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ミックファイアに子供扱いされた“英雄”に明暗、スタート直後に「ノーステッキ」のピンチも地方の名手は意に介さず

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「ミックファイア不在のここは負けられないと思っていて、ホッとしました」

 16日、大井競馬場で行われた3歳限定戦の黒潮盃は、2番人気のヒーローコール(牡3、浦和・小久保智厩舎)が優勝。10着に惨敗した前走のサンタアニタトロフィーからの巻き返しに見事成功した。

 最後の直線でヒーローコールに追いすがったのは1番人気に支持されたマンダリンヒーロー(牡3歳、大井・藤田輝信厩舎)。4月に行われたサンタアニタダービー(米G1)で僅差の2着に入り、続くケンタッキーダービー(米G1)に地方所属馬として初めて参戦。注目された大一番は、残念ながら12着に敗れたが、3か月ぶりの帰国初戦で勝利を期待され、単勝オッズは2.2倍を示していた。

 そして、マンダリンヒーローとヒーローコールに次ぐ3番人気に支持されたのは、金沢競馬で11戦11勝の女傑ショウガタップリ(牝3歳、金沢・高橋俊之厩舎)。11戦で2着馬につけた着差は合計で6秒9という圧倒的な強さを披露し、初の遠征競馬となる今回も好勝負が期待されていた。

 そんな3頭による“3強対決”と評された今年の黒潮盃だが、終わってみれば道中2~3番手の好位から抜け出したヒーローコールが完勝。同じく好位を進むも、勝負所でやや位置を下げたマンダリンヒーローは1.3/4馬身差の2着に食い込んだが、ショウガタップリは南関東勢の厚い壁に阻まれる6着に終わった。

 レース後のインタビューで冒頭のコメントを発したのはヒーローコールに騎乗した森泰斗騎手である。

 森騎手が名指ししたミックファイア(牡3歳、大井・渡辺和雄厩舎)は、7月のジャパンダートダービー(G1)で史上2頭目となる無敗での南関東クラシック三冠を達成。JRA所属馬を完膚なきまでに打ちのめし、今後は中央場所での活躍も期待されるほどの存在だ。

 ヒーローコールはそのミックファイアに対して2戦2敗。対決した羽田盃と東京ダービーは、ともに2着に入ったものの、どちらも6馬身差をつけられる完敗を喫していた。

「もともと羽田盃ではヒーローコールが圧倒的1番人気(単勝1.4倍)に支持されていました。ところが、その一戦でミックファイアに完敗を喫し、両者の立場が逆転。東京ダービーでも再び返り討ちに遭い、さらに前走(サンタアニタトロフィー)は初の古馬相手に惨敗してしまい、同世代相手の今回は試金石ともいえる一戦でした。そして結果はノーステッキでの勝利。森騎手も『春は不甲斐ないというか、無冠に終わってしまい、これから巻き返していきたいと思っています』と、さらなる逆襲を誓っていました」(競馬誌ライター)

 黒潮盃をノーステッキで勝利したヒーローコールは完勝と呼べるレース内容を見せたが、2着との差は1.3/4馬身。着差を見ると、最後の直線でムチが1発、2発と入っていてもおかしくはなかったが、ノーステッキだったのにはある理由があった。

「スタート直後に森騎手がムチを落としてしまったようです。ヒーローコールの山口ステーブルもレース後にX(旧Twitter)を更新し、『スタートしてちょっとで鞭落としてるなこりゃww それでもしっかり勝たせるのが森泰斗!(原文ママ)』とポストしていました。

他馬より2kg重い58kgを背負い、いきなりムチを落とす最悪のスタート。普通の騎手なら冷静さを欠いてもおかしくない所ですが、そこは百戦錬磨の森騎手です。オーナーの言葉通り、ノーステッキでもしっかりと勝利を手繰り寄せたのはさすがでしたね」(同)

 黒潮盃の結果を受けてヒーローコールを2戦続けて子供扱いしたミックファイアの評価は改めて上昇したのはいうまでもないだろう。

 この世代のダート路線には将来有望な素材が多いといわれている。打倒ミックファイアに向けてヒーローコールを中心としたライバル馬たちがどんな成長を見せるのか。今後の勢力図に要注目だ。

GJ 編集部

GJ 編集部

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