5馬身圧勝「超大物」ギャンブルルームだけじゃない。イクイノックスの妹に、ソールオリエンスの弟…今年の「父キズナが凄い」理由とは
「切れる脚を使ってくれましたし、強い競馬をしてくれたと思います」
イクイノックスが現役最強馬の貫禄を見せつけた宝塚記念(G1)当日、毎年のように出走馬が出世することから、今や“伝説の新馬戦”などと言われる阪神・芝1800mの新馬戦は、今年もその名に違わぬ衝撃的な結末を迎えた。
過去には、ダノンプレミアムとダノンザキッドが2歳王者に、昨年も出走馬のドゥラエレーデとデルマソトガケが2歳G1を勝利。そんな超出世レースにあやかりたいと集まった7頭は、まさに少数精鋭といった素質馬揃い。そんな中、勝ち馬ギャンブルルーム(牡2歳、栗東・大久保龍志厩舎)は4番人気と決して目立った存在ではなかった。
だが、最後方で最後の直線を迎えたギャンブルルームは、桁違いの瞬発力であっという間にライバルたちを飲み込んでしまったのだ。
5馬身差なのに松山弘平騎手「着差以上に強い競馬」
この日の阪神は開幕最終日ということもあって、各馬が内を明けてコース取りをする中、ギャンブルルームはぽっかりと空いたインを突き抜ける離れ業。最後は5馬身差という圧勝だったが、松山弘平騎手が「着差以上に強い競馬」と言うのだから、現時点で来年のクラシック戦線の先頭に立ったと言っても過言ではないだろう。
この日のギャンブルルームの単勝は9倍ちょうどだったが、もしかしたらこれが本馬のキャリア最大オッズになるかもしれない――。レースは、そんな妄想を抱かせるほど衝撃的なものだった。
そこで注目したいのが、父であるキズナだ。
実は、今年の2歳世代の血統登録168頭は全種牡馬最多である。2021年生まれである彼らは、つまるところ前年の2020年に種付けされた馬たちだが、その年にキズナは前年350万円から600万円に種付け料を大きくアップさせている。
ただ、産駒はその前年の2019年にようやく初年度産駒がデビューしたばかり。2歳リーディングこそディープインパクト、ハーツクライに次ぐ3位と健闘したが、重賞勝ちはビアンフェによる函館2歳S(G3)だけ。そこまでの大物が登場していたわけではなかった。
そんな状況を鑑みれば、やや強気な種付け料アップにも思えたが、“主導者”は数々の成功で抜群の信頼と実績を築き上げた社台スタリオンステーション。全種牡馬最多168頭は、生産界がその波に乗った結果である。
そして、そんな“キズナブーム”の先頭を走ったのが、ノーザンファームである。
ノーザンファームが動いた! 現2歳世代は一気に3倍の種付け
2016年に種牡馬入りしたキズナだが、現役時代のG1勝ちは日本ダービーのみ。種付け料250万円と、そこまで大きく期待されていなかったこともあって、ノーザンファームの種付けは毎年10頭前後といったところだった。
しかし、今年の2歳世代にあたる2020年は一気に32頭と約3倍の猛プッシュ。無論、その背景には前年にキズナの父であるディープインパクトが他界した影響もあるが、それは逆に「本来ディープインパクトをつけるはずだった牝馬」が息子であるキズナに流れたという見方もできる。
「以前から『今年のキズナ2歳は凄い』と言われています。特にやはり良血揃いのノーザンファーム牝馬のバックアップは大きいですね。
先週の新馬戦を圧勝したギャンブルルームだけでなく、イクイノックスの妹にあたるガルサブランカ、2歳女王ダノンファンタジーの弟スティンガーグラス、マイル王ミッキーアイルの妹アイルドリアン、グレナディアガーズの妹クイーンズウォーク、ピクシーナイトの弟ジュンヴァンケットなどは、ノーザンファームの生産馬になります。
他にも今年の皐月賞馬ソールオリエンスの弟フォティーゾ、昨年の菊花賞馬アスクビクターモアの妹ルージュルリアン、ドバイターフ(G1)を勝ったパンサラッサの弟ロディニアなど、今年の2歳には『え、この馬にキズナ?』といった良血馬も少なくありません」(競馬記者)
記者は「相当なラインナップが揃いましたし、まず間違いなく過去最高の成績が期待できるはず」と話すが、逆に言えば「種牡馬キズナ」にとって、今年の2歳世代が今後のキャリアを左右する勝負所ということになる。
2020年に600万円だったキズナの種付け料だが、ソングラインやディープボンドらの活躍もあって現在1200万円まで上昇している。これは種牡馬全体で見ても、コントレイル・ロードカナロアと並ぶ2位タイの高額だ。
果たして、一気の“天下獲り”となるか。ギャンブルルームはもちろん、「今年のキズナ」には要注目だ。
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