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不評だった「Jpn1」消滅!? 芝のJRAとダートのNARの二極化へ「全日本ダート大改革」の奥に見える未来図

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競馬つらつらより

「全日本的なダート競走の体系整備」として、昨年11月に発表されたJRA地方競馬によるダート改革。概要は「前回」お話しした通りだが、今回は改革の奥に見える未来図について記載したい。

「地方競馬が主体となってダート競走の体系整備を行うことといたしました」と明記されている通り、今回の改革の主役はJRAではなく全国の地方競馬、ひいてはNAR(地方競馬全国協会)である。実際にレース体系の変更など、大きくメスが入ったのは地方競馬であり、同時に伴うリスク(改革の痛み)を大きく背負ったのも後者だ。

 では何故、これほど大きな改革の主体、そして責任やリスクを地方競馬が担うことになったのか。その答えの1つとして、近年の地方競馬の売上が極めて好調であることが挙げられる。

 これまでも一時の低迷を脱した感があった地方競馬だが、ネット販売が充実して売上が爆発的に加速。2012年に約3000億円だった売上が、約10年でついに1兆円を突破。2023年はさらなる売上増が見込まれている。売上増加額としては約2兆3000億円→3兆2000億円に伸びたJRAにわずかに劣るが、10年前にJRAの約1/8だった地方競馬の売上が1/3になったと考えれば、両者の関係性は大きく変わっているはずだ。

 それは同時に、地方競馬に今回のダート改革の痛みを引き受けられる下地ができたという見方もできる。

「全日本ダート大改革」の奥に見える未来図

 後に交流元年と呼ばれる1995年、当時の地方競馬は閉鎖が相次ぐ危機的な状況だった。そこに手を差し伸べたのがJRAであり、賞金の半額を負担する形で数々の交流重賞が誕生。全国の競馬ファンの意識と視線が、地方競馬にも向けられるようになった。

 地方競馬としてはJRAに大きな“借り”ができた格好であり、そういった経緯が今回の改革にも小さくはない影響を与えているはずだ。

 そして、この改革の先にはJRAにとっても大きなメリットがある。中でも大きいのが長年、頭を抱えている除外問題の解消だ。

 現在、条件戦を中心に毎週のように数多くの除外馬が発生しているJRA。これまでも様々な施策を打ち出してきたが、ルールは複雑化の一途を辿ってしまっている。その結果、あえて脈のないレースに登録して除外されることで次回の優先権を得たり、さらにはその目論見が外れて本意ではないレースに出走するハメになったりと、関係者の苦労は年々拡大している印象だ。

 大雑把に言えば開催レースの数に対して、競走馬の数が多過ぎるのだ。

 一見、今回のダート改革とは無関係に思えるかもしれないが、仮に将来、地方競馬がJRA並みに充実した結果「ダート適性のある中央馬の多くが地方へ移籍する」と考えればどうだろうか。

 その結果、中央のダート馬が大幅に減少し、JRAはダートレースを芝レースに替えることで除外問題を解消できるというわけだ。

 実際に、昨年から東京大賞典の1着賞金が1億円の大台に達したことを筆頭に、川崎記念や帝王賞、かしわ記念などの主要交流重賞が軒並み賞金アップ。売上好調の波に乗った近年の地方競馬では、細部にわたって全国的な賞金増額が実施されている。

 その上で今回の改革でも、ダート三冠競走の賞金増額や三冠達成ボーナスの新設を始め、複数の賞金増額を発表。中でも、東京ダービーの1着賞金1億円は東京大賞典と並ぶ、交流重賞最高額だ。これらを見ても、地方競馬は中央競馬の馬主たちから見ても魅力的な移籍先になりつつある。

不評だった「Jpn1」消滅!?

 また今回の改革における、地方競馬のパワーアップは賞金面だけに留まらない。

 現在、東京大賞典を除く全てのダートグレード競走は「G(グレード)」ではなく、「Jpn」が使用されているが、2028年から段階的に「Jpn」表記の使用を取り止め、全てグレードにすることを目指すという。

 ちなみに「G」と「Jpn」が用いられるレースの最大の違いは、国際競走であるか否かだ。逆に言えば、2028年からは地方開催のレースも国際化が進んでいくというわけである。実際に外国馬が来るかはひとまず置いておいても、主催者側としては少なくとも受け入れられる設備を用意する必要がある。これも地方競馬にとっては小さくはない負担だ。

 表面的にはただ表記が変更されるだけだが、もともと「Jpn」表記は大方の競馬ファンにとっても「G1とJpn1って、わかりづらい」「全部Gで良くないか?」と不評だった。そういった紛らわしさも解消される上、繁殖に上がった際のセリ名簿においてブラックタイプ(太字)の扱いが変わるなど、競馬関係者にとってもメリットがある。

 こういった改革も、さらにJRA→地方という関係者の動きを加速させることになるだろう。

「全日本的なダート競走体系の整備により、高い能力を持った馬が様々な適性に応じて活躍できる場を提供し、魅力ある競走を実施することで、ダートグレード競走の質と価値を高めてまいります」

 今回の改革をそう打ち出しているJRAと地方競馬。いずれといわず、10年後には「芝のJRA」「ダートのNAR(地方競馬全国協会)」と大きく二極化された時代が来ているかもしれない。

浅井宗次郎

浅井宗次郎

1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」(敬称略)

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