「神騎乗」の前にビッグタイトル獲得が霧散…傷心の海外武者修行から約9か月「なんとか結果を出したい」23歳“夏男”が今年も大爆発!
今年も夏男・西村淳也の季節がやってきた。
18日、阪神競馬場で行われたマーメイドS(G3)は、1番人気のビッグリボン(牝5歳、栗東・中内田充正厩舎)が勝利。2017年の菊花賞(G1)を勝つなど長くG1戦線を賑わせたキセキの妹が待望の初タイトルを手にした。
「馬主さんや厩舎を含め関係者の方に依頼をいただき『なんとか結果を出したい』という気持ちで一杯でした」
ビッグリボンとコンビを組んだここ2戦で3着、2着とあと一歩の競馬が続いていた西村淳騎手。しかし、この日は板についてきた早め進出の競馬で先頭集団を射程圏内に入れると、最後の直線半ばで一気に先頭へ。最後は2着ウインマイティーの猛追を3/4馬身振り切って、相棒を初重賞制覇に導いた。
西村淳騎手は、これが今年重賞2勝目。来週の宝塚記念(G1)には2月のダイヤモンドS(G3)をレコードで勝ったミクソロジーで参戦予定と、同じ阪神で行われる大一番を前に勢いをつける1勝にもなった。
最近の充実ぶりが特に目立っている23歳の若手騎手だが、昨年の夏には苦い経験をしている。
「好発から差のない競馬ができましたし、よく頑張ってくれました」
昨年9月の京成杯オータムH(G3)、つまりはサマーシリーズ2022の最終日。相棒のベレヌスと挑んだ西村淳騎手には、2つのタイトルが懸かっていた。1つはベレヌスのサマーマイルシリーズ王者であり、そしてもう1つが自身のサマージョッキーズシリーズ優勝だった。
「好発から差のない競馬ができた」という西村淳騎手の言葉通り、好スタートを決めたベレヌスは、逃げ切り勝ちした前走の中京記念(G3)と同じく迷わずハナに立った。
人馬の“タイトルW獲得”には1着が条件だったものの、最高のスタートを決めた西村淳騎手とベレヌス。舞台は開幕週の中山芝コースであり、スタート直後にコーナーがある芝1600mにとって1枠1番は絶好枠。夏の王者が大きく近づいた瞬間だった。
しかし、1コーナーを回り終えて、主導権を掌握した西村淳騎手がペースを落とした時だった。
その瞬間を見逃さなかった岩田康誠騎手とミッキーブリランテが外から強襲。ベレヌスが抵抗する間もなく主導権を奪うと、展開利を活かして12番人気の伏兵を2着に導いた。レース後、このベテラン騎手の積極策がファンから「神騎乗」と絶賛されたことは言うまでもない。
一方、思わぬ形でハナを奪われてしまったベレヌスと西村淳騎手は、2番手から脚を伸ばしたものの5着止まりで、人馬の“タイトルW獲得”は霧散……。
「よく頑張ってくれました」と相棒を称えた西村淳騎手はその翌週、シャンティイの小林智厩舎を拠点に約1か月の武者修行を行うためフランスへ旅立った。
あれから約9か月。ジョッキーとして一回り大きくなった“夏男”が、今年もサマーシリーズに帰ってきた。
この日に勝ったマーメイドSはサマーシリーズに含まれていないものの、スプリントシリーズ開幕戦の函館スプリントS(G3)を5番人気のジュビリーヘッドで2着すると、マイルシリーズの開幕戦となる米子S(L)をメイショウシンタケとのコンビで勝利。まだ開幕したばかりながら、サマーシリーズで堂々の首位に立っている。
一方、米子S後には「僕自身の技術不足で迷惑をかけることになってしまった」と反省し、この日のマーメイドS勝利後にも「ここ2走は僕が上手く乗れていなかった」と語っているように、まだ粗削りな面も自覚している西村淳騎手。
「まだここで終わるような馬ではないと思うので、さらに大きいところで頑張りたいです」
これは相棒のビッグリボンにかけた言葉だが、自身にも言えることだろう。昨年、手が掛かりながらも掴むことができなかった「夏の王者」の称号。今年こそ飛躍の夏から、実りの秋に繋げたい。
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