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指名率「0.025%」から世代の頂点へ?キタウイングに迫る“1億円超え”のチャンス

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 4日、阪神競馬場では桜花賞(G1)を占うトライアルレース・チューリップ賞(G2)が行われる。

 本番と同舞台の阪神・芝1600mで行われる一戦とあって、牝馬一冠目の前哨戦として多くの名馬を輩出してきた。その活躍馬の多さから1994年には重賞(G3)に格上げされ、2018年にはG2に昇格と、一歩ずつグレードも上がっていった。

 ところが、近年はトライアルを叩いて本番へという考えよりも、なるべくレース数を抑えて消耗を少なくする“一戦必勝”のローテーションも増えている。それに伴い、12月の阪神JF(G1)で好走を見せた有望株や、すでに重賞勝ちがある有力馬たちが「桜花賞直行」を選択するケースも珍しくなくなった。

 今年の登録メンバーを見ても、阪神JFに出走しているG1経験馬は2頭だけ。前走で重賞はおろかリステッド競走や1勝クラスで敗れている馬も少なくなく、G2にしては小粒な感は否めない。

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キタウイング 撮影:Ruriko.I

 そんな中、ここに“重賞2勝”という実績を引っ提げて登場するのがキタウイング(牝3歳、美浦・小島茂之厩舎)だ。

 昨夏の福島でデビューし、8月の新潟で未勝利戦を勝ち上がると、その翌週に行われた新潟2歳S(G3)に連闘で挑戦。2連勝で重賞初制覇を成し遂げた。

 そこから休みを挟み、ぶっつけで挑んだ阪神JFでは14着と大敗を喫したものの、再び間隔を詰めて臨んだ1月のフェアリーS(G3)を11番人気で勝利。この世代の牝馬では唯一の重賞2勝馬として、今回のトライアルに挑む。

 これまでのキャリア5戦で1度も1番人気になったことがないにもかかわらず、重賞2勝を含む3勝を挙げて積み上げた賞金は7430万円。これはドルチェモア(1億1000万円)やリバティアイランド(8400万円)、ドゥラエレーデ(8370万円)といった2歳G1馬たちに次ぐ世代第4位という堂々たる数字となっている。

指名率「0.025%」から世代の頂点へ?

 新進気鋭のスリーエイチレーシングが誇る2歳王者の2頭と、多くの名馬を輩出してきたサンデーレーシングの新たな名牝候補を相手に食い下がるミルファームの小柄な牝馬キタウイング。その衝撃度を表している一例として、指名馬の本賞金の総額で競いあうペーパーオーナーゲーム(POG)のデータを取り上げてみたい。

『JRA-VAN』が主催する国内最大級のPOGを見てみると、2月末時点で9万8627人が参加している中、キタウイングの指名者数はなんと25人。全体の「0.025%」しか指名者がいないのだ。

 ちなみに、ドルチェモアは944人(指名率=0.95%)、リバティアイランドは1万728人(指名率=10.87%)、ドゥラエレーデも1万595人(指名率=10.74%)だから、キタウイングの異端さが際立っている。

 この躍進を支えているのが、レース選択の巧みさ。相手関係が手薄な重賞を選び、そこでしっかりと1着を勝ち取ってきたところが挙げられる。

 前走のフェアリーSも11番人気での勝利ではあったが、周りを見ると重賞勝ち馬は不在。新馬戦や未勝利戦で才能の片鱗を見せた1勝馬が人気を集めた中で、最内が開くという幸運もあったとはいえ、上がり最速の末脚で突き抜けた。

 フェアリーS組のその後を見ても、すでに次のレースを走った7頭のうち6頭は掲示板外に沈む惨敗。唯一馬券内に入ったアンタノバラードも、春菜賞(1勝クラス)という自己条件の2着だったことを考えれば、レースレベルを高く見積もることは難しいだろう。

 思い返して見ると昨夏の新潟2歳Sも、後の2歳女王・リバティアイランドが直前で出走を回避したこともあり、新馬戦でハイパフォーマンスを見せた注目馬は不在だった。芝の1200mやダート戦での勝ち上がり組に加え、地方馬も含めてなんとか11頭が集まったという格好で、元JRA騎手の安藤勝己氏も「メンバーを見極めて投票した陣営の読み勝ち」とコメント。2歳重賞としては物足りない一戦だった。

 その点、今回のチューリップ賞も上述した通りで、G2としてはやや手薄なメンバー構成だ。1勝馬が10頭と大半を占め、そのうち4頭は未勝利勝ちからの参戦と、キタウイングにとっては今回もこれまでと同様にチャンスの大きいレースを選択することができたと言えるだろう。

 もし今回のチューリップ賞を勝つことができれば、5200万円を加えて本賞金は1億2630万円に。大台超えどころか、この世代のトップを走るドルチェモアも抜き去り、世代の賞金頭へ躍り出ることとなる。

 暮れのホープフルS(G1)に代表されるように、波乱のレースも多かった2020年産の世代。レース単体だけでなく、POG戦線でも春のG1シーズンを前にして指名率「0.025%」の伏兵が世代の頂点に登り詰めるという大波乱があるのか。今回の大きな見どころとなる。

 まずは昨冬に大敗を喫している阪神コースを克服することができるか。その先に、前回の対戦で1秒9差をつけられたリバティアイランドへのリベンジが待っている。キャリアを積んで成長した姿を見せつけ、“3歳賞金王”として4月9日の桜花賞を迎えることができるか。今度は主役の一頭として前哨戦に挑むキタウイングに注目だ。

GJ 編集部

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