100%という未だ底が見えない存在だ。今後は日本を代表して世界と戦うことが期待される。
だが、レースレーティングは111.75という寂しい結果に終わった。
実は近年、フェブラリーSはG2降格候補の筆頭に挙がっている。過去3年間のレースレーティング113.58が、古馬全G1の中で最も低い(牝馬限定戦は4ポンドを加算)からだ。そして、あくまで暫定ではあるものの今年が平均を下回る111.75だったことによって、フェブラリーSはさらなる窮地に追い込まれた格好である。
その主たる理由として多くの識者やメディアが指摘しているのが、サウジカップデーが2020年に誕生したことだ。今年もチャンピオンズCの覇者ジュンライトボルトなど、芝・ダート界のトップホースが次々とサウジC挑戦を表明した。
その煽りを最も大きく受けたのが同時期開催のフェブラリーSで、2連覇中だったカフェファラオを筆頭に、両睨みだった皐月賞馬ジオグリフも前者を選択している。その結果、同レースは「国際競争の敗者」として施行時期や条件の変更など、様々な意見が挙げられるようになった。
だが、このダートG1の凋落が、サウジC創設前から始まっていたことはあまり知られていない。
「全日本ダート大改革」は今後さらに加速か
実はフェブラリーSは、サウジC誕生の1年前となる2019年にも111.75という低レーティングを記録している。これはやはり同年に行われた古馬全G1の中で最低の数値だった。
近年の低調は主催であるJRAも把握しており、昨年6月に発表されたダート三冠の新設は、まさにフェブラリーS・チャンピオンズCを頂点としたダート競馬の発展・充実を願ってのことだろう。
また11月には「全日本的なダート競走の体系整備」と銘打って、今後のダート競走における展望を発表しているが、そこにも「芝競走と比較してもダート競走は競馬関係者や国際的な評価の面で後れをとっている」と明記されている。
実際に、サウジCで歴史的な快挙を成し遂げたパンサラッサは、昨年のドバイターフを勝った芝馬。居合わせた日本のダート馬にとっては、まさに形無しの結果だったというわけだ。JRAが危惧しているのは、こういった点に他ならない。仮に現役の半分がダート馬と考えれば、今回の改革がもたらす恩恵は極めて大きいといえるだろう。
その上で着目すべきは、JRAは改革の主幹を地方競馬に委ねている節がある点だ。
川崎記念が最初の“生贄”に?
実際に、同発表には「芝とダートを両輪とする日本競馬の発展を目指し、地方競馬が主体となってダート競走の体系整備を行うことといたしました」と記載されており、3歳ダート三冠競走の創設を目玉とした改革で大きくメスが入ったのは、JRAよりも全国の地方競馬である。
一見、地方競馬のさらなる発展に繋がりそうな方針だが、様々な動きがあった中で気になったのは、川崎記念の開催を1月下旬から4月上旬に移動させることだ。
この結果、競合相手がなくなったJRAのフェブラリーSのメンバー充実が期待できる。だが一方、毎年日本の有力馬が大挙遠征するドバイワールドカップデーが3月下旬に開催と、川崎記念と時期がモロ被りする。
また、先述したダート三冠の新設にしても、これまで地方所属の3歳馬にとっての大目標だった羽田盃、東京ダービーが、今後は中央馬に上位独占される可能性が高いことは、これまでの地方交流重賞の歴史を見ても明らかと言わざるを得ないだろう。
「痛みを伴う改革」と言えば聞こえはいいが、JRAが伴うのは金銭的な痛みばかり。主な痛みを引き受けそうなのが、地方馬主や各主催者といった地方競馬の関係者ばかりに見えるのは気のせいだろうか。
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